入院中の松村君へ私、お見舞いにいく。
松村君は救急車に運ばれた後、治療のため入院することになった。
肩らへんの骨折、詳しく言うと上腕骨近位端骨折を起こしてしまったらしい。
私は松村君のいる401号室へと向かった。
ここにくるのは一回目じゃない、二日に一回のスピードで来てるから…もう、5回目ぐらいになると思う!
「はぁ、やっぱ松村君が居ないと話し相手が居なくてさみしーよ〜」
ベッドの横にある椅子に腰をかけ、グミを食べながら言う。
三角巾で腕を覆われている彼は呆れた顔をした。
「蜂山さんと話したい人なんか教室中に溢れてるだろ」
「ん〜、そんな事ないよ。皆気まずい感じでさ来てくれないんだよね…謝りにきた子は何人か来たけど笑って流しちゃった」
「…許さない感じか?」
「その子たちが松村君にも謝れたら許そうかな」
「ふーん、」
松村君には謝らずに私だけなんておかしい気がするんだよね。
すぐ許してくれそうだから、とか逆に松村君は怒ってきそうだからみたいな事考えられるの嫌だからさ!!
すると、松村君は私が食べているグミをジーと眺め始めた。
「何〜?食べたいの?」
にやにやとしながら私はグミを一粒取り出し彼のもとへ近づける。
腕が使えないなら、食べさせてあげるよ!!という意味を込めてだったんだけど伝わるかな?
「……あ、」
松村君は照れながら、小さく口を開ける。
_やだかわいい!!
「…はいッ、」
ゆっくりと、彼の口にグミを近づけていく。
今思ったけど、これ完全に「あ〜ん」じゃん!!恥ずかしい!!
「美味しい?いちご味だよ」
「……うまい」
ずっと顔が赤いまま彼はもぐもぐと口を動かす。結構ハードグミだったから、硬いんだろうなぁ。私がずっと彼の食べているところを眺めていると、きッ、と睨まれた。
「_そういや松村君、ごめんね、私が会いたいなんか言わなかったらこんな目には」
松村君が元気になったら言おうと思ってた。
最近私は彼に謝ってばかりかもしれない、ただただ申し訳ない。
「違う、俺の不注意だ。俺は藤田が後ろから来ている事に気が付かなかったんだ」
私がいい終わる前に彼は被すように話す。
そんな事言わないで、松村君は何も悪くないんだだから…そんな庇うような事言わないで。
「……骨折とか、痛かったよねッ、絶対」
私は声と強く握った拳が震える。
助けに行くのも遅かったし、自分がついた頃にはもう松村君はボロボロだった。
「痛かったけど、こうして治ってるから問題は無い」
彼は左手でグッドのポーズを作る、…そんな姿を見ると涙が出てきた。
なんでだろこんなとこで泣きたく無いのに、泣いたら責任感じさせちゃうから嫌なのに。後悔と辛さで止まんない。
「…思ったんだが、悪いのは俺でも蜂山さんでも無く藤田じゃないか?」
すすり泣きをしている私に彼がズバッと言った。
「…確かに」
た、確かに!!
背後から襲った藤田がいっちゃん悪い気がする!!そう考えると一瞬で涙が引っ込む。
「だろ、あいつ少年院入り確定なんじゃないか?」
こっちは骨折までして、明らかに悪意があって襲った藤田は傷害事件に問われると思う。
しかも取り押さえたわけだし、スムーズに彼に裁判への道を進ませる事ができるだろう。
「んふ、入るなら早く入って欲しいね怖いから」
「そうだな…しかし次襲われかけたらしっかり反撃しなきゃいけないな」
「うん!!ボコボコにしちゃえ!!」
「はッ、」
…お、笑ってくれた!!
「あ、そろそろ帰らなくちゃ、グミ置いとく!」
「あ、ああ助かる」
いらなさそう。
でも、さっき美味しいっていってくれたし何も無いよりはあったほうが良いでしょ!
勝手に私が思ってるだけだけど。
私はガラガラ…と扉を閉め401号室を出る。
うん、そうだなぁ…確かに悪いのは藤田な気がする。
そして、あーんした時の松村君の表情が頭から離れない!!
___
広い部屋に一人残った俺は、骨折をしていない左の手でグミを一つとり、ため息を着く。
通話に集中しすぎたのがいけなかったな…。あの時は蜂山さんの声がなぜか聞きたくて、声以外の音をシャットアウトさせてしまったから藤田に気がつかず殴られてしまったんだ。
あの時蜂山さんの会おうと言う誘いを断っておけばよかったか?
_いや、俺も会いたかったのには変わりなかった。
…、随分俺も変わってしまったな。
こんなんじゃ父親にきっと怒られる。
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