一章 家族

第1話

アス大陸の中央に位置する由緒ある大国センドレア王国。


その王国の王都センドレアの郊外には、極悪非道な犯罪者共を収容する収容所がある。


その名も『ダイアボリカル収容所』。

地下・地上ともに10階に渡る大きな建物。


窃盗、強盗、痴漢等いった犯罪は当たり前のように犯し、更には殺人や強姦等を平気で犯す奴らが入るよう様な場所。



そんな収容所の地下10階(通称・ステージXてん)、一番奥の部屋にいるのが、ジンと呼ばれる15である。


彼は、11歳の頃ある公爵家領の保育所へ送られたが、1年のメンタルケアではやはり足りるはずもなく15歳になるまでに、数え切れない程の罪を犯してしまった。


…………………


「なんで、俺って手錠掛けられてるんですか?」


「は?」


これは、丁度ジンが王国近衛兵らに確保された時に戻る。


………………………

「急げ!急げ!」


私は、王国近衛兵団所属第2近衛兵団団長アース・グレイマン。

先程、王都を守護する警備隊から応援要請が届いた。

それも、ここ1,2年王国が総力をあげて追っていたジンと遭遇し、確保のため戦っているという旨の無線で、それを聞き我々も急ぎ現場に向かっているところだ。


「アース団長!この先です!」

「聞いたな!テメェら、気ぃ引き締めろ!」

「「「オス!!!」」」

副団長リンコの声に合わせるように、団員に発破をかけた。


剣と剣がぶつかる渋い音が、次第に大きくなって行く中、道の先に、人集りを見つけそれを抜けると若い青年と警備隊がいた。


「失礼。」

そう言って、私は青年と戦っていた警備隊員の間に入った。


「次から次へとなんなの?」

「お前がジンで間違いはないな?」

「だからさ〜さっきからそうだって言ってんじゃん!お前ら馬鹿なの?」


私は、その青年がまさか王国がおっている犯罪者には見えずつい名前の確認をしてしまった。

が、それが彼をイライラさせてしまったようだ。


「もういいよ。流石にうざくなってきた。」

と、彼が呟いたと同時に悪夢が始まってしまった。


ものの10分で、警備隊は愚か、近衛兵も私とリンコ以外が倒れている。

野次馬のその光景を見て、次々と逃げていき今では1人もいない。


「はぁ。疲れた。じゃ、もう俺帰るから」

そんな呑気なことを言いながらこの場を離れようとするジン。だか、そんなことはさせない。


「待てえ!」

「え、何?俺もう帰ってご飯食べたいんだけど」

「人から奪った飯をか?」

と煽るように言った。

「え、ダメ?」

「ダメに決まってるだろうがあ!」

私は、ジンに向かって走り剣をおもいっきし振り切った。


それが、私が病院で起きた時に思い出せる最後の記憶だった。


第3近衛兵団団長サタンからの話によると、私とリンコが倒れた直後、第3〜5近衛兵団と王国騎士団が到着し、甚大な被害を出しながらもなんとか彼を魔力喪失されることが出来、ジンが「疲れたからもうやめた」と言って諦めたところを確保したらしい。

ちなみに、彼は無傷だったらしい。


隣で眠るリンコを確認し、相棒が生きていることにほっとしながら、松葉杖を着きながらジンが収容されたダイアボリカル収容所に向かった。


私が、ちょうど取調室に入った時、

「なんで、俺って手錠かけられてるんですか?」

そう彼はいった。


「は?」

取調べ官は、そう言う事しか出来なかった。


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悪者にも理由はある 蒼華 未来 @rjmuru

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