元親友に逃げられる私、おう
教室から出てトイレに行くと須月ちゃんが廊下を歩いているのが見えた。遠くてあまり細かい所まで見えないけど、ふわふわだった髪はボサつき、目が赤くなっていた。ああ、やっぱり病んでしまっている、それが良く分かる姿だった。昔の元気さは全く感じられず想像した通りの姿になった須月ちゃん、心配だ。声をかけるべきだろうか。それともそっと、放っておくべきだろうか。
「あ…」
ぱち、と目が合う。その時の彼女の顔はすごく泣きそうだった。
話かけようとするとすぐ逸らされる。
「須月ちゃん、」
遠いから聞こえているか分からないけど、一言声をかける。しかし、「ごめん…!」そう言って須月ちゃんは走って階段まで戻るように行ってしまった。私は反射的に慌てて彼女を追いかける。追いかける意味なんてないはずなのに…何故か止めなきゃ、って感じがする。今の須月ちゃんは何をするか分からない、危険な顔をしているように見えた。
「来やんといて!!」
階段に響くほど大きな声で、彼女は叫ぶ。しかも耳がキーン、と耳なりを起こすほど高音で。
そんな声を出すほど、私の顔を見たくないの?私と会話をしたくないの?一
段一段丁寧に降りるのではなく、滑るように階段を降りていく。いっぽ間違えれば、足を踏み外して落ちてしまう危険な行為だが、そ彼女に追いつけるのならば良い。
「待って、ねぇ!待って」
私達のクラスは5階にあって階段は多い。須月ちゃんも残り一階という所で息切れを起こしていた。
そりゃそうだ、手ぶらの私とは違い、重い鞄を背負っているんだから。それでも須月ちゃんは待つことなく、スピードを落としながら階段を降りていく。しかし、やはり疲労か、段々距離が縮まってきた。
最初は一階分ほどあった間が今は四段分程になっている。あともうちょっと、彼女が疲れるか私の足が早くなれば良いのに…!!
「ッ、なんで、来るんや、!」
はあ、はあと息切れを起こしながら遂に諦めたのかゆっくり階段を降りる須月。このスピードならすぐ追い付きそう!と思っていたのに足が思うように動かない。私も本気で走りすぎたのか筋肉が言う事を聞かず、早く降りれない。
「話、したいから!!」
「…ミチカごめん、うちちゃんと話なんて出来そうにないんや…!」
「ちゃんとじゃなくてもいいよ!」
そうこう話しているうちに、階段は降り終わり、廊下に来ていた。
もうすぐ行けば、昇降口がある。ここで彼女が履き替える時に話をしよう、ゆっくりは出来ないけど聴いてくれるはずだ。
「え、え!履き替えないの?!」
なんと言うことか、須月はそのままスルーして玄関まで走っていく。疲れていたはずなのに、今は走れる事に驚き。どれだけ話したくないの…。
私も気合いで走りだすが間に合わなかった。もう、校門の外に出てしまっていた。須月ちゃんは運動神経が良すぎるから、門なんて越えれるけど私には無理だ。飛躍力と腕力が足りなさすぎる。
_悔しい、せっかく真面目に話し合えるチャンスだと思ったのに。
「ミチカ…ほんまごめんな」
そう言って彼女は去る。謝るぐらいならこっち来い、と怒ってしまいたかった。
__私はトボトボ教室へ戻る。はぁ、階段ありすぎて太ももが痛い。
ただ須月ちゃんを追い出して疲れただけだった。…失敗しちゃったな。
「ただいま…」
明るくワイワイした教室で浮くほど、しょんぼりしてしまった。
「どうしたんだ」
頬杖をつきながら、顔を傾け松村君が言う。
何そのポーズ可愛い!!じゃなくて、心配させちゃった。
「あのね、聞いてくれる?」
今までの私だったら、迷惑になりたくないから〜とか言って言わなかったかもしれない。けど、今は頼りたい。松村君に聞いてもらいたい。
「ああ」
「さっき須月ちゃんに会ったの、でね話そって言ったら逃げられちゃって、話せないって言われちゃった。私は話し合いたんだけど…タイミングとかどうしたら良いのかなって」
感情が前に出てしまって上手く説明したいのに出来ない。言いたい事は言えてる気がするけど、伝わるだろうか。
「__タイミングを待つんじゃなくて作れば良いんじゃないか?須月の家に凸れば嫌でもあいつは逃げられないだろうし」
確かに…。家なら引きこもられない限り、会う事はできるかもしれない。幸い須月ちゃんの家は知ってるし、行けるかも!
「そうだね…今日放課後あたり、あってくるよ!」
「ああ、頑張れよ」
「…今日はついてきてくんないの?」
じ、と甘える感じで言ってみたけど苦笑で返された。
まだ早かったか…、
「俺が行っても、須月は出てこないと思うぞ」
「んふ、確かにそーだね。ありがと松村君、頑張ってみる!」
松村君にも応援されちゃったし、勇気出して行ってこよう!
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