悪者にも理由はある
蒼華 未来
プロローグ
その日、ある禁忌の実験が行われた。
”知識”への執着が異常な程といわれるセンドレア王国第14代目国王カイセド・センドレアは、古い文献を見つけた。
それは、赤子の教育課程における実験で、一切の言葉をかけずに世話をしたところ、全ての赤子が死んでしまった。と記されている文献であった。
古い文献であったがため、散り散りになっており、そこだけしか解読出来なかった。
それを見たカイセド王は、赤子は死んだのか、何故か。知識への探求を厭わない王は、同じ実験をすることにした。
王城のとある一室に、集められた50人もの赤子。
半分の赤子には、血の繋がりのない者を世話役に。
もう半分の赤子には、実の父もしくは母を世話役にした。
それ以外の条件は、全くもって同じ。
食事の回数、一切の声掛け禁止など。
1年が経った頃。50人いた赤子は、12人とかなり数を減らした。それ以外は、死んだ。
そして、3年が経った頃には、2人しか残らなかった。
ジンという男の子とロストという男の子である。ちなみに、ロストは、親に育てられ、ジンは関係のない者が育てた。
これまでの実験でカイセド王は、ある仮説を立てる。多くの赤子は、死んでしまったが3年が経てど2人は生きている。故に、育児に会話や愛情が無くても必ずしも子供を育てられないなんて事はないと。
そして、カイセド王はさらに、条件を加えた。
ロストには、会話を許可した。
ジンには、これまで同様の育児をさせた。
実験開始から5年
ロストは、吃音症を発症したがスクスクと育っている。
ジンは、特に何も無く成長している。
だが、大きな違いがいくつか判明した。
ロストは、5歳の時点で8歳児の知能を持っていた。
ジンは、知能的には歳相応だが、善悪の判断がつかない子供となっていた。
また、この頃にはお互い歩けるようになっていたため、王からの命令で城の中は好きに歩けるようになっていた。
実験開始から8年
ロストは、8歳とは思えないほど賢く、実験が終了した際には、センドレア王国の宰相が引き取ることが決まった。
ジンは、相変わらず善悪の判断がつかず、平気で城の使用人をハサミで刺したり、虫を殺したり、物を壊したりしている。
使用人からジンの行動には流石に狂気を覚え、王に行動の制限を付けるよう申し出たが、実験のためと言われ引くことになった。
実験開始から10年
ある事件が起きてしまった。
ジンが世話役を殺してしまったのだ。
この報告を受けた王は、流石に実験を中止し、ロストは宰相の元へ、ジンは城の牢獄にて急遽メンタルケアが行われたのである。
そして、1年の期間を経て、ある公爵家領にある国営の保育所へ送られたのである。
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