第14話 茉白の復讐はやばかった

「…やっぱ…ダメだったか…」


げんなりして、新は頭を抱えた。茉白の呪いか、自業自得か、山本のノートをあんな卑劣な真似までしてコピーできたのに、結局、小テストで赤点を取った新。


「やっぱ、見るだけじゃ、わっかんねーんだよな…。ちゃんと説明してくれて、教え方が上手くて、解りやすい…そういう奴がいないと…。…。」


新の頭には、茉白の顔が浮かんでいた。化学は、難問だったが、茉白の教え方が、非常に上手く、解りやすかった。笑いながら、冗談言いながら、それでも、ポイントポイント重要な点は示唆してくれたのだから。何とも、先生より解りやすい。それを、失ったのだ…と何だか初めて自分のしたことが悔やまれた。頭は悪い。サッカーしか出来ない。モテる訳でもない。びじゅつぶも書けない。二学期から始まる、理数数学Ⅱを、茉白の教育なしで乗り越えられるだろうか?


茉白の背中を、見つめる、新。


(やっぱ…あんなことしなきゃよかったな…。結局赤点だったし…意味ね―じゃん…)


そう思って、でも、後悔した理由が何か違う気がする。腕を組んで、首を斜めにして、新は独りよがり考えていた。この気持ちはなんなのか、そして、どうしてあんなことをしてしまったのか…、なぜ、あんなに茉白が怒っているのか…。



*****



「水無月…」


「…」


「水無月…?」


「…」


「水無月…様?」


「…」


「ゆるしてくれよー」


「許すくらい、漢字で書けないの?」


「あ!いつもの水無月!!」


新が大袈裟に喜ぶ。


「許して欲しいんなら、一つ、提案がある。これを聞いてくれたら、勉強会、テスト事、毎回開いてあげてもいいけど?」


「えぇぇぇ!!!???そんなラッキーな点案があるの!?」


「…提案ね。かなり、ヘビーな提案よ?出来る?」


「する!!何でもする!!」


「勉強会をしてあげる代わりに、絶対、中間テストでは、学年100位までに入りなさい」


「…今、なんて?」


「100位以内に入りなさい」


「え…えぇぇぇぇええ!!??でっ出来る訳ねぇじゃん!!俺の最高記録、521人中489位だぞ!!」


「知ってる」


「なんで知ってるんだよぉぉぉ!!お前はまえっからエスパーだと思っていたが、やっぱ本物のエスパーだったのか!!??」


「貴方、馬鹿なの?」


「なんで!?」


いつもにも増して、冷ややかに茉白は言う。


「貴方、教室中に響き渡る声で、『俺の下に、32人もいる―――!!』って叫んでたよね」


「あ…そだっけ…」


そんなことすら覚えていない、お粗末な新の頭なのだった。


「100位以内に入ったら、それ以降のテスト、全科目を享受する」


「教授…」


「うん。貴方のことだから、その漢字に変換されると思ったわ」


「だから…なんで俺の脳みそを読むんだ…」


「どうする?赤点を取り続けて、追試にも、再追試にも失敗して、サッカー部を辞めさせられるのと、今回、中間テストで私にあなたの実力を見せて、私を感服させるのと、どっちを選ぶ?もしも!100位内に入らなかったら、今後一切勉強の手伝いはしないし、その腹いせにまたようなことをすれば、私と話すどころか、私の名前を呼ぶたびに、1000円払ってもらう。出来る?」


「ドゥエー――――!!!そんな無茶な――――――――!!!」


「でも、選択肢はこの2つしかないよ。恐らく、中間テストで赤点を取ったら、ほぼ、部活には参加させてもらえず補習補習の毎日でしょうね」


「くぅぅぅ…!!!」


「どうする?サイテーサイアクのデートを催してくれた篠原新くん」


にんまり。とする茉白。考えに考えたを、今まさに実行していた。

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