第25話 運命の時

キーンコーンカーンコーン―――…。


「じゃあ、中間テストは今日で終わりだ。いつも通り、100位以内に入れば、廊下に名前が張り出される。まぁ、常連だらけだろうがな」


担任が、しらけた声で言った。





「お疲れ。篠原くん」


「おう。水無月」


「どうだった?3日間」


「う~ん…やるだけのことはやった!!」


「そっか。それならいいや」


ふたりとも、やけに清々しい顔をしていた。





*****





―結果発表前日―


「おい、篠原、今日の放課後職員室来い」


と、新は担任に呼び出しを喰らった。


「え?なんで?」


「いいから、来いよ?」


「へーい…」


新は、何だか嫌な予感がした。


「篠原くん、先生、なんて?」


「ん?別に?知らん」


「…そ…か…。じゃ、いよいよ明日だね。結果発表。きっと、100位以内入ってるよ!篠原くん、頑張ったもん。本当に、よくやった!」


「なんだよー、その上から目線~!」


「だって、私がどっからどう見ても上でしょ」


「やっぱ、嫌な奴だな…お前…」


「余計なお世話」


ピンッ!と、茉白は新のおでこをはねた。


「イッテ!!んなにすんだおー!!」


「ふふ。明日、楽しみにしてる」


「…おう」


そう言うと、ふたりはそれぞれの席に戻った。そして、茉白が席に戻ってから、すぐさま駆け寄ってきた人物がいた。山本だ。


「水無月。あの約束は…なしにはなっていないよな?」


「…えぇ。私、自信があるの」


「それは、水無月はかなりの実績があるからな…。俺も1位と引き換えに君との交際を申し込むのは勇気がいった。負ける恐れの方か多いからな…」


「違うわ」


「え?」


「私が信じてるのは、篠原くんの方。こんな風に後での形になってなってしまって申し訳ないけど、もしも、篠原くんが100位以内に入ったら、私のことはきっぱり、諦めてもらえる?」


「な、何故だ!?」


「…私は、篠原くんが100位以内に入ったら、これからもテストがある度、勉強会を開いてあげるって約束してるの。そうなったら、とてもじゃないけど、山本くんと付き合ってる暇は無いから」


「…篠畑を…信じているのだな…」


「まぁね…。それより、そろそろ、クラスメイトの名前くらい、ちゃんと覚えたら?そう言う所も、私、すきじゃない」


ぐさりと来た。『すきじゃない』と言う、はっきりとした初めての茉白からの言葉に、山本は脈は薄い…そう思わざるを得なかった。しかし、明日、茉白に勝てば、それでも、考えてはもらえる。そう、言い聞かせた。





*****




「しっつれーしまーす!」


乱暴にガラガラと職員室の扉を開けて、新は、担任の元へ歩み寄った。


「せんせー、話って何?」


「実はな、お前、来年から補習コースに進学の予定だったんだが、今回のテストの結果が良くてな。普通コースでもついて行けると思うんだが、お前自身はどうしたい?」


「結果がいいって!?何点だったの!?何位だったんだよ!!??」



「あぁ…それはな…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る