脳内図書館《ビッグデータ》を持つ少女は、安眠を手に入れたい。
プロローグ 運命の出会い
その日は、何の変哲もない日になるはずだったんです。
「……さゆり先生……ベッドを使っても、宜しい、でしょうか……?」
「あら、
いつも通り。溜め息が出そうな程の退屈ですわ。いえ、重い瞼が、金槌で殴られている様な頭痛が、溜め息を吐かせてくれませんが。
重い瞼、重い体。早く眠ってしまいたい──。
……でも
どうして、と聞かれれば、こう答えるしかありません。
──出来ないものは出来ないのです。仕方ないでしょう。
だからこそ、
「なんかすごい音したけど……大丈夫?」
彼との出会いを、〝運命〟だと思いましたの。
なんとか顔だけは見ました。けど眠気に覆われた視界は、まともに声の主を映してはくださいません。見えたのはぼんやりとした顔でした。なんとか、黒髪だということくらいは分かりましたが。
「
「あ、すみません。……君もごめんね、邪魔しちゃったみたいで」
「……」
答えられません、けど、なんとか力を振り絞り、頷きました。返事をしないと、立ち去ってくれなそうでしたから。……彼はホッと息を吐いたみたいでした。息の流れる、その音が聞こえましたから。
分かったのなら、早く放っておいてほしい。そんな思いで、
……ですが
「……寝るんだよね。だったらこれは、邪魔しちゃった俺からのお詫び」
「……?」
「──♪」
歌いました。
突然何をし出したのでしょう、この人は。そう思ったのも束の間。
いえ、眠気は元々所持していたのです。ですがそれ以上の、「眠ってはならない」という
しかしこの歌声は、
ずっと忘れていた、睡眠の快楽。彼の歌声は、
落ちます。どこまでも深い、夢の中に。
目を開けようとしました。しかし、叶いませんでした。……体も、頭も、意識を失います。……ああ、どうか。
どうか、この歌声の主に、お礼を。そして、名前だけでも。
.。.:*・゚☽
目が覚めた時、頭はとてもはっきりしていました。こんな感覚、久々です。いつも眠れず、
そして
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