第5話


 休み時間が終わって授業中。隣の席に、灰になったなっちゃんがいて気まずい。


 悪いことをした。けどまあ、俺だってヤバイやつ扱いされている。自業自得とはいえ、転校初日にヤバイやつという評価は苦しいので、ここは痛み分けということにしておこう。


 にしても、いくら俺がラブコメを知らないとは言え、リスナーの言うことを鵜呑みにするのはまずいな。今回は俺の早とちりだけれど。


 結局、なっちゃんとはラブコメ出来なかったわけだし……ってあ、もしかしたらヤバイかもしれない。


 ラブコメ配信なのに、さっきのはいわばタイトル詐欺配信。もしかすると、今頃、登録解除の嵐なのでは?


 やばい。俺の夢が。


 慌てて登録者ページを開き、確認すると目を見開いた。


 1532人、だと?


 これは多すぎる。朝配信の時に58人だったから、かなり増えている。


 一体、どういうわけだ、これは? こっから配信動画のコメ欄に飛べないだろうか。あ、飛べた。


 <神回

 <幼馴染み釣れててわろた

 <なっちゃん、可愛いのに可哀想

 <この路線、最高だな

 <ラブコメ知識が本当にないんだなw

 <次も楽しみ

 <こいつはラブコメできるんだろうか?

 <次こそラブコメを

 <あ、ラジコンで頼むな


 その下にもぞろぞろとコメントが続いている。


 もしかして、この路線なのか?


 深く考えることなく、リスナーの言う通りにするのが面白いのかも。


 いや、そう。バラエティなんかで、インカムで指示送ってやらせるみたいな番組が人気を博しているのは知ってる。


 それにリスナーの言う通りやったことで、結果はともあれ、なっちゃんという超絶美少女と関わりを持てた。ラブコメを知らない俺がいくら頭を捻っても、出来なかったことだろう。


 1億円なんて、普通にやってたら不可能な額。だが、この調子でいけば、無理な話ではない。


 これだ、この路線だ。


 俺はリスナーの言うラブコメする方法を、本気で信じて実践していく。俺の精神的な負担がとんでもないが、馬鹿になってやるしかない。


 <次のヒロイン気になるなあ

 <次回は俺も最初から参加したい

 <ヒロインによって方法変わるから、誰か知っておきたいな


 早くも、視聴者は次を望んでいる。


 この流れ、逃してはならない。


 とにかく、次のヒロインだ。


 昼休みになると、俺はなっちゃんに話しかけた。


「なっちゃん」


「……よく話しかけれるね。しかも、なっちゃん呼びなんだ」


「ヒロインっぽい、可愛い子知らない?」


「この人、ほんとヤバ」


 と言いつつも、優しく教えてくれたなっちゃんに感謝し、帰宅すると配信をはじめた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る