もうすぐ side?
昔小学生の頃、私は虐められていた。
たぶん理由は…静かすぎるし、喋り方が鬱陶しいから、とかそんなんだった気がした。でも女子だからか暴力なんてのは滅多に無く、ほとんど無視や暴言など影で行われる虐め。クラスの女の子はみーんな、私の事が嫌いだったと思う。…けど今はもう、辛かったなんて思ってないの。
あの子に助けてもらってからね。
クラスのリーダーの子、アリアって子が居たんだけど、その子ももちろん私の事が嫌い。だから、消えろブスみたいなことを沢山言われて……ある日、カッとなっちゃったの。
「なんで………そんな事言うの、あ、あ貴女だってぶ不細工な癖に!」
それがあの子の地雷だったんだろーね。私がそう言い放った時、アリアは「はあ?!」と言ってすぐ、その場で泣き崩れた。当時の私はどうして泣いてるのか理解が出来なかった。だってさだって最初に私を傷つけたのはあの子、本当なら泣くべきは私なのに。どうして皆、私をそんな怒りの目で見るの?どうして、あの子をなぐさめるの?
意味分かんない。
〜
その日下校中、おい、と少年が青年かどちらも混ざっている丁度声変わりの時期の男から声をかけられた。私はその人の事見たことがなかった。相手も背後の女の子に「おい、こいつであってるか」なんて聞き、その子はうなづいた。
「え、ア……リアち…」
「ちょっとこい」
私の言葉を遮る様、男は言った。私が…小学3年生だから、身長差的に見たら彼は中1ぐらい、かな?すごく大きかったの。見た目も怖かった。
「……なにするの!離して…やだ!!」
腕を掴まれて、引きずられた。私は頑張ってもがいたけど、意味なんてない、だって彼はすごく力が強いもん。
「うるさい」
鬱陶しい、彼の顔からそんな気持ちが滲み出ていた。アリアちゃんは、泣きじゃくってる私を見て、ニヤニヤとしていた。その笑顔は口がおーきく歪んで、まるで人間じゃないみたいだった。私は男よりもアリアちゃんの顔が怖くて、涙と鼻水が止まらない。…なんで、私がこんな目に、遭わなきゃいけないの。
最終的に引きずられて、森に着いた。私の町は、住んでる人が少ない田舎だから誰も居ない。
「うっ…!」
木に、私の身体は投げつけられる。背中を打ってピキ、と痛い音が鳴った。じんじん、と骨に響くこの気持ち悪さは言葉で表現できないほど。
「覚悟しとけよ〜?」
ひひ、と男が歪な笑みを浮かべた。アリアちゃんとおんなじ歪み方。きっと彼らは兄弟なんだろう。私がこんなに可哀想な目に遭っているのに、笑うなんて。
「っぅう!」
私が彼らを憐れみの目で見ていると、髪を上に引っ張られて、頬を拳で殴られる。
拳は私の手の三倍ぐらい大きくて、痛みも、今までにない痛さ。
「はは、」
楽しそうに、左右と順番に男は顔を殴る。
ああ、私の取り柄は顔だけなのに、歪んじゃう。アリアちゃんみたいな顔になっちゃいそうなほど、酷く殴られる。
あ、次食らったら、やばいかも。
「ーとうっ」
上から、声が聞こえる。
その瞬間、黒髪の少年が男の顔面を脚で蹴る様におちてきた。
「なん、ぐぅっ?!」
木から、落ちてきたのかな?でも、なんでなの?
男は相当強く蹴られたのか、後方に退けた。髪も手放し、私は、木にもたれかかる様になった。
「てめっ、」
男は少年に向かって走り出す。鼻からは血が出ていて、顔は非残なものになってた。
……ざまあみろ、私とお揃いの顔になっちゃって。やっぱり、神様は私の事が好きなんだ。
私はぼんやりする目で男と少年と、不安そうな顔して草に隠れているアリアちゃんを見ていた。
男は少年を殴るために拳を掲げて走った、が、その拳が少年に触れるギリギリの所で、少年は屈む。もちろん当たる、そう思っていた男はバランスを崩して、今すぐにでも転けそうな体制となった。
ギラリ、彼の目が光る。
そこで、少年は男の腹に向かって一発入れた。ドシ!と重い音が彼らから聞こえる。男は「がぁっ、」と苦しそうな声を出した。
「あはは」と私は笑ったよ。だって、お疲れすぎる、ダサすぎる。
「何わらってやが、る……」
腹の底から憎そうな声を出す。笑うのは当たり前の事。だって面白くって、仕方ないの。
男がぐるりと私の方を向く。やばい、煽りすぎたかも……。
少年に背を向けた男は、隙まみれ。
少年は片足で男を蹴飛ばした。流石に、アリアちゃんが草から出てきてやめてよ!!と大きな声で兄を庇う様にした。
「どうして?俺、見たよ。その男がこの子、殴ってるとこ」
「で、でもぉ、おにぃボロボロ!可哀想とは思わないの?!」
「うーん、思えない!…心配ならおにぃちゃん家まで連れてってあげたら?」
「…ぢっ、じゃあ今から運ぶから今手出さないでよね…」
「いいよ」
少年は微笑んで、そして、私を見た。
「大丈夫?」
少年が私に手を差し伸べる。
夕陽と重なり、彼が光っていると錯覚するほど、神々しかった。…神様?
「…いたいよ」
「お家どこ?俺が連れてってあげる」
「ううん、大丈夫。自分でかえる」
「嘘でしょ」
「本当に!!ほっといて」
私は彼の手を振り払う。今思えば、なんであんな事したんだろうなぁ。
あっ、もしかして……照れてたのかも〜。
「そう?」
少年は申し訳なさそうな顔をして、その場を去ろうとした。
「ねぇ、名前はなんてゆうの」
「俺?俺は___松村!君は?」
「言わない」
「なんで、」
松村君は、ふは、と笑って去ってゆく。身長は私と変わらないけど、背中はとても大きく見えた。
きっと彼は神様か、ヒーローかどっちかだとおもった。
…痛い、
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