第30話
隣の席のレオナとかいう女はそれ以降も煩わしかった。
各授業で最初に行われる簡単な説明の際にも突っかかるし、授業間の小休憩のときにも突っかかって来る。
剣を折ってやったのでもう差し向けて来る剣は無いが、その度に周囲からの目が痛いのが気になった。
例えば魔法の授業では―――
「魔法を使う際に一番必要になる物を、ノア君。」
「それは「魔力と詠唱だ!」
俺を名指しした問題を掠め取ってくる。
あと、間違っている。
「魔力は重要だが、詠唱は無くても構わない。必要なのは適切な魔力を適切な形に練ることだ。」
「ふ、ふん!そんな訳無いだろう。詠唱が無いと魔法なんて使えないじゃないか!」
「いいえ、レオナさん。詠唱をするのはあくまで初心者用の技術なの。人並みの魔術師なら無詠唱は基本技術の一つよ。」
といった風に。
いっそ清々しい程に間違えたので、あるいは周りが分かり易いように反面教師に徹しているのではないだろうかと思える程だった。
次に実技の授業で―――
「貴様は【無】属性魔法が得意なのだろう?なら使ってみせろ。どうせ【無能】に使える魔法なんて有る訳は無いがな。」
「わかった。『魔力弾』『倍加10』」
10発の『魔力弾』が訓練場の宙を舞う。
銃の玉の様に爆発力で飛ばしているわけではなく、『サイコキネシス』の応用なので自由に操る事も可能だ。
「はっ、そんなちっちゃな玉で何ができるというのだ。そんな程度じゃ初級の『火球』すら相殺できないだろう。もっと増やして見たらどうだ?」
ああ、『火球』“で”すら相殺できない威力が一発一発にある。
というか、そろそろうるさいな。
『魔力弾』は軽く地面に当てないと消す事が出来ないのだが、ここはその特性も生かして周囲に思い知らせるのも悪くないだろう。
「『倍加20』」
10発の『魔力弾』が20個に増える。
つまり、現在の『魔力弾』の数は200個。
維持するのはそれなりに難しい。
その内の一つを、訓練場内に設置されている的に当ててみる。
スリングショットの様な感覚で弾いて撃った『魔力弾』は人型の的の心臓部を貫通し、そのまま壁にめり込む。
地面であれば砂の粒が『魔力弾』を掻き消してくれるのだが、硬いものだと表面が相殺されるだけでそのまま突き進む。
そのため、柔らかい地面に当てる事が一番丁度良い消し方なのだ。
遠くで様子を見ていたマリナ教師も、近くで煽ってきたレオナも、その事に呆然としている。
音に気付いてもこちらを見ない者もいるし、こちらを見ていた者はレオナ達と同様に驚いている。
ふっふっふっ。
そう、その顔が見たかった。
そして、少しだけ待って二人が顔を上に向けると。
そう、そこには残り199発の『魔力弾』がある。
ズガガガガガガガッ
音はそこまでしないが、形容するならそういった所だろう。
訓練場内に設置されている20個の的に10発ずつ。
試験中は自重して目くらましと牽制にだけ使ったが、それなりに殺傷力の高い俺の魔法だ。
「うおー!ノァすげー!!」
「ハクもできるようになる。」
「がんばるぞー!」
ハチの巣になった的達を見て、レオナとマリナ教師。そして他のクラスメイト達は未だ固まったままだ。
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