松村君、と
きもい、キモすぎる。死ねば良いのに。いいや、私が殺してやりたい。
そう思えるぐらいには委員長への憎しみが膨らんでいた。
でも殺すとかは私が後々不利になるしさ、お母さんに迷惑かけたくない。
この学校を楽しいと思っていた頃の自分が信じられない。こんな癖の強くてやばいやつの集まりの中で私は暮らしてたとか。
あーもう…ここまできたら徹底的に委員長に復讐してやろうっていう感情が!
松村君に言ったみたいに、お母さんや友達に話してみよう。
私が被害者で、あいつが加害者なことには間違いないんだから。一応調べてみたけど、警察っていうのはこういうストーカーとか予測できない、何か傷つけられてもいないことに対応してくれないことが多い。
というか難しいらしい。そら、爪痕とか、精神的にきてるものはあるけどさ。なら、自分でやってやろうってね。ははは。
「お母さんー!」
私は階段を降り、リビングにいる母親の元へ行った。
そして今日の事について話す。結果としては成功だ。
お母さんは私の話を真摯に聞いてくれて、学校に連絡してくれた。先生は委員長には要注意しておくと言ったそう。また、私や松村君と話がしたいと付け足す様にして言った。
その時、脱がされた時の反抗したら付けられた傷と状況を話そう。
全く、私はもっと先生に心配される権利があると思うんだけど?あの先生は松村君に確か脅されたんだよね!ふふふ。またあん時みたいにしなしなに枯れた花みたいに弱くしてやってほしい。
部屋に戻ろうとすると、母親が私に大丈夫かと聞いてきた。
私はとりあえずうん、とだけ返し、駆け足でベッドに向かいダイブする。
…駄目だ、やっぱ大丈夫じゃないよ…涙が出そう。布団の中に潜り込み、身体をぎゅうと丸める。
復讐とか強気な事を考えてないと、手の震えが止まらないの。委員長の顔が私の脳裏から離れない。
もうこのまま寝ちゃおっかな…。
その時電話が鳴った。
「ひっ、」
ただの着信音、それは分かってる。だけど、まるで雷が目の前で落ちたような衝撃で体が跳ね上がる。
スマホまで…遠いなあ、取らなきゃいけないのはわかるけど。
布団ごと、私は移動し、スマホを見る。
ああ、松村君。
「もし、もし」
「ああやっと繋がった。もしもし、蜂山さん?」
「どうしたの。珍しいねこんな時間に、そっちから」
「…心配で気になってな」
「ふうん。そう、なんだ!心配ありがとね、」
いつも通り話せているか、分かんない。
声震えてたりしないかな。
「あの蜂山さん…土曜日行けそうか」
「え?」
「ほら水族館、約束しただろ」
「あっ行け…る…ょ」
段々声が小さくなっているのを感じる。行けるというより行きたい。行けるかと言われると行けない。
変な感情が、ずっとぐるぐると私の脳でまわってる。
「やめとくか」
3秒ほど、静かな時間が続いた。気を使わせてしまった。でも、それは、やだ。
「ごめん、行きたいのは凄く行きたいの!でも今人が怖くって」
「俺も、蜂山さんが行けるなら行きたいが。でも当たり前だよな、何か俺に出来る事があるならなんでもする」
なんでもする…。して欲しいことはいっぱいある。教えて欲しいこともいっぱいある。
でも真っ先に頭に浮かんだのは。
「ー手、繋いでて欲しい」
うああっ、言っちゃった!みみがきゅうと熱くなるのを感じる。
「ぇ、土曜日…に?」
「うん土曜日、ずっと」
「ぁー…分かった」
遂に向かえた土曜日。私に出来る最大のお洒落をしていった。
「蜂山さん」
「あ、松村くん!」
ジーンズに白いTシャツをインし、上から淡い色の少し透けた上着をきる松村君。
なんとゆーか普通に格好良い。
「…ん」
「…うん」
松村君が、手を私に出す。
…うわあ、何これ。すっごいなんか恥ずいんですけど。
冤罪をかけられた隣の男子、強すぎ。 @txt-aoi
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