襲われた松村君、助けたい。
_居た、まだ公園に居た。
こいで5分ぐらい経った頃、誰もいない公園とフードを被った藤田らしい男と松村君の姿が見えてきた。
松村君は倒れた後のように電柱にもたれかかっていた。
そこへ藤田がまた殴るように拳を振りかざす。ああ、まずい…!!
そこへ、焦りながら私は防犯ブザーを壁の後ろから藤田の近くを狙い投げる。
ハンドボールには自信があるから、遠くからでもまあまあ届く。
藤田はジリリリリリリ!!!と、大きな音を鳴らす防犯ブザーを鬱陶しそうに見る。
「んだよこれ誰が!!」
と言いながら周りを確認し、力強くブザーを踏み潰す。どうやらどこから投げられたとか分かっても居ないし、探そうともしていないようだった。
_に、逃げない…!!!
そりゃそうだ、よね…酷い事を言うけれど、藤田は賢い方では無い。
だからこのブザーはただうるさいものとしか認識していないのかも…ッ。
藤田はボロボロに壊した防犯ブザーをそのまま放置してまた松村君のもとへと向かい始めた。私が居る方角から目線を外した藤田に、今度はさっきよりも遠くの方へブザーを投げる。
「チッ、またかよ!!!おい!!でてこいよ!!」
と大きい声で叫びながら歩いて先程と同じように止めにいく。彼は今度は踏み潰すんじゃなくて、しっかり止めてポケットに入れる。
だめか、……もっと、離さないと!!
…私は段々彼が松村君から離れて学校に近くなることを狙って投げていく。学校の近くなら、先生も何人かいるはず…!!!そういう祈りに近い感情をこめて、私は少し投げやすいように移動し、最後のブザーを力を込めて投げた。ちゃんと、狙って、遠くに!!!
ジリリリリ、リリリリリリリ!!と今までのどれよりも大きい音でなるブザーを止めに、藤田は移動する。ブザーは学校にかなり近くに落ちて、結構離すことに成功した。
しかし、ブザーを拾う直前と言うところで、ウーウー!とパトカーのサイレンが聞こえ始めた。…よ、よかった。来てくれたんだ。
「はぁ?まさか誰か俺の事通報したのか?!」
_流石の藤田も、やばいと思い始めたのかブザーがある学校から離れ、松村の方へ戻ろうとする…やばい、逃げられちゃうかも…!!と思い藤田の方へ私が走るが間に合うはずもなく。
また松村君を藤田は狙おうとしていた。
だけど松村君は、藤田の腹に蹴りを一発入れて、次に彼の急所に二発、三発と蹴りをいれる。
「グオッ!!…クソがぁ!」
それが中々きいたのかふらふらとよろめき、悶える藤田だったけれど、意外にも反撃しようとはしなかった。
私はまた殴り出すのかと思い焦ったが彼は段々パトカーがこちらに近づいてくる事に恐怖したのか、股間を押さえながら走って逃げようとしたようだ。
しかし、角を曲がるところで、静谷君とぶつかり転けた。
静谷君はスポーツをやっているからか、体格も良く藤田よりも大きい。
私はすぐさま松村君の方に近寄り、様子を見て、静谷くんに向かって言う。
「ごめん静谷君!!そいつ!!体抑えれる?!」
彼は藤田に対して、手を貸そうとしていたところだった。
私がそう言った所で静谷くんはその手を引っ込め、また藤田は体制を崩す。
「蜂山さん…?なぜか分からないけど分かったよ!!」
体勢を崩した藤田の上に乗っかり、手を掴み抑えてくれた。私は彼に聞こえるように松村君が殴られた事を伝える。すると静谷くんの顔に怒りが浮かび、先程より強く抑えられたのか藤田が苦しそうな声出す。
「はッッ、なせ…!!」
「警察はもしかして君を捕まえに来てる?なら、離すわけないよね」
パトカーはやがて、公園の近くに止まり警察官の人たちが次々と降りてくる。
静谷君に代わり、藤田を抑えて手錠をかける。藤田は、「ハ?な、何すんだよ!!!」と怒って反発しようとしていたがそのままパトカーに乗せられ連行される。
私は一息を着く間も無く、警察の人たちから色々話を聞かれ素直に答える。当たり前だけど、私は少し怒られ静谷君は無事でよかった、助かるよと感謝されていた。
松村君は後からきた救急車に運ばれて、病院へ行った。
_ボロボロになった松村君を見て私は後悔した。
自分が会いたいとか言わなかったら松村君は藤田の攻撃に反応し、避けれていたかも。
私が松村君を電話させながら公園で待たせたりなんかしなかったら、こんな危険な目にあっていなかったはず。…あーもう、数十分前の私に教えてやりたい、バカすぎって。
「駄目だなぁ…」
そう自分に対して言う。
私が手で顔を覆って、止まらない水を拭いていると静谷君が「……そうだね、藤田は駄目なやつだったな」と横で呟く。彼が私と違う意味で言っているのは分かっているけれど「うん…」と返した。
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