第8話

 堕天の森は、季節が冬しか存在しない。

 墮天使の集まる村。

 

 いくつかのツリーハウスの中、

 最も大きなハウスに案内された。

 この村で、翼を持たない人は、僕しかいない。

 いや、僕を案内してきた思春期魔女にも翼がなかった。

 翼のある彼女たちは、天使だろうか?

 ほとんどが、子供の姿をしている。


「その人間が、ダウンジャケットの彼ね」


 最も年下に見えるその女のコは、子どもらしい声で、ずいぶん大人びた話し方をした。

 

 お子さま天使と名付けた。


 幼い子供には、魔女は似合わない。

 お子さま天使を取り囲む様に、全員いる事から、彼女が、この村のリーダーか?

 我ながら変な考えに捉われる。


 しかし…。


「この人には、ダウンジャケットが役に立たない様です」


 僕を案内してきた、思春期魔女がお子さま天使に言った。


「あなたが悪いわけでもない。気にする必要はない」


 幼稚園児に見える方が、僕を案内してきた思春期魔女を慰めた。

 

 いずれにしても、一面の雪景色に、そぐわない華やかな少女たちだ。


「それにしても、あのジャケットで温もらない心。お気の毒な人間ね」


 別の翼持ちが、話を挟む

 彼女は、小学生になったばかりぐらいか?


 ランドセル天使と命名しよう。


 お子さま天使が苦笑しながら、注意した。


「申し訳ありません」


 ふたりの会話だけが大人だ。

 やはり、お子さま天使は、偉い様だ。


 


 

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