第5話 それぞれの・・・

<奈央>

 まだ盗難が発覚する前、真人、奈央はガラスペン工房にいた。


 真人が高級ガラスペン入りの木箱を持ってきた木箱とすり替える瞬間を奈央は見ていた。すぐに奈央はお店の人に伝えようとしたが真人が高級ボールペンはすり替え用木箱に入れ替えて箱だけを持って帰りたかったように見え、不思議に思い後をつけることにした。真人はガラスペン入りの木箱を持ったまま商店街に向かったため奈央は追いかけた。


 商店街で真人はいろんな人にぶつかりながら走っていき、その際に足元の丸い鳥を蹴とばしていたのが見えた。鳥が奈央の目の前に着地したため、奈央は除けることも出来ずに蹴とばすこととなった。ブッコローだった。


 真人を見失ったため追いかけるのは諦めてブッコローと過ごすことにした。すると、真人が通るのが目に入った。焦ってブッコローにカラシをかけてしまった。

早く拭かなきゃ、また見失う!


「???」


 メガネに指をかけているときに真人が逃げない。いや、時間が止まっている!

何度かメガネの枠に指をかけたりして試すと、やっぱり、指がメガネの枠内にかかっているときだけ時間が止まっている。この不思議な現象を利用してみようと思った。


ブッコローに賭けてみることにした。


 ブッコローのメガネの枠に左手の指をかけ、右腕でR.B.ブッコローを抱えて真人の方に走り出した。


 真人はガラスペンをもう持っていなかった。ちょっと考えて、もう一度真人が工房に行くように、真人の定期券を拝借し工房のショーケースの下に忍び込ませた。また、奈央の指についていたピンクカラシも真人のズボンこすりつけた。


 ブッコローには私と知り合ったことをちょっと忘れてもらうこととして、カフェ・トンボに置いてきた。時間が復活した後にすぐに見つかるかと思って隠れたが、ブッコローはすやすや寝ていたのが救いだった。担当さんが現れてブッコローを見つけてテーブルの反対の席についたため、奈央は工房に向かった。


工房に着くと真人も着いたところだった。

 

<真人>

 事件の数日前、真人は工芸品の輸入の仕事をしている。真人の耳に毒性がある木が輸入された情報が入った。触れ続けると死ぬ恐れがある木が使用されている工芸品が日本に入ってきたとのこと。どうやらガラスペンの木箱の内側に使われているらしい。そういうことがあると、いつもは出入りの業者の前に現物をつき出し、


「困ります!」


と水際で止めて変なものが入ってこないように抑止するのだが、この木箱はすでに店舗に行ってしまっていた。こんなルートで商品が日本に流通していることが知られたら次々に入ってきてしまう。そう感じて当該品より高級な木箱を用意し、すり替えることとした。箱のすり替えは無事に完了したが、ガラスペンを戻す際に視線を感じて、とりあえず工房をでることとした。つけられている気もし、商店街に向かい、近くのお店に仮置きすることとなった。


 途中でいろいろぶつかり、丸い鳥を蹴ってしまい足が痛む。ブッコローだった。

箱が人手に渡ることを防いだことでほっとして落ち着くと、定期券がなくなっていることに気がついた。


「しまった!、すり替えのときに落としたか?」


工房に戻ることになった。


<ブッコローの帰り道>

 工房の取材を終え、ブッコローは今日あったことを思い出していた。夢で見た商店街に行き、店頭でのピンクカラシ始めましたとの表示を見てデジャブを感じたこと、工房であった奈央さんには夢で会ったこと、予知夢があるのかとも思ったが冴えわたる能力によるものと考え直し、担当さんには自慢になってしまうため、今は言うことを控えた。後で言うことにする。


 「早く解決しましたね。私、このガラスペン買って帰ります。」


 何も知らない担当さんはマイペースだ。取材も早く済んだため、夕方滝でサムネをとることを担当さんに提案され、滝に向かうこととなった。


 「冷たい、冷たい。こんなサムネ、誰がみたい??」


 文句が止まらない。ハネをバタバタさせていると、はねの下にピンク色のものがついている。


あれ、カラシついてる・・・

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R.B.ブッコロー、乗り気ではないが取材に行く!≪ガラスペン盗難事件≫  ~R.B.ブッコローが知らない世界~ 難波とまと @NAMBA_TMT

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