あの日以降の私たち、気まずい


あの弁当を食べた後以降、松村君との間に距離を感じるようになった。

いやもしかしたら、私が避けているかもしれないけど。警察に被害届けとクッキーを渡した。すると、クッキーに本当に仕掛けられているか、何が入っているのか、など調べてもらえる事になった。本当に良かった。







学校の終わりの挨拶をした後、「蜂山さん」と声をかけられる。その時、「はい!!」と思ったよりも大きい声が出た。出すつもりもなければ、でると思っていなかった予想外の返事。以前の私ならこんな事しなかっただろう、と考えると心臓の音がどくどくと私の中で響く。



「松村く〜ん…、えっと、どうかした?」



少しもじもじしながら、私は話す。だって、だって、気まずいじゃん!



「すまだ水族館いつ行くか、決めよう」


「そうだね!!」


「…?、いや、今週の土曜こそ空いてるか?」


「空いてる!!」



前の先週の土曜日は、藤田から襲撃受けちゃったからね…。


松村君は一瞬私のこの声の大きさに困惑したのか、頭の上にはてなが見えていた。あ〜ごめん!!ほんとごめん。私も本当はちっさい声で落ち着いて喋りたいんだけど、それがなぜかできない!!




「じゃあ、〇〇駅に集合して行こう。」


「おっけ〜、七時ぐらい集合でいい?」


「ああ、」



段々心臓が落ち着いて、短文だけで、じゃなく丁寧に話せるようになった!!



いつの間にかクラスの皆は帰っていて、教室には私達以外誰も居ない状況になっていた。水族館について、話し終えると何も話題が無くなり、シーン、と教室が静かになった。な、なにか場を繋げなきゃと思い、取り敢えず質問する事にした。



「…所で、松村君ってさあんま友達と遊んだりしないの?」


「…」


しまった。聞き方を間違えた。これじゃ、ウンとイイエとも答えずらい。

ああ松村君もちょっと悲しい顔してる…ほんとにごめん!!




「その、前遊んだ時に思ったんだけどゲーセンとか行った事なさそうだなぁって」


こ、これも質問すぎる!!



「そうだな、ゲーセンに行ったのは君が初めてだ。カラオケも」



「…親とか、厳しいの」


真っ先に考えたのはこれだった。ゲーセンに行った事ない人は絶対行かせないタイプの親を持って事が多い気がする。


「厳しかった。」


どうして過去形なんだろ。 


「そっか…今は大丈夫なの?」





「多分、」



自信なさげに松村君が答えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る