Mission15 対決結果

 彼女はしばらく、無言で固まっていました。さて、どう出る? 「わたくしのことを試そうとしている」、その考察は……恐らく、間違えていないはずです。その証拠に、音宮先輩から来てくださった時は、全く妨害がありませんでしたから。わたくしの行動を見て、合わせて動いている……そう感じましたから。


 わたくしは微動だにせず、副会長を見つめます。すると彼女は、小刻みに肩を震わせ出し……。

 ……来る!!



「あっはっはっはっはっはっは!!!!」



 大声で、片手はお腹を押さえ、もう片方は膝をバシバシ叩き、全力で笑い始めました。



「……はい?」

「いやっ……いや、ごめっ……!! ずっと笑いこらえてたの……!! ははっ、ひーーーーっ……!!」


 ……この方、やはり、真面目ではないですわね。決して。


「はーっ……うん、そーだよ。君のことを試したくて」


 一通り笑い終えたのでしょう。彼女はゆっくり深呼吸をすると、あっさりとわたくしの考察を認めました。


「……今度は、こちらから質問する番ですわね。何故、わたくしを試そうと思いましたの?」

「なんとなく分かってんじゃない? 言ってごらんよ」


 質問に質問で返されました。……予想の範疇を出ない、不確実なことは言いたくないのですが……言わないと喋ってくれなさそうですし、仕方ないですわね。


「……音宮先輩のことが、心配だった」

「ぴんぽん」


 そう言うと副会長は、わたくしを意気揚々と指差しました。先程それを注意したのは一体どこの誰ですか……。


「君は一定の誰かに執着するような様子は、今まで見受けられなかった。それがある日突然、音宮くんに絡みに行くようになった。星空観察会の日、君がわざわざ音宮くんに会いに行ったところに出くわして、まあ、言い方は悪いけど、怪しかったからさ」


 ……あの日、副会長と曲がり角でぶつかった日から、既に始まっていた……ということですか……。


 ……考察は全て的中させましたが、試合に勝って、勝負に負けた様な気分ですわ……。


「一応、友達だからさ。心配だったんだよ。でも、君のその様子だったら平気そうだね。……疑って、嫌がらせみたいな行動をして、ごめんなさい」

「あっ、い、いえ。……こちらこそ、突然登場した者が出しゃばり、すみませんでした……」


 ここでふと思いました。彼女にとって、わたくしこそが「ぽっと出の女性」だったと。……メイドの言っていたニュアンスとは、少し違いますがね。


「さーって、恋する乙女は可愛いー♡ ってことで!! 僕もじゃんじゃん協力するので!! もし御用の際は何なりとお申し付けを」


 そう言うと副会長は軽く腰を下げ、うやうやしくわたくしに頭を下げました。その自然なまでの、洗練された動きは、目を見張るものがあり……。


「……貴方に頭を下げられると、心底不気味な感じがしますわ……」

「おっと言うねぇ」


 彼女はあっさり頭を上げ、ニカッと豪快に笑い。


「まっ、協力するっていうのは本当だし、気軽に頼ってよ! ……音宮くんって結構自分の事『平凡』とか『普通』とかって卑下するタイプだから、攻略は難しいと思うけど、頑張れー」

「応援が雑ですわ……」


 協力する、という申し出は……彼女の方が音宮先輩より早くに出会っている分、わたくしよりも情報を持っていると思いますので……ありがたいですが……。


「じゃあそんな君に、さっそく僕から、良いことを教えてしんぜよう」

「恩着せがましいですわね……」

「マジでああ言えばこう言うじゃん、君」


 それはそうとし、気を取り直して……彼女は、真面目な表情で告げました。


「あのね──」





 副会長から話を聞いたわたくしはその後、校内を歩いていました。特に用事があるわけではなく、ただ、淡々と。


 ……一応、彼女には、「音宮くんならこの時間帯、ここにいると思うよ」、とは言われましたが……別に、たまたま辿り着いてしまえばその限りですし、辿り着かないなら着かないで……。


 そこまで考えたところで、わたくしは会議室Aという所までやって来ました。……ここにいるだろう、と聞いたところです。


 ……体は正直ですわね。


 自嘲気味に笑ってから、わたくしは扉をノックします。どうぞ、と中から声が聞こえ……。


「音宮先輩」

「あれ……氷室さん、どうしてここが?」

「……副会長から聞きましたの」

「そっか……俺に何か用事?」


 一目で分かります。彼はとても疲れている……連日仕事に呼ばれていましたからね。その疲労が溜まっているのでしょう。


 それだというのに、突然やって来たわたくしに対し……一切迷惑そうな表情など浮かべず、こうして対応してくださっている。


 ……わたくしは、彼に伝えたいことがあり、ここまで来ました……こんな状態の彼に伝えるなど、酷ではあるとは思いますが……。

 今のうちに、伝えておきたいことがありました。


「……はい。先日の申し出の、お返事がしたいのです」










オマケ


副会長「それはそうとして、買収した生徒の名前を全て挙げなさいお金は返してもらいなさい全員纏めて生徒会室で反省文です」

文那「なっ、なんですってーーーー!?!?!?!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る