Mission14 ライバルと直接対決!!

 その後も、とても酷いものでしたわ。


「音宮先ぱ……!!」

「あっ、音宮くーん!! もぉ、探したよ~。こんなとこに居たの?」


 授業間に彼の姿を探し、やっと探し当てたと思えば、あの女が横から掻っ攫う。

 その後も跡を付けましたが、一向に2人が別れる気配もなく。


 でしたら、お昼をご一緒にどうでしょうか? と、スマートフォンでメッセージを……とても勇気を出して、送ってみましたわ。するとすぐに返信は来たものの……。


『ごめん! 委員会の仕事の打ち合わせがあって……』


 あえなく散りましたわ。そして震える指先で、もしかして、あの副会長もいますの? と尋ねると……。


『うん、いるよ』


 それがどうかしたの? と追撃が飛んできて、何でもありませんわ、と返しました。


 ……惨敗。

 その二文字が、わたくしの頭の中に浮かびました。


 あの方、一体どういうおつもりですの!? まるで、わたくしと音宮先輩を引き離そうとしているかのような……!! しかも仕事を引き合いに出して!! 職権乱用ですわ!!


 ……わたくしの約16年生きてきた経験が告げていますわ。彼女は、音宮先輩に好意を寄せているわけではありません。ただ単に面白がっている、と今朝は思いましたが……なんとなく、それも違う気がします。


 というのもこの休み時間、彼女のことは念のためメイドたちに調査させたからです。ええ、ただ落ち込んでいただけではありませんわよ? 時間が余ったというのなら、有効活用しなくてはね?


 その結果によると、彼女は一般企業勤めの父親、そしてスーパーのパートとして働く母親との間に生まれた1人娘。過去に彼女は事件に巻き込まれ、それ故、両親は過保護気味になっている。……しかし彼女はその後特に何もなく、ここまで成長。それどころか、中学の時には全国模試で堂々の1位、運動神経も抜群で正義感が強く、警察から表彰された実績も多い。更にその異能力……現生徒会長をもしのぐものだと言われており、次期生徒会長は彼女だと誰もが言っているだとか……。


 わたくしが考えるに、この方は本当に素晴らしい方……本気で人のことを思い、行動をするタイプです。その為、その評価を潰すようなことはしない……まあ箍が外れたら危険そうな人物でもありますが、今はそういった状況でもありませんし、無視していいでしょう。


 つまり、特に理由もなくわたくしを邪魔しているのではなく、その理由は、恋慕や嫌がらせ、大きく言うと、悪意からではない……。


「……?」


 でしたら一体、何ですの?





 その原因を探るべく、わたくしは徹底的に調査を行うことにしましたの。その期間、じっくり時間をかけたので、1週間。


 その結果、わたくしはとある1つの考察に行き当たりましたの。


「副会長、お話がありますの」

「僕のことを探されたのは初めてだね~」


 背後から声を掛けますと、彼女は振り返ります。まるで呼ばれることを分かっていたみたいでした。……わたくしは冷や汗を流しつつ、彼女を見据えます。


 周りに他の生徒はいません。話をするには、好都合!


わたくし、何故貴方がわたくしと音宮先輩の仲を割ろうとしているか、気になりましたの」

「うん、そうだろうねぇ」

「初めは、ただ単に面白がっているのかと思っていましたわ。それか、貴方も音宮先輩に思いを寄せているのかと……」

「うんうん、それで?」


 彼女は飄々としています。これから言おうとしていることも、全て見透かされている……そんな感覚がしました。


「ですが、そうではないと思いましたわ。貴方は不真面目そうに見えますが、根はとても真面目です。そんな貴方が、自らの立場を潰してまで、わたくしに嫌がらせをするとは考えにくい……。更に貴方は、誰に対しても距離感があんな感じですので、恋愛感情という可能性は低い、というより、ないでしょう」

「うん、そうだね。恋愛感情はない、絶対。死んでも。それは断言してあげる」

「食い気味ですわね……」


 ああ、でも、そうでしたわ。この方が昔巻き込まれた事件は、男性に……。

 ……いえ、それはいいんです。


「……悪意による行動ではない。恋愛絡みだという線も消えた。……でしたらどういう理由があるのか、調べてみましたの」

「うん、それで、何か分かった?」


 彼女は腕を組み、余裕綽々としていらっしゃいます。何故だか緊張しているのはわたくしだけで……馬鹿馬鹿しくなってきてしまいます。

 わたくしは息を吸い、お腹の底に力を込め、言い放ちました。



「結論から申し上げます。……副会長、貴方は、わたくしのことを試したいのではなくて!?」



 そう言いつつ、人差し指を彼女に向けます。


 彼女はしばらく黙った後……口を開きました。


「そう思った理由を聞こうか。あと、人に指差しちゃダメだよ」

「……そうですわね。……それで、理由というのは単純ですわ。貴方は、

「……ふぅん?」


 わたくしは言われた通り、人差し指を引っ込めます。そのまま空中でクルクルと回し、解説を続けました。


「最近の1週間の内、おおよそ半分は、わたくしは音宮先輩を気にしないようにしました。探しに行くこともなく、連絡を絶ち、とことん気にしないようにしましたわ。……そんな時貴方は、音宮先輩に接触しなかった。そんな報告を受けています」

「……お家の人を使ったのかな? でも君の使用人たちは、全員君より年上のはずだ。本校の生徒じゃ無い人がいたら、僕はすぐに気が付く」

「ええ、分かっていますわ。……ですから家の者に頼み、本校の生徒を買収致しました」

「買収……!?」


 彼女はギョッとしたように目を見開きます。……ふふ、その顔が見られただけでも満足ですわね。


「貴方は現生徒会長にも匹敵すると言われているくらいの異能力者……更に、貴方1人いるだけで、国家総動員の軍隊も敵わないと言われているらしいですわね。……ですから、念には念を入れました」

「……君、本気で来たねぇ……僕の予想越えちゃってるって」

「本気ですわよ、わたくしは最初から」


 髪を後ろに払います。……ええ、ずっと本気ですわ。わたくしは。


 初めて、人のことを好きだと思えたのです。人に、好きになってほしいと願ったのです。……お相手は、わたくしには勿体ないくらいくらいの方です。分かっています。


 でも、諦めたくはない。

 やるからには、本気ですわ!!

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