第34話 月曜に真弓さんとお風呂に入る。

「「ただいまー」」

「おかえりな……さ、い。和樹さんと真矢ちゃん……なんで二人一緒なんですか⁈」


 ばらばらに帰るなどと言う隠すこともせず、普通に帰ってきてしまった結果がこれだ。真弓さんが、固まってしまった。そして、


「もももももしかして、真矢ちゃん、大人の階段を……」

「流石にそこまではしてませんし、触ってもません。

 ただ、デートしただけです」

「なんだ、ただデートしただけだったんですね……それは安心しました……」


 と、真弓さんが安堵の息を吐くが、


「違います、なんで、デートしてるんですか!

 真矢ちゃんだけずるい、ずるい、ずるい!

 私だってデートしたい! したいったらしたい!」


 と、三十六歳児になってしまい、プンプンと頬を膨らませる真弓さんが可愛い。

 何ともである。


「そしたら、今週、水曜日あるいは木曜日デートできません?

 一日」

「ぇっとですね……何とかします!

 水曜日で!

 確認しておきます!」


 っと、提案を嬉しそうに笑顔を浮かべながら吞んでくれる。

 すると、今度は左のスーツ袖を引っ張られるので、


「真矢ちゃんもまた今度しようね」

「なら、よし♪」


 なんだか、プレイボーイみたいなことになっているが致し方ないのである。

 これは真矢ちゃんか、真弓さんか、どっちと結婚するかを決めるために必要なことだと自負している。真面目に相手と付き合うことで、どっちか決めねばと、責任感の高い僕がそうさせているだけだ。

 そう言い訳しておくことにする。


「ところで、晩御飯はもう食べていらしゃったんですよね?

 真矢ちゃんと」

「そうですね。

 後はお風呂に入って寝るだけで済ませられればと」

「了解です。

 そしたら、お湯は張ってありますので、お入り下さいな」

「じゃぁ、私も一緒に……」


 と、真矢ちゃんが言い始めたタイミングで真弓さんが言葉を挟む。


「真矢ちゃんはさっきプロデューサーさんから電話あったから、折り返しして欲しいって。

 デートの際、携帯切ってたわよね?

