きみがわるい side松村
「どいてくださ」
「お前らは本当襲うとか好きだよな」
うつ伏せで、倒れている彼の上に乗っかると、抵抗するようにもがいてくる。本当に、藤田も委員長も後ろから襲うというやり方が好きすぎるだろ。
__しかも、委員長の方は藤田よりタチが悪い。誰も居ない、車も通っていない道を入った瞬間に、後ろからパンチでは無くレンガで殴りかかってきた。非力でずる賢い彼だからこそ思いつく事なんだろう。
しかし非力なのは致命傷だ。俺がサッと避けた時に、委員長は何もない地面で躓き、そのままこけた。多分、レンガの重さで体のバランスを崩したのだろう。静谷とかこれを見れば笑ってしまいそうなほど、マヌケな転け方。委員長は無駄にプライドが高いため、自分がこけた事を受け入れられず、硬直していた。
とりあえず、このまま逃すのもアレかと思い抑える事にした。
蜂山ミチカから電話がかかってきた時は、委員長が声を出そうとしていたから、し、と口の前に人差し指をだした。まさか、これで本当に黙ってくれるとは思っていなかった。いや電話相手が蜂山さんだから、聞いたのかもしれない。
「さて、お前はなんで俺を襲おうとした?」
「言うわけないでしょう?まあ、あなたが退いてくだされば?いってあげても構いませんが?」
いちいち最後の語尾が半音上がるのが気持ち悪いな。
そんな煽るような事を言われて退くやつがいるか。
「退くわけないだろ?」
言うわけないに対し、退くわけない返事を返す。
すると、委員長は煽り返された恥ずかしさからか顔が真っ赤になる。そして体がプルプルと震えだした。
「は、早く離してください!!ッ、というか!こんな場所で私を押さえつけるなんて、警察に通報されても知りませんよ?!」
…こんなにも解放を必死に迫るとは、トイレにでも行きたいのだろうか。
しかし、
「その心配はないな。だってここ監視カメラが設置してあるから」
委員長的にはいい場所を選んだと、思っていたかもしれないがそれは間違いだな。この道は人通りも少ない事から事件が多く発生する。その為、市はここに監視カメラを設置した。もう、委員長はモロに映り込んでいるはずだ。俺をレンガで殴ろうとしたところが残ってあるなら、俺は正当防衛だ。
「そ、そんなわけ」
「ある。……じゃあ、観念して言うんだな。これはお前がやろうとした事なのか?それとも誰か指示したやつがいるのか?それを教えてくれたら解放してやるかもな」
「…くッ、分かった言いますよ!!」
ち、と舌打ちして委員長は苛立つように言った。あ、こいつ自分の立場わかってないな。
まあ言い。とりあえず、聞かなければならない。
「田中さんですよ田中さん、彼女に言われたんです!!」
あーもう!と、彼は焦りながら怒る。…田中。俺の今の候補は田中と委員長だ。
それが委員長も指図された側だとすると、真犯人は。
____田中か?
「なぜ。いや、彼女はお前にどんな事を言った」
「はぁ?そこまで答える義務は私にはありませーー」
「_言え」
俺は委員長の腹の下の部分をギリギリまで、グーの手で近づけた。後もうちょっとで膀胱部分に触れると言うギリギリに。こいつは明らかに我慢している。それはかなリ脅しに使える。
「そそれだけは、…!!!ぅ、彼女は!!あなたをもう一度入院させたいからとか言ってました!!」
委員長は圧と次にくるかもしれない恐怖に怯えたのか、目を閉じて言う。
もう一度、入院させたいなんて意味が分からない。蜂山ミチカと俺の距離をあけたいのか、はたまた、俺に何か恨みがあって本当に不登校にしたいとか。田中は俺と関わりなんてないはずだ。なぜ、ここまで俺や蜂山さんに執着するんだ。
気味が悪い。
「そうか」
俺はそう言って委員長から体をどかす。
こいつはなかなかに腹が立つから一発殴りたいぐらいだが、それをするのは今ではない。現在そんな事をしては罰金だ。今までにされた事を考えると、殴ってもいいような気がするがな。俺はとりあえず、彼を逃す事にした。
「ヒ、ヒィぃ!!」
ところどころ、よろめきながら委員長は走って逃げていく。しかも、内股のまま、だ。
その姿はやはり滑稽で、通りすがった小学生に笑われたりしていた。可哀想なやつだ。つい一ヶ月前まではあんなに元気でみんなに頼られる良い委員長だったのにな。
「しかし、田中……」
あいつは、一体なんなんだろう。
蜂山ミチカに報告をしなければいけないな。
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