緊急告知〜ハーフアニバーサリー特別コラボイベント〜
フレンド登録を交わした後もラルカとの雑談は続き、結構な時間が経ってから別れた後、気を取り直して街の北門に向かおうとした時だった。
カーン、カーンと、どこからか鐘の音が聞こえてくる。
「何だろう、これ?」
「さあ」
時報的なものかと思い、時刻を確認すると丁度十二時を回ったところだった。
しかし、近くにいるプレイヤーも困惑しているところを見るに、どうやらそうではなさそうだ。
『Origin Re:Vrers Onlineをプレイされている皆様にお知らせ致しま——はいはーい! 皆の者ヤッホー!! 聞こえてる〜!?』
突然の何者かによる乱入に周囲が騒然とする。
「はあああっ!? おいおい、ゲーマスのアナウンス乗っ取られたぞ!!?」
「こんなことって今までにあったか!?」
「いや、βテスト含めてずっとやってきたけど、一度もないぞ!!」
「え、ていうかさ、この声ってもしかして——!?」
場が混乱する中、アナウンスはお構いなしと続けられる。
『初めての人ははじめまして! 夜の星から煌めく笑顔をあなたにお届け! バーチャルライバーの
謎のアナウンスジャック犯が名乗った瞬間、ボルテージが更に上がる。
「嘘だろ!? なんできららんがOROのゲーマスアナウンスに!!?」
「やばすぎ! つーか今SNSってどうなってる!?」
「やっぱきららんだったああああああっ!!」
なんか阿鼻叫喚……というより狂喜乱舞してる奴が見受けられるが、まあそうなる気持ちは分かる。
「なあ、夜星キララって……」
「あれだよね。最強歌姫の」
「だよな」
夜星キララ。
チャンネル開設から僅か三ヶ月足らずで登録者数が百万人を突破したバーチャル配信者。
持ち前の圧倒的歌唱力と明るいキャラクター性で多くの視聴者を虜にしたことから、巷では『最強歌姫』なんて呼ばれ方もしている。
投稿する歌ってみた動画はどれもミリオン再生当たり前、歌唱配信でもアクティブ視聴数が余裕で十万人オーバー……調子がいいと二、三十万人にも届く正真正銘の超絶人気配信者だ。
それでいて中の人(これ言うと一部のファンが発狂する)が俺らと同じ高校生なんて話もあるくらいだから恐ろしいことこの上ない。
実際、俺もライブ配信の切り抜きを見たことあるが、お世辞とか一切抜きでガチで上手かった。
透き通るようでなのに芯のある力強い歌声は、真似しようにも真似できない天性のもので聴いた瞬間に上手すぎて鳥肌が立つほどだった。
『なんであたしがゲームマスターのアナウンスにいるかというと……重大な発表があるからだよ! 題して〜……ジャジャン! Origin Re:Vrers Onlineハーフアニバーサリーコラボイベント、夜星キララ特別ライブ開催決定!! いえーい☆」
——刹那、そこかしこで大歓声が上がった。
近くにいたNPC達は突然の叫びにビクリと肩を震わせ、胡乱げに騒いでいるプレイヤー達を見ていた。
『開催日はGW最終日! 場所は草原の国王都の大広場! 詳細は現時点を持って公式サイトに専用ページができてるはずから、それで確認をしてね!! それじゃあ、皆んなと会えるのを楽しみに待ってるよ! 待ったねー!!』
そして、途切れるアナウンス。
だが、周囲の興奮は冷めるどころかどんどん加熱していく一方だった。
「……ガチのゲリラ告知だったな」
「だね。まさかOROと夜星きららちゃんがコラボするなんて……!」
メニュー画面を操作し、公式サイトに飛んでみると、アナウンスの通りオリヴァと夜星きららのコラボイベントページが作られていた。
早速、ページを覗いてみる。
ライブの日程とか、それに関する細かな情報が色々と書かれてある。
「ふーん……今から三日間ライブ会場に入る為の抽選をやるのか」
それで当日は、抽選に当たったプレイヤーだけがライブ会場である王都の大広場に入れるってことらしい。
「つーか、ライブ会場すぐそこじゃん」
「確かに。さっき開催場所は草原の国の王都の大広場って言ってたもんね」
「まさか実際のマップをそのまま会場にするとは……」
「試しに行ってみる?」
「そうだな。行ってみるか」
まだ王都には行ったこと無かったし、ファストトラベルの登録だってまだ済んでなかったしな。
そんなわけでまた予定を変更し、王都へと向かうことにする。
「それにしても……企業案件っていうか、外部とのコラボをやるのは意外だったな」
「ね! しかもその相手が最強歌姫なんだからびっくりだよ!」
ウィンドウを操作しながら言って、コトは画面をこっちに向けてくる。
Switterのトレンドページだ。
「ねえ、見てよ。トレンドの上位ほとんどがOROと夜星きららちゃん関連で埋まっちゃってるよ」
「ほんとだ。すげえな、コラボ効果」
まあMMOの覇権ゲーと新進気鋭の人気配信者がコラボ——しかも特別ライブまで開催するとなれば、ネットが賑わうのも当然のことではあるか。
「そういや、KKアカウントのフォロワー数ってどうなった?」
「えっとね、ライブが終わった後から結構増えてるよ。今、五十人オーバーってところかな」
「うわ、ガチで思った以上に増えてるじゃん」
てっきり十人そこらぐらいかと勝手に想像してた。
「これから路上ライブやっていけばもっと増えていくと思うし、頑張って活動してこうね、ケイ!」
「……ああ」
にかりと笑顔を浮かべるコトに対し、俺も小さく笑みをこぼした。
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一日一話更新になったのはもう一つのVRも同時に更新再開したからです。
良ければこちらも読んでいただけると嬉しいです。
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