だ〜るまさんが、こ〜ろんだ!!

ボクはそう言いながら、会長に自分の体をなすりつける。凹凸の何もない平坦な体だが、異性の体としては誘惑になるはずだ。


ガタンと音が鳴って、ボクは机に叩きつけられた。地味に背中が痛い。


そして、目の前には眼をぎらつかせた会長の姿。なるほど、誘惑は効果的だったらしい。


「いいですよ、会長になら、ボク……」


正直、男に掘られるなんぞマジで嫌だが、明日を迎えるためなら仕方がないだろう。


慣れた手つきでボクの制服を脱がしていく会長。いや、手慣れすぎじゃない?絶対何人か女生徒食ってるだろ、これは。


いやしかし、無言はないだろう無言は。普通の生徒だったら悲鳴もんだぞ。


その時、ふと、ボクは彼の右腕に何か付着したのに気づいた。


何だろう?赤黒くて液体みたいな……。


え?赤黒い液体?


「あ、あ"あ"あ"あ"あ"!!!ぅぅう!!!!痛い痛い痛い痛い!!!!」


気がつくと、ボクは四肢からの痛みに叫んでいた。四肢に視線をやると、根本から全て千切れている。いわゆる、ダルマ状態になっていた。


目も耳も潰されたようで、先ほどまで目の前にいた会長の声も聞こえない。姿も見えない。ただ、ボクはその痛みに、喉が潰れるほど叫んでいた。





⭐︎⭐︎⭐︎





「………」


また、今日だ。ボクは目が覚めると、また自分の部屋で今日を迎えていた。


生徒会長もダメだった。じゃあ、誰ならいいんだろうか?そんな思考を頭の隅へと追いやる。


「よし、今日も彼氏候補見つけるか」


そう自分を元気付けて、ベッドから降りようとした。


でも、降りられなかった。別に、体に支障があるわけではない。あの痛みに、ボクの体が恐怖を抱いているだけだ。


ダメだ。こんな体たらくではまた死んでしまう。動かなければ。


「美樹〜。朝ご飯よ〜。って、どうしたの美樹!?大丈夫!?」


あ、お母さんだ。いつも通りエプロンをつけて、いつも通り明るい声でボクを起こしにきてくれる。


そうだ。ボクは、お母さんのためにも明日に行かなければいけないんだ。


「ちょっ!今日は寝ていなさい。そんな、いかにも体調悪いですよ、って顔をしている子供を学校に行かせる親はいません!!」


ああ、笑顔笑顔。ボクは体調不良なんかじゃないって証明しないと。にぱーっ。


「っ!ホントに何があって……」


あれ?おかしいな。何で笑顔を浮かべているはずなのに、お母さんはそんなにも苦しそうな顔をしてるんだろう。


「お母さんは今から学校に電話してくるから。今日は休んで家にいるのよ」


ダメだよ、そんなことしちゃ。ボクは、まだ元気なんだ。


「今日は、誰にしようかな」


ボクは、やけに心配してくるお母さんの目を掻い潜って学校へと向かった。


風紀委員長、生徒会長。この2人がダメなら、誰があの女神に認められるのだろう。分からない。


分からないから、もういっそのこと全員に告白することにしよう。何回も今日はくるんだし、この作戦なら完璧だ。


その時、肩に刺激が走った。


何で、何で?だって、まだ誰にも告白してない……。


「お、おい。どうした?大丈夫か?」


……この声は、ケン?


