うちの学校、風紀委員の活動場所まさかの図書室

パチリ、と目が覚めたボクの視界にはやはり、ボクの部屋が映っていた。つまりは、また死んだらしい。いや、殺されたが正しいのか。


「3回目の今日ですね、美樹さん」


突如として聞こえたその声に、ボクは振り向く。そこには、この元凶であろう、あの女神がいた。


「どうなっているんですか」と聞こうとしたボクの口が、なぜか動かない。まるで、見えないガムテープでも貼られているかのような感覚だ。


「質問は受け付けません。悪しからず」


そう続けた女神の言葉曰く、やはりボクの想像通りであっていたらしい。つまりは、彼氏ができるまで死んで今日を繰り返す、ということだ。


そして、女神はまた、二言付け足した。


「ちなみに彼氏は、私が認めた者しか彼氏とは認定しません。認められなかった者以外との交際は、即死亡となります。そして、今日付き合った人とは、必ず結ばれる運命になります」


「どう言うことだ」だの「理不尽だ」だの色々言いたいのだが、やはり、見えない口枷が邪魔をして何も喋れない。


せめてもの抗議として睨みつけると、唐突に女神はあたふたとしだした。


「あ、いえ。主様。もう少しお待ちを。主様?あ、主様。主様は素晴らしくカッコ良いので、もう少し耐えることができるはずです。はい、それはもうとってもカッコいいので」


もしかして、睨みつけるが効果的なのか?とか考えたボクを馬鹿にするかのように、どこかの誰かと会話をするような素振りをし出した。


「あ、じゃあ美樹さん、また!頑張ってください!!」


「え?」


いつの間にか見えない口枷が外れていたボクの口からは困惑の声が溢れ出た。それにしても、あれはまるで誰かに命令でもされているかのような……。


「美樹〜、朝ごはんよ!起きなさい!!」


「あ、はーい。今行きまーす!」


しかし、ボクのその思考は、お母さんの声によってかき消されてしまった。




⭐︎⭐︎⭐︎






放課後、ボクはとある部屋にいた。確かに、いつ殺されるかわからない現状、早く動かなければならないことはわかっている。


しかし、1回目と2回目の死因が違うということは、つまり、家族が殺される可能性は低くなったということだ。


ならばとボクはこの部屋、つまりは、風紀委員の活動部屋に行ってみることにしたのだ。


まあ、自分が所属している委員会なので、行ってみるも何も、ただ活動をしに来たとしか思われないだろうが。


「美樹さん。何か問題でもありましたか?」


「あ、いえ、別に……」


伏見寛治ふしみかんじ。彼は、三年生の風紀委員長である。容姿にも恵まれているほか、スポーツも得意で、学力も定期テストで毎回一位をとるほどに高いらしい。


そして、影での女子人気が高い。



この人ならば、あの女神も彼氏として認定をしてくれるだろう。まあ、唯一の問題といえば、この人がボクの彼氏になってくれるかどうかという話だが。


「寛治先輩。ボクと、付き合ってくれませんか?」


「風紀委員長が不純異性交遊をするわけないだろう。よく考えてものを喋るんだな」


くっ、当たって砕けろ精神でいったが、やはりダメだったらしい。


いや、でも断る理由が風紀委員長だから、というものだから、ボク自体を嫌っているわけではないのだろう。ならば、まだチャンスは潰えていない。


「寛治先輩。ボク、ずっと前から先輩のことが好きで……」


そう思い、言葉を続けたボクを嘲笑うかのように、またもそれは現れた。


突如として、背中に激痛が走る。息もできないようなその痛みに、パタリと正面から倒れて、ボクは死んだ。






⭐︎⭐︎⭐︎





告白をした瞬間に死んだ。つまりは、風紀委員長の彼でもあの女神には認められないらしい。


失敗した瞬間に死んだとも言えるから、失敗したら死ぬという可能性もあるが。


とにもかくにも、翌日今日、ボクは生徒会室にいた。ボクはこれでも生徒会の書記なのだ。


なので、こちらも風紀委員同様、活動に来たで押し通せるだろう。


「会長、ちょっと話いいですか?」


「うん、どうかした?美樹さん」


橋本学はしもとまなぶ。この学校の生徒会長であり、スポーツも得意、勉学も得意な人である。しかも、この人の親は橋本財閥としてかなり有名なお金持ちなのだ。


もちろん、女子人気はバカ高い。なんならこの学校の中で一番高い。めっちゃモテてる人である。しかも、この人彼女持ちである。つまり、勝機はない。


でも、風紀委員長でも無理なら彼ぐらいしか思いつかなかったのだ。仕方がない。まあ、やってみるしかないだろう。


「会長、実はずっと前から好きでした。付き合ってください」


「ん?美樹さんも変な冗談言うんだね。驚きだよ」


こちらに顔も向けずにそう言う会長。つまりは、軽くあしらわれて振られたと言うことだろう。


……。いや、待てよ。ボクはまだ死んでない。つまり、この人はあの女神に彼氏として認定されたと言うことか?


じゃあ、じゃあこの人を彼氏にすれば、ボクは明日に行ける?


「まあ、本気だって言うなら着いてきて」


「は、はい」


どう口説こうかと思案していたら、あちらから場所を変えることを提案された。


まさか、説教か?でも、ちょうどいい。密室の方が言いくるめやすい。


ガチャリ、と生徒会準備室に入る会長の後をついていく。部屋の中は電気もついておらず、暗かった。


「会長、ボク、さっきの言葉は嘘とかじゃなくて、本当のことです!ボクのことを彼女にしてください!!」



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