第4話 探偵、ブッコロー

 無くなったガラスペンは装飾をあしらった木箱に入っており、木箱ごと無くなっていた。同じ場所に無くなった木箱と同じような空箱が置かれており、盗まれたことが一見気づきにくいようにされていた。お客さんも多く、監視カメラでもいつ箱が入れ替わったのかはわからなかったようだ。


 盗難であることを警察に連絡して待っている間に、取材を止めてしまったことを申し訳ないと思ったのか、盗難の状況を少し教えてくれた。


「計画的ですね」


ブッコローはボソッと口にした。

「そうですね。何とか早く解決したいところです。いつまでも外のお客さんを待たせることも避けたいですし・・」


 盗難が分かった時に工房内にいた方は工房内に残ってもらっている。そして、工房は閉めている状態のため、今日、どうしても購入したくて来店したくて外で待っている人がいる状態となっており、工房の責任者は外のお客さんのことも気になっており、購入する商品が分かっている方には窓越しに対応を試みている。


 警察が到着し、残っているお客さんの聴き取りが始まり、聴き取りを終えた順に工房から出ていく人が増えるとともに残っている人数が少なくなってきている。


ブッコローは入口付近で全体を眺めていると、奈央さんっぽい人はまだ残っており、

目があった。そして、ショーケースの下を目配せされたように見えた。


「あっ、定期券」


ブッコローはショーケースの下に定期券が落ちているのを見つけた。すると、


「それ、私の!よかった~、探していたんです。」

ちょうど聴き取りを終えた男性が声をかけてきた。


「あっ、見つかってよかったです。人が少なったことが幸いですね。」

ブッコローは応じているが、何か気になることがあった。男性の足元にいるのだが、男性のズボンからソースの匂いがしている。ソースだけじゃないかもしれない。


「商店街・・・」


ぼそっと声に出た。その声を聞いて警察官の一人が声をかけてきた。


「この近くの商店街のことですか?。いいですよね、私も良くいきます。」

警察官の和やかな会話に男性も

「行ったことがないので、今度行ってみます。」

ブッコローは男性のズボンの汚れ、匂いがずっと気になっている。複数の種類、そんなに付くか?


「今から行きませんか?」


ブッコローが男性に提案すると警察官の方も、

「私、商店街の向こうの署からきていて一度戻るため一緒に行きますか」

なかなかフレンドリーだ。


「私も行っていいですか?」

奈央さんに似た人も声をかけてきた(似た人・・もう奈央でいいや。以下、奈央)。 


 このメンバーで商店街まで移動した。担当さんに出かけることを告げると、取材の打合せもあり現場に残ると言っていた。しかし、顔色からはガラスペンに囲まれた場所を少しでも離れたくないだけのようにも思えた。商店街までの道中で男性の名前が真人と教えてもらった。


「はじめてなんですよね。もっと、キョロキョロするもんかと。」


ズボンの汚れに加えてリアクションも気になって声をかけた。お店を見るような様子もなく、初めてとは思えない感じであった。あと、何度か同じ方向を見ていることがあったことをブッコローの幅広く見える目は見逃さなかった。 


「あっ、そうなんですね。」

歯切れが悪い。というより上の空で聞いていない感じがする。


「あそこ、行きたいな!」

ブッコローが真人が向ける目線のほうを指すと、


「いや、あそこは・・」

真人が嫌がる。


「行きましょう!!」

奈央が乗ってきた。奈央を先頭についていく感じとなり、輸入菓子店の前についた。


真人の視線はわかりやすく店内の棚の上の方を気にしている。


「あそこのやつ、取ってほしい。」

をブッコローは奈央に真人が見ていた先のお菓子を取ってもらうようにお願いしてみた。


「あっ、なんか箱がある。」

箱をとってみると、ガラスペン入りの装飾された木箱がであった。


「これ、盗難された木箱じゃないですか?、ちょっと預かってもいいですか?」

と同行の警察官が預かることとなった。


「この場所、初めてじゃないですよね」

ブッコローは真人に聞いた。


「ズボンのソース、この商店街で他の人とぶつかったときにソースがこぼれてついたんじゃないですか?」

みんなが真人のズボンを見る。


「いや、このソースはここでついたものじゃなく、家で付いてしまって。。。」

「カラシの匂いもしますよ、どんな状況だったんですか?カラシって粉ですか?」

ブッコローはさらに聞いてみる。


「調味料を整理して廃棄しようとしていて、カラシも普通のチューブにはいっている

やつですよ、黄色の・・」

と真人が応えるが、最後まで話す前に


「ここに付いているのはピンク色ですよ。さっき、お店の前に今日から使われている

って書いていましたよ。今日来ないと付きにくいんじゃないですか。」


とブッコローはたたみかけた。


「観念します。私が盗りました。」

真人はガラスペンの木箱に視線を向けながら肩を落とした。ただ、ブッコローには何か満足しているような顔色にも見えた。


工房への帰り道、ブッコローは不思議に思っていた。


この商店街の雰囲気、真人がズボンにこぼれたソースが付くこと、カラシのこと、なぜか夢で見た感じとよく似ている。予知夢が芽生えたのか・・・

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