 急ぎではないけど、ちゃんと対応してあげた方がよさげな感じだったわよ」

「……なんだろ、また大きなプロジェクトとってきたのかな……」


 っと、真矢ちゃんが携帯で電話を掛けながら、二階の自分の部屋にあがっていく。流石に仕事の話は真弓さんに聞かれたくないのだろう。


「ありがとうございます。

 ナイスインターセプトです。

 心臓が持ちませんもん、お風呂まで一緒に入ったら」

「そうですよね。

 ふふふ」


 真矢ちゃんの魅力をデートで満喫した上に、お風呂まで一緒に入られるとマズいのは正直な話だ。

 礼を述べると、真弓さんが可愛らしく微笑んでくれる。


「はやく、はいちゃって来てくださいな」

「判りました、頂きます」


 っと、一階の自分の部屋に行き、スーツを脱ぎ、バスローブを着てお風呂場へ。

 そして何も問題なく、お湯に浸かる迄いけてしまうので、凄く良い。


「あぁ、大きなお風呂はやっぱりいいよなぁ……」


 林檎の浮いたお風呂を堪能しつつ、僕は誰に言うでもなく落ち着き払う。

 先ほどのデートでは大分、テンションが上がってたな自分と、少し恥ずかしく思う。


「自分に酔っていたともいう奴なのかもなぁ……」


 最近、その傾向が強いのは確かな気がする。

 だって可憐な高校生アイドルの真矢ちゃんと、可愛い美熟女の真弓さんの二人に言い寄られてるんだ、男として自信も沸いてくるもんである。


「入りますね~♪」


 っと、真弓さんの声が突然するので、


「はい、シャンプーか何かの入れ替えですか?」


 常識の範囲で応えて観る。


「いえ、お背中御流ししようかと」


 っと扉の前には、タオルを持った裸の真弓さんが居た。

 やはり胸が大きい、というかデカい、そして身長の低さや顔の愛らしさも相まって背徳感がヤバい。

 それにいつも一つの三つ編みにしている真弓さんが髪をほどいている姿も始めてだ、ギャップに色気と言うモノを感じてしまう。


「いいえ、必要ないので、出て行ってください」

「いえ、真矢ちゃんがしたことは私もする権利があります!」


 逃げようと隙を観るが、扉は真弓さんの後ろだ。

 巨乳からは逃げれ無い。


「……」


 どうしたものかと悩む。

 とはいえ、真矢ちゃんにされたことを真弓さんにだけして貰わないのは変な話である、


「なら、真矢ちゃんと同じで背中と頭だけお願いします」

「お願いされました♡」


 っと、椅子に誘導される。

 そして、ごしごしと頭を洗われ始める。

 真弓さんの大きな塊がフヨンフヨンと背中に当たるので、自分の理性に集中するために、過酷な六月業務を頭に浮かべながら耐える。

 業務の量で頭が痛くなってきたので、思考を放棄する方向に切り替える。


「お痒いとこは無いですか~?」

「だ、だいじょうぶれふ」


 突然の質問に噛んでしまう。

 そんな僕を真弓さんがフフフと漏らすのが判る。

 恥ずかしいことをしたもんだ。


「結構、大きな背中なんですね」


 次は背中だ、ゴシゴシと丁度いい感じで布を押し当ててくれる。

 真弓さんの手が慣れた手つきなのは気になるので、


「結構、慣れてますよね?」

「美容のコンサルで女性の背中を指圧することも有りますから、それの応用です。

 ……今の嫉妬ですか?」 


 っと質問を返されてしまい。

 しばらく黙る羽目に陥るが、ポツリと、


「……かもしれませんね」

「ふふふ。

 正直で嬉しいです」


 っと、背中を流してくれた後に抱き着いてくる。

 大きなフヨンフヨンの塊が背中一杯に押し付けられて、どうにかなってしまいそうになる。

 それに真弓さんから漂う、女の香り、林檎のような甘い香りがとても男を刺激してくる。


「さて、前は自分でお洗い下さいね?

 もしもさせてくれるのでしたら、私が洗いますが?」


 鏡の中の真弓さんが舌を出して、そう言ってくる。


「自分で洗いますから……!」

「あら、残念」


 っと、お湯を一杯かぶり、髪の毛をまとめてお風呂に身を鎮める真弓さん。


「そして、はぁ、気持ちいいですよね。

 仕事帰りのお風呂って」

「それは同意です」


 頷きながら、言葉を返すと、


「今日こそは一緒にって待ってたんです。

 真矢ちゃんも遅いって聞いてましたので」

「……僕に拒否されるとは?」

「思ってませんでしたよ?

 だって和樹さん、お人よしじゃないですか」


 そう核心をついてくるので、うぐぅっと、ぐうの音も出なくなる。


「それにバカ真面目だし、言われるがままのことを真に受けて全部を本気で捉えちゃう」

「うっ」

「真矢ちゃんに流されて流されるまま。

 それに私も大甘で、基本的には優しくしてくれる。

 嬉しいです☆」

「……今までの方ってどんな方たちだったんですか?」

「嫉妬と好奇心ですか、嬉しいです♪」


 そう、ヒマワリのような笑みを浮かべて真弓さんはその、黒く長い髪を弄りながら、


「結構、我が強い人が多かったんですよね?

 ダメ人間で、でも夢に向かってたり、何とか会社を立て直そうとしたり、一番初めの真矢ちゃんのパパは優しいだけのダメ人間でしたけど。

 和樹さんには似てるかもしれませんね?」

「僕は優しいだけじゃありませんよ?

 今の娘さんと比べようとしている状況を観れば鬼畜に値します」


 昔の男と同じだと言われたので、ムッとしながら自分の所業ながら、ダメ人間であることを告白する。

 言って思うが情けない話である。


「知ってます。

 ちゃんと見てくれようとしてくれますもんね。

 自分自身で。

 他の人は私のご機嫌を伺うばかりでしたし」


 っと、ちょっと困ったぞ、っと笑顔に浮かべる真弓さんが可愛い。


「入りますね」

「どうぞ♡ どうぞ♡」


 洗い終わり、お風呂の隣に座る。

 大人二人でも十分なスペースがあるお風呂に感謝だ。


「……」

「……」


 話題が浮かばず、沈黙が続く。

 でも心地よい沈黙だ。

 社長と会議で対立した時の沈黙とは違い、お互いに心を許し合っているからこその沈黙とでも言うのだろうか。

 特に言葉を交わさなくても、表情を観たり、観られたりで楽しい。


「真弓さん」


 だが、沈黙を破った。


「はい?」


 小首をかしげて可愛い様子で、聞いてくる。


「水曜日は一日、空けることが出来たんですか?」

「へ?」

「デートの話です、デート」

「え、えっと水曜日なら空けれましたので、ハイ」


 そして再び、二人、沈黙になる。

 けれども、真弓さんはデートのことが楽しみになったのか、えへへと笑みを浮かべてくれるので可愛い。

 さておき、


「さて、私も洗いますかね」


 それを聞いて、


「じゃぁ、僕は先に出ますね」

「はい♡

 ごちそうさまでした」


 っと、引き止められず送り出してくれた。


「あっ、ベッドは私の部屋のを使ってくださいね」


 但し、釘だけは刺された。悪い気分では無かったが。

 なお、真矢ちゃんが先に寝ていた。

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