第3話 シンデレラの法則

あれから、2週間。

インタビューの時がやって来た。

「入野李くん。今日はよろしくね」

長髪にサングラスをかけた、インパクトの強い記者が名刺を差し出してきた。

名刺には、『月間フェアリー担当 有馬ありま博史ひろし』と書かれている。

「君が、最年少のフェアリーゲットオーディション優勝者だね。入学してみて、今の気持ちはどう?冬のフェアリーフェスティバルに向けて、何か抱負はある?」

一息に聞かれて、李は戸惑った。

「ええと、この聖央華に入学出来て、生徒会にも入ることができて、とても光栄です。フェアリーフェスティバルについては、正直初めてなので、何をするのかまだあまり分かっていません。でも、楽しみたいな、とは思っています。あの…、最年少優勝者なんですか?私」

有馬は驚愕した顔をした。

「君、フェアリーゲットオーディションのこと何も知らないで抽選に行ったの?それに、フェアリーフェスティバルのこともあまり知らない?テレビの中継で観たことないのかな?」

李はますます戸惑った。

「うちは、あまりテレビを観ない家庭で。それに、フェアリーゲットチャンスの抽選は、友人の話で知って、直接応募しました」

有馬はびっくりして、ずれたサングラスを慌ててかけ直した。

「そうだったんだね。いやはや、これは本物のシンデレラストーリーじゃないかね?」

そこで真顔になると、有馬は続けた。

「フェアリーゲットオーディションに合格したのは、3年前の新崎由梨乃君に次ぐ快挙だ。新崎君が合格したのは、小学5年のときだから、小学4年で合格した君が最年少だ。フェアリーフェスティバルは、毎年行われているフェアリーと生徒会による祭典で、テレビで放送されている。君も今年は出ることになるんじゃないかな」

「そう聞いています」

李も頷いた。

「フェアリーゲットオーディションも、フェアリーフェスティバルも知らなかったのなら、きっとこれも知らないだろうな。俺は月刊フェアリーの専属記者をしている。聖央華の生徒会を中心に取材しているから、これからもよろしく」

これを読んだ方が良い、と言って有馬は鞄の中から自身の書いた記事が載っている、月刊フェアリーを出した。

月刊フェアリーを捲ってみると、桃子や聖紅、成美、嵐藍、由梨乃などが載っていた。

「すごい!皆が雑誌に…!」

「君もこれから載るんだよ」

有馬が呆れたように笑った。


「お、有馬さんじゃん、こんにちは」

インタビューは生徒会の部屋を借りていたため、すれ違った聖紅が挨拶してきた。

「聖紅くん」

有馬と聖紅は仲が良さそうだった。

「聖紅くんがこの前、生徒会でウーララのストロベリーショコラ飲んだって呟いてから、ずっとストロベリーショコラは売り切れみたいだよ」

「えっ、ウーララの店員さんに迷惑かけちゃったかな。でも、呟いちゃったものは取り消せないからまあ、いっか」

聖紅はエヘヘ、と笑った。

「このように聖央華の生徒会メンバーは、かなりの発信力を持っているから、君も自覚すると良い」

有馬は李の肩を叩くと、奥で待機していた桃子に向かって声をかけた。

「葛藤くん、テニス部の話を聞かせてよ」

2人が、遠ざかっていく。


「由梨乃ちゃんが、フェアリーの指導してくれるって」

聖紅が李に声をかける。

その後ろから、由梨乃が部屋に入ってきた。

「フェアリーの動き方を教えてあげる。リングへ行きましょう」

こうして由梨乃と一緒にリングへ行くことになった。

「フェアリーゲットオーディションのとき、フェアリーはどういう風に動かしていた?」

由梨乃が聞いてきた。

「えっと、あまり覚えてなくて。ただ、念じてました」

「私のときも同じだったわ。今から冬のフェアリーフェスティバルに向けて、具体的なフェアリーの動かし方を教えてあげる」

由梨乃はボブカットの髪を靡かせて微笑んだ。






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