実家の惨状、両親の生存確認、そして姪っ子

結論を言うと、実家は残っていた。

ただし、建物基礎から90度ほどその向きを変え、

2階にある俺の部屋の窓が正面を向いていたが。


ぶち抜かれた実家の玄関に向かい階段を上ろうとすると、

見慣れない二人組が中に入ろうとしていた。

手にはバールらしき長物と大きな袋を持って。


一気に近寄り、走った勢いそのままに一人を背後から蹴飛ばす。

瓦礫の中に飛んで行った。

人間ってよく飛ぶもんだな、と思った。


振り向いたもう一人の顔面を全力で殴りつける。

同じように、瓦礫の中に吹っ飛んでいった。

メキリと鼻の骨を折る感触があったが知ったこっちゃない。


最初に蹴飛ばした奴が起き上がろうとしていたが、そうはさせない。

肩を踏みつけながら手首を掴み、肘の関節を逆から蹴飛ばす。

関節の壊れる音は意外と大きかった。

再起不能になろうが知ったこっちゃない、ここは俺の実家だ。



ボロ雑巾となった屑を放置し、階段を2階に駆け上がる。

俺の部屋には布団が敷かれ、天袋からはスキーウェアが無くなっていた。

布団を触ると・・・・・広範囲に暖かい!

両親が無事であると確信し、中学校の体育館に向かう。

ちょうど、頭上を自衛隊のヘリが飛び立って行くところだった。


屑二人の姿はどこかに消えていた。


体育館前には避難してきたであろう老人ホームの車が停まっていたが、

中には座ってうなだれたままの人影が見えた。

どうやら、降りて非難するには間に合わなかったようだ・・・・


体育館の中には多くの人が避難しており、見知った顔も多かった。

無事を喜ぶ中で、掲示板の方を指さし教えられる。

「あそこに名前書いている人多いから、探してみろ」と。

言われた通りに探すと、両親の名前があった。

『無事!ヘリで日赤に移動!』という書置きとともに。


そうか!さっきのヘリか!


両親の無事を確認出来た事に安堵し、

中学校の校内と小学校の校内を回る。

今度は実家向かいに住む叔母家族の安否が気になった。


程なく再会し、両親が無事である事を伝える。

叔母は津波に飲まれはしたが、なんとか助かったそうだ。

手足は傷だらけになり、見るも痛々しい。


持参した応急キットから抗生剤入りの軟膏を出して、簡単に処置をする。

ひと通り持参していたのが幸いした。破傷風が怖いからな。


従兄弟の奥さんと娘は怪我無く無事だが、肝心の従兄弟は行方が分からない。

既に辺りは薄暗くなり始めていたので、家庭科室で夜を明かすことにした。


偶然か、在校時の担任が校長先生として赴任してきており、

保健室で怪我人の治療にあたっていた。

「先生、○○○です。しばらくです。いきなりですがコレ、使ってください」

余分に持参していた抗生剤を多めに手渡し、家庭科室に戻る。


従兄弟の娘・・・兄弟同然に育ったので、ほぼ「姪っ子」扱いの子の傍に座り、

「大丈夫だ、大丈夫。おんちゃん、スーパーマンだからな」と抱きしめる。

いつも以上に抱きつく力が強かった。




そうだよな、怖かったよな。よく頑張ったな。


そのまま一晩中抱きしめ、やがて朝を迎えた。

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