第13話 この気持ちは一体
「もぐもぐもぐもぐ…ジュ―」
茉白は、無表情で、ポップコーンとコーラを口に入れながら、すんごくつまらなそうに、面白いと評判の映画を観ていた。
隣では、手を握ろうか、握るまいか…と左手をうずうずさせている山本がいる。その手につかまらないように、茉白はポップコーンの入れ物に入れたままだ。
映画が終わり、山本はなんとかいい印象を残そうとしたのか、ファミレスではなく、ちょっとしたレストランに食事を誘った。
「いいの?こんな高そうな所」
「構わない。水無月はこ好みか?」
「来たことないからわからない」
「…だよな…」
思わず、ツンケンしたくなる。こんなことをしたのが、新だということに、絶対に目的はノートだということに、やるせない怒りと、訳の分からない悲しさが湧てくる。唄への怒りは全くない。武吉のことがすきなのを、ずっと相談されていたから。そんな唄まで利用して、山本のノート…いや、赤点を取りたくないが為だけに、利用された茉白は本当に可哀想だ。
「山本くん」
食事をしながら、この日、2回目の、『山本くん』と言うワードに、山本は、ウサギのように耳を立てた。
「なんだ、水無月」
「今日はありがとう。あいつ…篠原くんによろしく」
「み…水無月…」
そう言うと、食事を残し、さっと席を立った。山本に罪は無い。それは解っていた。しかし、今、愛想で山本に優しくできる程、茉白の心中は穏やかではなかった。
*****
「よー!!はよ!!水無月!!」
「…」
「ん?なんだ、腹でも遺体のか」
「だれが死んでるの」
「なぜわかるんだ…」
「昨日はよくも利用してくれたわね」
「…まぁ、良いじゃん。山本も悪い奴じゃないしさー。一回くらいデートしてやっても」
「貴方がそう言う優しい理由で私を利用したのなら、まだ許せたけど、どうせ、山本くんの古文のノートが目的だったんでしょ?本当に悪知恵だけは働くのね」
「…もしかして、怒ってるのか?」
「あったりまえでしょ!!」
パシンッ!
思いっきり新の頭をひっぱたいた。
「いってー!!」
「もう、2度とあなたの勉強の協力はしないから!一生赤点で、落第でも中退でもするといい」
「えー!そこまで言うかな…」
「それくらい、貴方がしたことは卑劣なことなの!!自覚は無いの!?」
「…なんでそんなに怒るんだよ…。山本には、一回きりのことだってちゃんと言ってあるからさぁ」
「そう言う問題じゃないの!!」
ゴンッ!!
茉白はまた、さっきより3倍の力で新の頭をぶん殴った。
「いって――――――――――――――――――!!!!!」
新は、しゃがみこんで、頭を抑えた。
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