9.家族だと思ってたら家族じゃなかった【ホラー】

 しばらくぶりに夢が記憶に残った。

 ゾッとする内容だったので自分が心配である。


 直接のグロ描写はないが、グロ予告描写だけあるので、それすら苦手な方はブラバされたし。


 本当に謎の不気味ストーリーであった、

 それでは早速。



 そこは自宅だった。

 私は仕事から帰ってきたところで……何だったか、好きなアーティストの新曲を聴こうとワクワク帰宅した様子であった。


 帰宅時の手洗いうがいなどのルーティンを終え、リビングに踏み込んだ私が目撃したのは、ダイニングテーブルの上に拘束されている成人男性と、その目と口にガムテープを貼る家族の姿だった。


「……何してるの」


「こいつ、私のことずっと昔に○○(覚えていない)したからさ、これから解体するバラすの」


「……へぇ」


 いや「へぇ」じゃないよ。止めようよ。何されたか知らんが犯罪はあかんよ。

 家族はガンギマりの顔で大きな牛刀を構えていた。どうやら生きたまま足からいくようだ。

 拘束されている成人男性は何やらもごもご言っていた。あわれ。


「まあいいけど……これから新曲聴くから、イヤホンするまで待って。うるさくするでしょ?」


「わかった、早くして」


「ん」


 良くない良くない良くない。


 しかし夢の中の私は新曲視聴の邪魔さえされなければ良かったらしく、さらっと流して自室に引っ込んだ。そしてイヤホンを取り出し、装着しようとしてはたと気づく。


 …………あれ、家族じゃなかったな??


 そう、自室に入るまで普通に会話している間は、あれが家族の一人に見えていたのだ。


 相手の受け答えもそのもので、全く疑わなかった。


 しかし自室に入って、しばしの沈黙を経てから気づいたのだった。家族に見えたあれは家族じゃない、赤の他人だと。


 背筋が冷えた。


 このままでは我が家のリビングで成人男性解体ショーが始まってしまう。

 しかもそれを行うのは家族に見えた誰か。きっと成人男性解体ショーの次は私解体ショーだ。間違いない。

 怪異か、他人の空似か、何でもいい、とにかく猟奇殺人の現場とドアを隔てて隣という最悪の状況から脱しないと次の被害者は私だ。


 気づいていないふりをして部屋を出るか? いや、そんな勇気は出ない。

 ベランダから脱出するか? ……それしかない気がする。


 ベランダに通じる扉は重たくて、開けるとカラカラ言う。それが聞こえたら不審に思われると感じた。

 私は逃走の支度を整え、外出中の他の家族に連絡することを心に刻みながら、そっとベランダの扉に手をかけた……



 ――――ところで目が覚めた。

 真夜中だった。


 心臓はバクバクだし、暗い部屋が怖すぎる。

 なにせ、夢の中ではこの自室の外に解体ショーマンがいたのだから。


 現実そっくりな感じの悪夢を取り締まる法律ができねぇものだろうか。明日も仕事なのに寝れなくなっちゃったじゃないか。最悪だ。怖いし。


 そんな夢であった。


 家族だと思っていたモノがそうじゃなかった、こんな最悪な現象はどうかこれきりにしてほしいい。

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