ダンジョンとトラップと

 パラメーターポイントを割り振ってステータスを強化した後は、一緒にスキルツリーの成長もさせておいた。


 その結果がこれだ。



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PN:ケイガ Lv.20

所持金:1657ガル

ジョブ:音楽士/適正:打

パラメーターポイント:0

スキルポイント:0

【パラメーター】

HP(体力):30(0)

MP(魔力):15(0)

STR(筋力):10(+15)

VIT(頑丈):10(+5)

INT(知力):10(+12)

RES(抵抗):10(0)

DEX(器用):205(0)

AGI(敏捷):10(0)

LUK(幸運):5(0)

【装備】

武器(左右):烈打の赤撥

武器:装備不可

頭:-

胸:村人の服

腕:-

腰:村人のズボン

脚:村人の靴

アクセサリ:-

【スキル】

・対魔の調べ【打】

・渾身一打

・震衝痺打

・巌轟宗天流・一の型【破桜】


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 震衝痺打しかスキルを習得していなかったことでスキルポイントがまだまだ有り余っていたから、折角なのでポイントを注ぎ込んで強力そうなスキルを一つだけ習得してみた。


 巌轟宗天流・一の型【破桜】——習得にスキルポイントを90消費する上に、習得条件としてDEX200を要求する大喰らいなスキルだ。

 効果はクリティカル威力の上昇と内部破壊攻撃の二つのようだ。


 DEXに極振りしてしまったノリのまま半ばヤケクソで取ってみたが、これで全然使えないスキルとかだったら流石に泣くぞ。

 でもまあ、そうなったらそうなったでネタにすればいいか。


 俺が地雷になったところで迷惑かけるのはコトだけだし。

 それに向こうも俺と似たようなもんだから、そこまで気にする必要もないしな。


「——さてと、そろそろ出発するか」

「ラジャ!」


 ステータス強化とスキル取得——ついでに自撮りも(無理矢理撮らされた)——を終え、ダンジョン探索を再開する。


 つっても、やることは今までと何も変わらないが、第三層になったことで出現するモンスターに変化が生じていた。


 泥人形と紫スライムが出現しなくなり、新たにガーゴイルの幼体みたいな奴や白く変色したコウモリみたいなモンスターが姿を見せるようになっている。

 どっちも飛行能力を備えていて、飛び道具がなければ苦戦するように設計されたんだろうが、コトの悪魔的な範囲攻撃の前には無意味だ。


 疾走感のあるリフがダンジョン内に響き渡る。

 刹那——莫大な電気の奔流が空中にいるガーゴイル達を飲み込み、一撃で消し炭にしてみせた。


「これじゃあ、どっちが悪魔か分かんねえな」

「ケ〜イ〜! なんか言ったー!?」

「いいや、何も」


 ——それにしても、だ。


「……なんか、さっきより攻撃範囲広くなってないか?」


 はっきりとした変化ではない。

 気持ち一、二メートル程度拡がったかなと思う程度だ。


「うん、アタシもそう思った。DEXを上げたからかな? 威力はそんなに変わってなさそうだけど」


 50ポイントも消費した結果がこれだけだと思うと残念な感じもするが、射程範囲が延びるに越したことはないか。

 その分、コトが安全圏で戦えるってことになるわけだし。

 火力に関してはより強い武器に持ち替えれば良いだけの話だ。


 電撃を無効化してくる泥人形がいなくなったことで、完全にコトの独壇場となっていた。

 おかげで俺の役目は何も無くなり、ただただキャリーされながら先導するだけとなっていた。


 こうして探索を進めて行くうちに、ようやく下層に続く階段を発見する。


「これでこの階層も終わりかあ。なんだか呆気なかったね」

「だろうな。お前のメタになる泥人形がいなくなったわけだし」

「確かに。でもなー、楽に進めるのは良いけど、味気ないって言うのもなんか違うんだよねー」

「我が儘だな、おい」


 俺としては、このまま何事もなく終わって欲しいところだ。


「だってさー、折角のダンジョンだよ。ダンジョンといえばみたいな何か体験してみたいじゃん。えーっと……ほら、トラップとかさ!」

「んなもん、なくていい。つーか、まだ序盤のダンジョンにトラップとかあるわけないだろ」

「いやいや、分かんないよ。ここちょっと強めに設計されてるみたいだし、歩いてたら急にトラップが発動するなんて——」


 その瞬間だった。

 少し道を逸れたコトの足元に、赤い魔法陣が淡く光った。


「……へ?」

「——コト!!!」


 フラグ回収早すぎだろ!!


 咄嗟に手を伸ばし、コトの右手を掴んだ直後——目の前が真っ白に染まった。

 一瞬の浮遊感の後、視界が開くと、そこには広大な地底湖が広がっていた。


「どこだ……ここ?」


 周囲を見渡してみる。

 四方が湖に囲まれていて、出入り口らしきものは見当たらない。


 けどここもさっきの鍾乳洞の一部のようで、足場は鍾乳石で作られている。

 月光に照らされた水面は青く煌めいていた。


 隔絶された陸地……まさか、隠しエリアか?

 ……いやいや、んなわけねえか。


(それよりも……)


「コト、大丈夫か?」

「う……うん、平気。……ゴメン、ケイ。アタシがドジしたばかりに」


 沈んだ声でコトは目を伏せる。

 まさか本当にトラップを踏むとは思ってなかったんだろう。


「気にすんな。俺もコトも無事なわけだし、切り替えろ」


 さっきのは防ぎようのない事故みたいなもんだ。

 多分、罠探知系のスキルがなければ発見できてなかっただろう。


「今はとりあえず、さっきの場所にどうやって戻るか考えようぜ」

「……うん」


 申し訳なさそうに頷くコトを横目に、水際に近づこうとして——突如、後方で大きな水飛沫が上がった。

 急いで振り向くと、水中から高さ三メートルはあるであろう巨大な蝦蛄のようなモンスターが飛び出してきた。


「——なるほど、そういうことかよ!!」


 ボスフロアだったか!!

 通りで他に続く道がないはずだ……!!


「コト、落ち込むのは一旦、後回しだ!」


 俺はバチを強く握り締め、すぐさま戦闘準備を整えた。

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