もうすぐ side? 2

段々、痛みが引いてきて家に帰れるようになった。まあ、もちろん帰っても、心配される訳もなくお母さんはスマホをずっと触っている。こんな人が親なんて屈辱すぎるね。早く、なくなってほしいなぁ。


私の顔は相変わらず、ぱんぱんだけど、それでも松村君に会えたのが嬉しいの。初めて、私に優しくしてくれた人。


次の日の学校では、皆が私の顔を見て笑ってた。

気味悪い、けれど、どこか嬉しそうな笑顔。いろんな笑顔が私を取り囲み、嘲笑う声がどんどん大きくなってくる。やがて私は居心地が悪くなっちゃって、保健室に行く。


「…せんせ、あの、体調が…悪いんです」


先生は私の熱を測り、何も異常がないことを確認すると、溜息を吐いた。どうしてため息をするの?熱がないと、ダメなの?私はこんなに顔がボロボロなのに。


「どうしますか、休みますか帰りますか」


適当に、気だるそうに先生は言う。


「ベットで休ませて……ください、」


私は先生の目が怖くなって下を向く。先生は「どうぞ、」とベットのカーテンを開けた。入れってこと?ほんとに嫌な先生だね。


「___え?おんなじ学校だったの?!」


私がベットに入り一息つくと、隣から男の子の声が聞こえる。


「……ぇぇっと、…松村君?」


「うん!声でわかった。あの時の子でしょ?」


「…そう、だよ」


「やっぱり〜!体調大丈夫?」


「しんど…い、かな」


「そっか、お大事に。俺もしんどい、頭が痛い」


「そりゃ…たい、へん?」


「大変」


あはは、と松村君は軽快に笑う。やっぱり彼は明るいよ。見習えないぐらい。


_____この日をきっかけに私たちは仲が良くなった。


いつも、挨拶をしたら返してくれる様になったり、笑顔をしてくれる様になった。でも、別に遊ぶわけでもないし、お話するわけでもないの。 


楽しかったね。



それから一週間がたったある日、私は松村にいつも通り挨拶をした。


「松村君、……あの、あの、おはよ」


「…」



彼はなんと言う事か、私をちらりとみて、何もなかった様な顔して去っていた。


え、なんでなの?私の事嫌いになっちゃった?意味分かんないいみわかんないイミワカンナイ。


神様さえも、私を嫌うの。


ずっとその日は松村君のことしか考えられなくなった。次の日も、またその次の日も、そのまた次の日も挨拶をしたけど、やっとのことで帰ってきたのは「ああ」とだけだった。もう、もうもうもう…!!!先生に言っちゃうよ?!女の子にこんな適当なんて意味わかんない!!


…一ヶ月後、松村君は転校する事になったよ。 


どうやら、お母さんが亡くなったらしい。だから、返事しなかったのかな?

でもさ、でも、お母さんなんかより私を優先してよ。ちゃんと神様らしく私に優しくしてよ。


松村君がいなくなって、学校の楽しみがなくなりただ無心に学校に行く。

普通にいじめられてるし、先生も私のいじめを知らんぷり。早く、卒業したい。アリアちゃんも居なくなれ。私にとってうざいのは全部、いらない。




私は中学生もこの街で過ごした。…また、松村君に会いたい。


この願いが松村君に届いたのか、母親が亡くなった。私の母はシングルマザーだったから、親戚の叔父さんしか頼れる人は居ない。そして叔父さんの住む地域は松村君と一緒。




…ああ、嬉しい。母親が死んだのも、住む地域もお揃いね。


___松村君と同じ町に来てから、私は中学を卒業するまで、ずっと散歩する。もしかしたら、会うかもしれないもん。会ったら尾行しようかな。


高校は、何処に行くのかな?



…散歩し始めてから3ヶ月、松村君を見つける事が出来た。松村君、と声をかけようとしたところ松村君の後ろには一人の女の子がこそこそと着いてきている事に気が付いた。


はあ?なにあの子。彼女か何か?うざいうざい!!しかもおんなじ中学の子じゃんか。


その女の子が同じ中学のマリちゃん、ということがラッキーだった。私は、男とホテルに向かう写真とそのマリちゃんの顔を合成させて、クラスメートのLINEに送っていった。その女の子は不登校になったの。


流石に上手くいきすぎてかわいそうだなぁ、と思ってマリちゃん家に訪れる。



「大、丈夫?……まりちゃん、あんなの嘘だって私は信じてるよ」



家から出てくるマリちゃんにこの一言かけてあげるだけで彼女は泣き崩れた。背中をぽんぽんと叩いてやると「私は本当にやってないのにぃ」とグスグスと泣き出した。うるさいなぁ、そんなのしってるよ?


私はマリちゃんを黙らせる為に、恋愛の話を聞き出した。


「私ね、他校の男子が好きだったのよ。でも、その子とは全く違う高校だから告白したくって…でも無理だったぁ」


「その…子ってさ、…何処の、高校にい、行くの?」


「○×高校。でも、なんで」


「私がこの子にマリちゃんの気持ち、伝えてあげる」


「優しいね、」


まあ、言うわけないけど。


優しい?ありがとう。私って、演技が上手いのが取り柄なの。もしかしたら人を操るのも、騙すのも上手かも。



____さて、松村君と私は同じ高校に無事行ける事になった。

やった、やった。やっと会える。


でも……ただ会うだけじゃ松村君にきっと無視される。だから、マリちゃんと同じ方法で松村を一人しよう。そして慰める。人を利用するだけして、うまいことやる。










ねえ、松村君私、頑張ったんだよ。














やっと話せそう。




















もうすぐ、行くね。

















 

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