クラスと私、ハズすぎる

「松村君おはよー!」



藤田に殴られた日から二ヶ月程たった頃、松村君が教室に帰ってきた。







その松村君がいなかった二ヶ月の間に色々あり、松村君の事は誰もが冤罪だと言う事も知っている。委員長や、田中、須月ちゃんは完全に悪役で、嫌われ者になり、孤立していた。須月ちゃんや委員長は友達が多く、人気者であったけれど、今は誰も彼らに話しかけようとしない。むしろ、コソコソと陰口を言われていた。


…クラスメートの子達も悪い子ではないんだけど、ちょっと極端すぎるよね。


私の方にはたくさんの子たちが謝りに来た。最初は少なかったけど、だんだん増えてきて先生も、話した事がない子も、学校にいるほとんどの子が謝りに来たかもしれない。許せない子も何人かいるけど、一人一人話をしっかり聞いて、頷いた。





須月ちゃんは、最近学校を休んでいる。

どうやら私が一日家庭の用事で学校を休んだ日から来なくなったようだ。んん、親友だったからか少し心配だ。二週間程前からdmも途切れ音沙汰がない状態である。…勇気を出して話し合う日は近いかもしれない。




今の田中は一人、机に顔をつけ寝ていた。

その様子は余計に周りから反感を買い、多分二人よりも嫌われてしまっていると思う。

けれど、可哀想とも何も思わない…だって二人が招いた事だからね。




委員長はクマがひどくなり、顔がこけてしまっている。

昔はかなりモテモテで女の子と付き合いたいやつNo.2だったのに。あ、1は静谷くんね。

今は完全にランキング外の顔つきだ。こりゃひどい!



居ないけど、藤田に関しては話題にだす事はタブーとされてるらしい。藤田、というと藤田にいじめられた被害者が怒ってくるらしい。藤田どんだけ虐めてたの…、ヒドい事言うけど、退学になって良かったかもしれないね。



「あ、蜂山さん!おはよ。ほら、松村君俺が言った通りに!」


「…蜂山さんおはよ。これ、ありがとう…た、助かったよ」



静谷君が松村君の席の前にたち、何やらにやにやした顔で私を見てくる。私がなになに、と困惑していると松村君は照れながらハンカチを手にだし、此方に向けた。そのハンカチは前に私が彼に貸したガーリーなやつだった。どうやら、松村君はイケメンな静谷君に色々仕込まれたらしい。静谷君の彼女らしき子もにやつき、「受け取り〜?」と言ってくる。全然ハンカチ受け取るだけだけどなんか恥ずかしい!!


なんか、前の教室に戻ったみたいで楽しいな。







「__松村君…ごめん、今は受け取れないの」






そうだ、私には受け取れない。

そう言った時、教室がざわついた。“もしかして彼氏がいるのか?“とか“あらま松村さんw“なんて聞こえてきた。でも、そうじゃないの、そうじゃなくて。



今受け取っちゃったら、水族館に行く口実無くなっちゃうじゃん…!!

す、水族館は絶対に行きたい!!



「な、なぜ…」


「松村君……」



松村君がポカン、とした顔で止まっていて、静谷君が肩に手置き、慰めるように言った。



「ち、違くて…ごめん松村君、水族館の時に返すって約束してくれたじゃん?…今受け取って水族館に行けなくなるのはヤダ、だから」



もじ、としながらそう弁解すると、教室から安堵の声が聞こえてきた。

緊張する〜!これで引かれちゃったりしないかな…?




「水族館、俺と行ってくれるのか?」


「いくに決まってる!……その時までハンカチ、置いといてくれる?」


「__ああ、勿論だ」




“ヒュー!!“と言う歓声があちこちから聞こえる。な、何これ結婚式みたいでまぁまぁ恥ずかしい!!私は恥ずかしさのあまりッッ〜と声にならない音を出して教室から飛び出した。


だって、だっていきなり学校きたらこんな空気なるとは思わないじゃん!

普通松村君に謝って不穏な空気になるかもとか心配してたのに〜!!


___



「静谷君、蜂山さん走って行ってしまったが、俺の駄目な所はなんだと思う」


「う〜ん、ドキドキさせすぎた所かな?」


「…なんだそれは」


静谷と俺は今朝話し合ってから、とても仲良くなった。

俺としては、静谷がモテる理由にすごく納得できた。彼は、親みやすすぎる。蜂山さんは知らないかもしれないが彼は入院中、会いにきて謝罪をしたり、もっと早く俺が駆けつけてあげれば…など、話してくれていた。彼は良いやつだ。俺も、学ばなければ。










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