これ、食べなさいよ。

 おばあちゃんが亡くなってから、じいちゃんが生き生きしていた。(そんな風に見えただけかもしれないけど~。)お酒の量とか怒られなくなったからかもしれない。


 そして父もおばあちゃんのことで反省したのか、じいちゃんに優しい。美味しいものや珍しいつまみを買ってきては、じいちゃんにプレゼントしてた。父はお酒が飲めないくせに、じいちゃんに美味しいお酒を買ってきたりしてたから。


 私のお酒好きは、じいちゃんの影響なのかもしれない。隔世遺伝かくせいいでんってやつだなきっと。


 じいちゃんは、若いころ一日一升瓶の酒を平気で飲んでいたんですって!そして酔っぱらって電車で乗り過ごして…遠くまで行っちゃって帰ってこれない時もあったらしい。よくおばあちゃんが言ってた。だからお酒の量についてじいちゃんは、文句(?)を言われていたのだろう。


 私はおばあちゃんが亡くなってから、おばあちゃんのお墓参りに行ったことがなかった。高校受験だったってこともあるし、納骨・3回忌などに出席していたから、それでいいんだ。と思っていたのだ。だからお線香もあげてない。これもお母さんにまかせっきりだった。


 そんなある日、私は夢を見た。


* * *


「ただいま~。」


 私は学校から家に帰ってくる。そして母に顔を会わせることなく階段を上り自分の部屋へ。


 あれ?自分の部屋のドアが開いてる。お母さんがまた部屋に入ったのか!?なんて思って最後の階段を上がりきると、私のベッドが見えた。


 そこに、いないはずのおばあちゃんが…、私のベッドに横になってた。


「お、おばあちゃん。どうしてそこにいるの?」


 私の心臓はドキドキしていた。亡くなったことを認識していたから、ここにいるはずはないって知っていたから。


 どんな服を着ていたかなんて覚えてない。でも足はしっかり存在していた。


 おばあちゃんはゆっくりとベッドから身体を起こし、私のところに一歩、また一歩近づいてくる。私はお墓参りにもお線香もあげてないことを思い出し、怒られる!ってドキドキしていた。


かいり、これ食べなさいよ。」


 おばあちゃんが両手で私に差し出したもの。それは…。それは栗饅頭。結構りっぱな栗饅頭。栗にそっくりな栗饅頭。


「あ、ありがとう。でも私…、栗苦手なんだけど。」


 私は声にならない声を発していた。


* * *


 ここで目が覚めた。


 いくら家が別々だったとしても、同じ敷地内にいるのに一度もお線香をあげてない。お墓参りもしていない。よくよく考えたらなんて酷い孫だ。おばあちゃんはきっと怒ってる。そう思った。


 その日、お線香だけでもあげに行こうと決心した私は、一人では到底怖いので、親友の浅子あさこを誘ってじいちゃん家で遊ぶことにした。


 もちろん浅子あさこに夢のことを話して。


かいり、それやばいよ。絶対怒ってるって。しゃーない。一緒に行ってあげよう。」


 私は浅子あさこの作る漫画のアシスタントみたいなことをしていたから、二人でじいちゃん家で締め切り前の追い込みをすることにしたのだ。


「じいちゃん!この部屋借りるね~。」

「おじゃまします~。」

「おぉ、かいりか。ゆっくりしていくといい。」


 じいちゃんは自分の部屋で相撲を観てた。


浅子あさこ、お線香先にあげたいんだけどいいかな。」

「いいよ~。私もあげさせてもらうね。」


 二人してお線香をあげて、お祈りをする。


―あーちゃん。ごめんね。ずっとお線香もあげないで…。


 目をあけると、そこにあった。


 夢でみた時と同じ栗饅頭があったのだ。それだけじゃない。じいちゃんが障子をあけて部屋に入ってきてこう言ったの。


かいり、これ食べなさいよ。」


 手には、お仏壇にそえられたものと同じ栗饅頭を1個持ってた。私は何も言えなかった。あ~やっぱり…おばあちゃんはお線香をあげて欲しかったんだ。怒ってるんだって…。実感した。


かいり、大丈夫?」

「う、うん。」

「大丈夫だよ。私おばあさんにお願いしたから。もう出てこないであげてくださいって。」


 それからおばあちゃんの夢は見なくなった。じいちゃんが亡くなる前も、何か知らせにくるのかな~?なんて思ってたけど。


この2つの夢、本当に忘れられない。私の中にある罪悪感が見せたものなのか…それとも…?。


END


*次回はもう少し子どものころの、鮮明に覚えている夢のお話。身体が弱かった私が熱にうなされる度に見ていた夢。続きはNext storyで☆

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