1番怪しいの田中、と松村君が言う

私はトイレからでた後、電話をかけた。



ああ、きっと怒られてしまう。不安と共に、松村への怒りが高まる。

あいつが蜂山さんと水族館に行くなんて言ったのが悪いんだ。私の蜂山さんに手を出そうなどするのが、いけないんだ。あんな石ころみたいなやつ、蜂山さんはどこに惹かれているんだ。絶対に私の方が!!





怒りが限界まで膨らんだところで、ようやく、相手が電話に出る。







「…もしも〜し…」


「ごめんなさい。失敗してしまいました」


「失敗って、何が」


「だから殴るの、を失敗したと言ってるんです!」






失敗した事を声に出すのも恥ずかしく、怒ったように私は言う。




「ねぇ、なにそれ……。なんでお前怒ってるの…?…絶対失敗しちゃいけないやつじゃん」





私はいきなりの田中の冷たい声に、ひゅと息を飲む。

失言だった。多分、






「ごめんなさい、ですが」



「もー…いいよ。今度から委員長は何もしなくて良い。…私の言う事だけ聞いてて…じゃあね、」






ぷつり、と電話の切れる音が鳴る。まずい、信用を失ってしまった。

これじゃ、利用される道まっしぐらじゃないか。そんなのは嫌です。私は利用する側であって、藤田君や須月さんのようなマヌケな利用される側では無い





。…協力者という立場を保つには、そうだ田中さんが喜ぶ事をすれば良い!例えば、松村と個室にしたり、とかなんてしたら、喜ぶはず。








ーーーー








「昨日委員長に会ったんだが、委員長も田中に色々言われて居たらしい」




「え、ちょっとまってちょっと。昨日委員長に会ったっていつ?!」




この教室には委員長がいる為、二人でこそこそと話す。

昨日会ったって、私のでんわの後だったりしたら心配だ。現に彼は藤田に襲われて怪我までしたんだ。今回も私のせいで…なんてなったら申し訳なさすぎるんだけど!!





「……君と電話しているとき」



少し躊躇するように松村君は言う。

て、電話中?!てことは私凄くやばいタイミングで電話をかけてしまったんじゃ。絶対邪魔だったじゃん。しんみり、とした顔で私は言う。





「ごめんねぇ、松村君。私これから電話するのやめるよ……」


「…?そんなこと、しなくて良い。別に電話するのは悪い事じゃ無いだろ」


「そうだけど…邪魔じゃない?」






「邪魔じゃないし嫌でもない。藤田の件で俺はもう学習したからな。」





どよよん、とした私を慰めるように松村君は話す。

うう、慰めてもらうなんて…もっと申し訳ない。






「で、俺は田中が今1番怪しいと思うんだ」


「田中?委員長じゃなくて」


「___ああ、田中だ。」






私も松村君も真面目な顔をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る