そう思って顔を上げると、恐怖からその場にうずくまってしまっていたボクに、心配した顔で手を差し伸べてくるケンがいた。


「何だ、ケンか。驚かせないでよ」


ボクはスックと立ち上がり、そのままケンから逃げるように学校へと向かう。


ケンじゃない。ボクの彼氏には認められないだろう。何より……。


「ちょっ、待てって」


「放っておいてよ!」


そう言いながら、肩を掴んでくるケンの手を振り払う。


「放って置けるわけないだろ!そんな今にも死にそうな顔している親友を!」


なおも、ガシッとボクの両肩を掴んでくるケン。


「そんなに俺が頼りないか?なあ!親友なんだから何かあったのなら相談してくれって、頼むから!」


ボクは、その手は取らない。だって、ケンがいたら頼ってしまうから。


こいつは、なんだかんだ言って心優しいやつだ。今も、何も言っていないボクにこんなにも心配して話しかけてきてくれている。


でも、だからこそケンだけは巻き込みたくない。もし、万が一何かの間違いで、こいつがボクの彼氏として認められたとしたら。


そうしたら、あの女神の言い分から推測するに、そのまま結婚しなければならないのだろう。


でも、こいつはボクよりももっと魅力的な女性と付き合って、結婚することができる。


ボクなんかに、人生を棒に振る必要はないんだ。


「そうかわかった。後で文句は聞く。ごめんな」


「え?」


良かった、分かってくれたのか。と思ったボクの腹にドッ、と鈍痛が走る。目をやると、どうやらケンがボクのお腹を殴ったらしい。


ちゃんと痛い。そういえば、こいつは空手も習っていたはずだ。


「あれ?」


次の瞬間、体がふらりと傾いた。力が入らないのだ。


そしてそのまま、目の前にいるケンにしなだれかかるように、ボクは意識を落としていった。


⭐︎⭐︎⭐︎


「んっ、うぅん?」


目が覚めると、そこは久しぶりに見る光景だった。そう、小学校のお泊まり以来のケンの部屋であった。


「よう、目ぇ覚めたか?」


「…ケン?」


「お前、どうしたんだ?こんなに顔色悪くして…」


「ケンには関係ないよ」


ボクはケンの手を振り解き、ベッドから起き上がる。


「なあ、俺のこと、そんなに信じられない?」


「っ!……」


「頼むよ、何かあったなら話してくれ」


真剣な目でこちらを見つめてくるケン。ここ数日今日彼と話していないからか、その瞳を見ているだけで、なぜか無性に泣きたくなってくる。


「ねえ、ケン。もしもさ、ボクが今日を何回も繰り返しているって言ったら、どうする?」


「え?」


気づけば、ボクの口からはぽつぽつと最近起こった出来事のことを話し始めていた。






⭐︎⭐︎⭐︎





「じゃ、俺とお前が付き合えばいいんだろ?」


話終わった後、あっけらかんとした表情で彼は言った。


「いや、そう言う話じゃ…」


「確かに、お前の危惧する通り俺がその女神?とやらに認められるとは分かんない。でも、やってみてもいいんじゃない?」


それに、と彼は続けた。


「もし俺がダメだったら、明日の俺に同じことを話しな。手伝えるだろうからさ」


「でも、多分あの女神の言う通りだと結婚とか、その先も、その、だと思うからさ。それでもいいの?」


「まあ、そん時はそん時だよ。成せばなるって奴だ」


そう言うとケンは、ボクの頭にポンと手を乗せた。


「じゃあ、あとは寝てな。こんなに体調悪そうなんだ。今は俺がすぐそばにいるから、安心して寝てな」


「……あ、うん」


羊が1匹、羊が2匹、とケンが羊を数えているのが聞こえる。その声を聞いていたボクは、いつの間にか眠りについていた。








夢を見た。ケンとボクが、どちらも大人になって一緒に暮らしている、そんな夢だった。


夢の内容は覚えてないけど、とても幸せな、そんな感情を抱いたのだけは、覚えている。




⭐︎⭐︎⭐︎




ピピピピピピピピピピピピピピピ


「ん、んん?」


いつもと違う目覚ましの音が聞こえる。自分の部屋ではない、木製の屋根が見える。


すぅ、すぅ、と隣から聞こえてくる寝息に首を傾けると、そこにはケンがいた。


うう、とうめきながら目覚まし時計へと手を伸ばす彼の姿を見てボクは、今日が終わったことを理解した。



…………………………………………………


どうも、こんにちは。この作品はこれでおしまいとなります。さて、今回の作品は、なんていうかなんか違うなと思いながら書き進め、途中から絶対に違うなと確信に変わりました。それでも、なんとか完結まで持って行こうと頑張った結果、なんかすごい結末になりました。えー、端的に言います。次は頑張る!!
















今回は後書きないよ。ここまで読んだ人はまるべーポイント0ポイント!!








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【完結】ts転生したボク、なぜか女神と思しき奴に彼氏を作れと言われたんだが? まるべー @marub

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