第9話 再追試と山本からの指摘

「何故だ…何故なんだ…再追試じゃないかぁぁあああ!!」


「はぁあ!?」


茉白は結構な感じで顔が青ざめた。


「何してるの!篠原くん!あんなに公式覚えさせただしょ!!日高くんは?」


心配そうに、武吉の顔を覗き込む。


「ふ…ふふ…ふふふ」


その笑みに、


「あぁ…日髙君は大丈夫だったみたいね」


「ふ…17点だ!!!」


「自信たっぷりに言うことなの!?それって!!」


「「なんで~!!!???」」


「私が聞きたいよ」


「「…改めて、お願い申し上げます…水無月様…」」


嫌な予感しかしない。


「「ノート見せてください―――っ!!!!」」


やっぱりか…と大きなため息を吐くしかない、茉白。


「ノートを見ながら、しっかり、身に着けること!!これを約束出来たら、勉強に付き合ってあげる」


「「はい…」」


ノートを見せてくれるだけで良いのに…と言い気な2人をよそに、茉白は机から立ち上がった。そして、山本の机に行くと、


「山本くん」


「!!水無月!!なんだ!ゆ、許してくれるのか!?」


「違います。英語の若狭わかさ先生にノートをクラス全員い提出させるよう仰せつかっているの。リーダーと、グラマーの両方。1人じゃ運びきれないから、一緒に運んでもらえると助かる」


久々話しかけてくれた茉白に、一瞬テンションの上がった山本だったが、すぐにシュンとなった。


「そ、そうだな。そんな重労働を女子1人にさせる訳にはいかないな。もちろん手伝うぞ」


それでも、すぐ立ち直る。茉白に対しては、めげない男だ。


「…言っておくけど、許婚の方はもうそちらのご両親にも了承を得たから。私と、結婚できる可能性は残念だけど、無いと思ってね」


山本には…う~ん…ほとんどの人間に冷たいが、茉白はなんだか、山本にはさらに冷たい。許婚の件は解決したと言うのに…。


「「失礼しました」」


ガラガラと、職員室の扉を閉めると、2人は教室に戻る廊下を辿っていた。


「水無月…」


「なに?山本くん」


「君には…好きな奴がいるのだな」


「へ!?」


いきなり、そのポーカーフェイスが、ガタガタと音を立てて崩れていく。


「やはりか…」


「それはないわ」


しかし、一瞬でそのポーカーフェイスは直された。


「ち、違うのか?」


「山本くんがなぜそう思ったのか、参考に聞かせてくれない?これから、そんなふしだらな噂がたつような女にはなりたくないから」


「…噂ではない。俺の直感だ。君がすきなのは、篠畑ではないのか?」


「…山本くん、篠原…よ?まだ覚えてなかったの?そのあなたの直感とやらに付き合ってる暇はないし、それは愚問に恐ろしく近いな」


「愚問?」


「私は、話の合う相手にしか興味はない。なんの勉強の話をしても、篠原くんはついてこれない。でも、山本くんのように、そのことに自信満々で、人を見下す人もすきではないの」


すきではない、と言う、ワードに、山本は、諦めモードにやっと入った。


「だから、クラス委員としては、仲良くさせていただくけど、それ以外は友達の範疇を出ないわ」


「じゃ…」


と、なにか、山本が言いかけた時、


「水無月――――!!」


「…篠原くん。そんな大きな声で呼ばなくても、廊下は響くから、十分聴こえてるよ」


「あ、そうか?いや!これから、例のカフェで勉強会を頼む!!必ずや、50点を超えるから!!」


「50点!?…そんな大見得を切って大丈夫なの?」


「水無月が教えてくれる気になったんだ!恩返しにそのくらいの成績は残さないとな!!」


「…そう。じゃあ、先に日髙くんとファミレスに行ってて」


「あ、でも、俺ら、部活あっから、その後でいいか?」


「あぁ…そうか。全然かまわないよ。そうすれば、私も美術部に顔出せるし」


「あぁ、そういや、水無月びじゅつぶだっけ」


「…お願い。そろそろ美術部は漢字で言って…」

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