第7話

 どうやら、笑顔の少女が、ダウンジャケットのお支払いの相手らしい。

 中学生くらいか?

 何故か、見覚えのある笑顔だ。

 ダウンジャケットの支払いだけなので、名前を訊くまでもない。


 彼女を思春期魔女と名付けた。


 僕の背中のリュックの中には、ジャケットが入っている。

 

 リフトが、頂上へ着くと、


「ついて来て」


 とひと言。

 笑顔は、消えている。

 表情の無い顔は、何か怖い。

 思春期魔女は、コースを外れた。

 その雪は、コースではないはずなのに、圧雪された様に滑りやすかった。

 どれくらいの時間滑っていたのだろう?

 ずいぶん長く滑っていたようにも、僅かな時間だったようにも思える。

 後で考えると、分からなくて、当然だ。

 

 季節が、冬しかない森では、どんな時計も凍り付き、時間を刻めなくなる。


 雲に隠れた太陽。

 眼前に開けた景色は、白と黒の世界だった。


 目立つものは、周囲を威圧する大木の数々。

 そして、大木の枝の上の巨大なシルエットだ。


 スキーを止める。

 同時に風が、雲を動かした。

 雲間から、冬の陽光が、森に降る。

 光の帯、立つ中、

 色を取り戻した世界。


 シルエットは、ツリーハウスだった。

 

 ここは、ツリーハウスの村。

 堕天の森。

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