第2話 教室でのハプニング

ウーララのストロベリーショコラを飲むと皆一息吐いた。

「うー、おいしい!」

聖紅が叫ぶ。皆が笑って頷く。

「そうそう、李さん。来週雑誌のインタビューがあるから。私もテニス部の関係で取材を受けるから、一緒に頑張りましょうね」

桃子が李に微笑みかける。

「インタビューって、何のことですか?」

李は訳が分からず、首をかしげる。

「フェアリーゲットチャンスのオーディションで優勝したじゃないか。それのインタビューだよ。フェアリーバトルで優勝した人間を、メディアは放っておかない」

桃子と同じく高等部2年生の御堂みどう成美なるみが答える。

どうやら、聖央華学院の生徒会はアイドル扱いのようだ。

『うーん、いい匂い』

その時、李の鞄から、二つの頭がニョキッと顔を出した。

「リイリー、メイリー!」

リイリーとメイリーは李のフェアリーである。リイリーは天使の姿をしていて、可愛らしい言動が多いが、メイリーは悪魔の姿をしていて、天の邪鬼で粗野な言動が多い。

李のフェアリーはツインフェアリーといって、二人、つまり一対のフェアリーだった。

通常のフェアリーは一人だけだ。

その分周りからも注目されているのかもしれない。

「仕方ないなあ、ちょっとだけだよ」

李は二人にストロベリーショコラの上に載っているホイップクリームを分けてあげた。

二人とも喜んで食べている。


「そろそろ冬だから、来週辺りから生徒会も忙しくなりそうね」

李の直属の先輩、初等部生徒会長6年の城瀬頭きせとう嵐藍ららが言う。

「冬?何をするんですか?」

李が聞くと嵐藍は微笑んだ。

「クリスマスイブにフェアリーフェスティバルという生徒会員とそのフェアリーによるライブがあるの。メディアも中継に入ったりするわ。あなたも今年は出場する予定よ。緊張しないようにね」

李は驚いた。やはり、聖央華の生徒会の面々は世間にとっても、学院の生徒にとってもアイドルなのだ。


李が生徒会の人と顔を合わせてから教室に入ると、幾人かの生徒が駆け寄ってきた。

「李ちゃんっていうの?よろしくね!」

「部活はもう決めた?一緒の部活に入らない?」

「聖央華に入学してすぐ、生徒会に入れるなんてすごいね!」

李は少し照れて、たじろいだ。

「あ、ありがとう。部活は自分で見て回って決めようと思うんだ。ごめんね」

その後ろで、3人ほどのグループが囁いた。

「フェアリーゲットチャンスなんて、ただの抽選に当たったようなもんじゃない。実力じゃないでしょ」

「どうせ、桃子さまあたりに取り入ったのよ」

「いいえ、聖紅さまよ。今朝一緒にいるところを見ましたもの。庶民のくせに立ち回りだけは上手いのね」

李に対しての悪口だ。クラスの雰囲気が悪くなって、皆口をつぐんだ。

その時だった。

教室の扉が開いて、二人の人物が入ってきた。

「あれは…」

「嵐藍さまに由梨乃さま!」

初等部生徒会長、6年の城瀬頭嵐藍に中等部1年の生徒会書記及び会計の新崎しんざき由梨乃ゆりのが立っていた。

「フェアリーゲットチャンスに当たっただけだとしても、オーディションで優勝したのは、間違いなく李さんの実力よ」

嵐藍が言う。

由梨乃も続けた。

「李ちゃんのことが妬ましいのなら、あなた達もフェアリーの実力を磨いて、正々堂々と戦えば良いわ」

由梨乃は、李と同じで、庶民の出身である。また、フェアリーゲットオーディション優勝者というところも同じである。そのため、李に肩入れしてくれたのかもしれない。

「「すみませんでした」」

3人は素直に謝った。

「李さんにも謝りなさい」

嵐藍が促す。

「「ごめんね」」

また3人が謝った。

「ううん、私は気にしていないから平気」

本当はクラスで受け入れられていないかと思い、ショックだったのだが、平気なふりをした。

これからどうなるのか、今はまだ分からない。

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