怯える藤田、あの日を話す

「松村どうかしたのか…??」



私があわあわしていると、コンビニから出てきた藤田に声をかけられる。



「なんか、吐きそうらしい!!」


「は?…おい、大丈夫…」



「いや吐き気なんてない、大丈夫だ」



松村君は抑えていた手を口から離し、ンン!と咳払いをする。

んー、大丈夫かな、本当ならめっちゃ心配してトイレに連れてってあげたいけど、松村君そういうの苦手タイプだろうしな。



「本当にいける?」




藤田は松村君から少し離れた所で立っていた。



「ああ、…委員長の事について教えてくれ」



息を整え、藤田に対し厳しい表情を向ける。そういえば委員長と田中、二人は何がしたいんだろう。ただ、その事だけが気になってしょうがない。



「…そこまで、詳しい話はしらないが、…お、お前を虐める前に委員長に呼び出されたんだ。須月と一緒にな…


_


「LINE二人とも見たでしょう?!あんなの許されないですよね!!蜂山さん、私に電話で色々教えてくれましたよ!泣きながらね!!」




委員長に呼び出された其処は、田中の家の前だった。

須月も俺も最初は夜中に呼び出すなよな、なんて怒っていたが委員長の話を聞いている内に腹が立ってきた。須月は、わなわなと震えていた。




「なんで、ミチカがそんなめに遭わないかんのや!」




確かに、松村が蜂山を虐める意味が分からない、普通松村はいじめられる側だろ。

田中は途中で家から出てきて、話に入ってきた。






「……ま、松村君、小学校の時一緒だったから知ってるけど…なんか一回女の子虐めて孤立させてさ、あとで謝って、依存させたりしてて…」







怯えながら、田中は言う。

その姿は少し、同情してしまった。それと同時に、松村はそこまでクズな野郎だったのか!!と驚きが隠せなかった。やっぱ、隠キャっぽいやつはどこか歪んでるなと思った。





「ミチカ、をその対象にしようとしてたってことか…?」


「…多分、そうだと思うの…」


「キモ過ぎますね」




委員長は鼻で笑う。俺も、松村にキレていたしその時は松村に対して嘲笑うように言っていたのかと思っていたが、今思うと簡単に釣れた俺たちに笑ったのかと気づいてしまった。


「ゆ、許されへん!!」


「ああ、そうだなぁ!!松村、一回ボコボコにする必要があるな?!」


俺も興奮してきて、須月に同調するように言った。

委員長はそんな俺らを見て、ニヤリと笑う。




「_逆に、松村君を孤立させるのはどうですか?」



「……それ、良いかも、蜂山ちゃんからも守れるし」




確かに、良い案だと思った。

それだけなら暴力もして良いだろうし脅しても良い。俺の欲望も満たされて、蜂山も安全になる、素晴らしい案だと。



「そうしようやないか…!!松村を許しちゃあかん!!」



蜂山に感情移入したのか、LINEの内容を思い出し松村を恨んでいるのか泣きながら須月が怒る。委員長はキレすぎだろ、と思ったようで、若干引いていた。



「じゃあ、まずは教室でLINEの内容を皆さんに見せましょう!」


彼は満足気に、言う。


「それから、藤田君は松村君を脅し、須月さんはクラスメート以外にも蜂山さんの被害を話すんです。あなたの話ならきっと誰もが信じてくれますよ!!」



それに、皆頷きそこで解散した。

その後は各々松村を孤立させるように動き、うまくいっていた筈だったが、蜂山が登校してから何か変だとクラスのみんなが言い出した。


俺はまだ、何も気づいていなかったけど、鑑別所に入れられたりして、最近おかしいと気づき始めたんだ___



って、俺が委員長と話したのはこんだけだ、…あ、後は田中に早く松村を殴れって催促された、だけだ」






「なる程な、須月もお前と同じ巻き込まれた側ってことか?」



「ああ…多分…演技してなかったならな…、そろそろ休憩終わりだ、じゃ、じゃあな」



「…ありがとうな、色々話してくれて」



「ッッ、ありがとうなんて…止めてくれよ、」


そう言って藤田は去って行く。

ちょ、ちょ待って、須月も騙された側って。なんか冷たく突き放したりしたけど、今めっちゃ気に病んでそうで心配になってきた。そりゃ勿論、松村君にしたこと許してないし、謝ってくれないから怒ってる気持ちもあるけど…大丈夫かな。



__また今度しっかり話し合う必要があるかもしれない。



「…所で松村君、田中の言ってた虐めて依存させる話マジ?」


「んな訳なけがない」


「本当に?」


「そこまで…疑うなよ、」


私がするどい目つきをすると、松村君は目を逸らして言った。

からかいすぎた。


「あはは、冗談だよ。する訳ないじゃんね!」


「ない、…しかしそういえば田中って小学校の時いたな、顔は覚えてないが」



「はは、ってええ?!」



そこはマジなの?!






___




「藤田君学校やめちゃいましたよ」


「……退学って酷すぎるよ」


「須月さんも最近LINE見てくれないですねぇ…なぜ、蜂山さんに毒を飲ませるの失敗したんです?」


委員長と田中は二人で誰もいない教室で話して居た。

不満そうに、委員長は田中を睨む。


「…松村が邪魔してきたから、仕方がなかったの、」


いきなり冷たいトーンで話されて、田中はびく、と反応する。

しかし、田中も委員長に思うところがあったのか、反論し出した。


「委員長だって……クラスメートに言いまけてッ、」


「それは、多数には勝てませんよ…」


「仕方がないは、おあいこ…でしょ?__それよりどうするか考えなくちゃ」


ッチ、と委員長は舌打ちをするが、すぐ切り替えて言う。

何もかも、自分の思い通りに進まなくてお互いイラついついていた。


「そうですね、…ではこれはどうでしょう?」



__二人の話し合いは2時間程続き、辺りはすっかり暗くなっていた。

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