第8話 茉白の恩返し

「ああああぁああああぁあぁああ!!!やっちまったぁあああ!!!!」


中間テストの返却の日。またしても、新は悲鳴を高々と上げた。


「なんだ。また追試か?新」


随分自信ありげな武吉に、新は焦った。


「武吉!!お前、まさか!?」


「27点だ…」


『…』


「「おー!!友よ!!」


2人は、ロミオとジュリエットのように抱き合った。化学でめでたく赤点を取ったらしい。


「なんだよぅ!!モルノードってなんだよぅ!!訳解んねぇよぅ!!デ○ノートの新たな刺客か!?」


「貴方たち馬鹿なの?」


「げ!!水無月!!」


「げ!!って何よ。人を馬鹿にしてるの?」


「だって、水無月いつも俺たちのこと馬鹿にすんじゃん!!」


新は、精一杯反発した。


「私は馬鹿にはしてないよ。ただ、事実を言ったまで」


「それを馬鹿にしてるって言うんだよ…」


「何を泣いてるの…」


「だぁってぇ!!モルノードわかんねーよー!!」


「とりあえず、全部をカタカナにするのをやめるのね。モルノードではなくて、㏖濃度よ」


「…どうやって求めるの?答え」


「…貴方、馬鹿なの?何となくスルーして教えてもらおうとしたね?そんなことが私に通じるはずないでしょ」


「やっぱり?」


「水無月!!俺からも頼む!!その『解答ノート』を俺たちに見せてくれ!!“話”は聞いた!!これから、俺もボディーガードになろう!!その良美で、どうか!!」


2人は土下座する。


「私の名前は茉白。良美ではなく、誼みと書くの」


「「…」」


「解らないようなので、言います。良美は、名前ではありません。何らかの縁によるつながりのことを言うの」


「それより、頼むよ!!」


「…それよりは…こっちのセリフ。なんで日髙くんの世話までしなきゃいけないの?」


「だから、これからは俺もボディーガードに…」


「…だから、な・ん・で!山本くんとのことを日髙くんも知ってるのか、と聞いてるの!!」


茉白の顔が険しくなる。


「別に。困らされてる…としか言ってない」


「え?それ以外なんかあんの?」


興味津々となった武吉が突っ込んでくる。


「いや?それは、やくそ…ぬぐぐぐ」


思いっきり約束を破ろうとしている新の口を、慌てて茉白は塞いだ。


「解ったよ!!もう!!今日、放課後、美術室で!!」


「「はい!!」」


2人の返事は、授業では一切聞くことはないだろう。





「だから、この公式で㏖濃度を求めるの」


「え…じゃあ、3㏖?」


「…違う…」


「俺!俺解った!!19!!」


「…どうしたらそうなるの?これは、4.0(g)/40(g/mol)/2.0(L)=0.05(mol/L)になるの!!」


「「うげげ!!見たことのない数字ばかりだ!!そして記号ばかりだ!!暗号か!?暗号なのか!?」」


「…」


どうやって教えよう…。茉白はどんな難問より、頭を抱えた。

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