第6話 ワーウルフとは?
【狼男】
狼男は、ファンタジーにも登場しますが、特にホラー作品が多い怪物です。
狼男は、ヨーロッパ上に広がる、狼に変身する人間の伝説です。国ごとに、また地域ごとに異なった姿を持っています。呼び名もワーウルフ、ライカンスロープ、ル・ガルーなど様々です。
狼男の発生原因には、大きく分けて、種族説、魔術説、病気説、刑罰説の四つがあります。
種族説とは、狼に変身できる種族が存在するという説です。17世紀には、裁判で自らを狼男と称し、魔女によって地獄に奪われた穀物の種を奪い返しているのは我々だと主張した人物までいました。毎年こうやって狼男が魔女と戦ってタネを奪い返しているからこそ、穀物は実るのだというのです。彼によれば、狼男は「神の猟犬」で人類のために魔王と戦っているのです。
魔術説とは、魔女の軟膏(魔法薬)を塗ることで、狼に変身できるという魔女の魔術です。こうして、狼に変身した魔女は、家畜を襲ったり、荒野を駆け回ったりします。薬ではなく魔女のアイテムの場合もあります。16世紀のスイスでは、魔王からもらった魔法のベルトをつけて狼に変身していた(ベルトを外すと人間に戻ります)という男が死刑になっています。
病気説は呪い説とも言いますが、病気や呪いによって、本人の意志にかかわらず狼に変身してしまうものです。変身しているときには、家畜を襲ったり、墓を暴いて死体を食ったりします。このことを、本人は覚えている場合もあれば忘れてしまう場合もあります。ですが、覚えている場合、その忌まわしい行為に、気持ちが塞ぎ込んでしまいます。
刑罰説は、ここまでの魔術的な話とは少し違います。墓荒らしや魔術の使用など、神に逆らった者は、社会から追放されます。この追放された者を「狼」と呼びます。
【狼男の特徴】
狼男は、強力な怪物ですが、有名なだけあって、その特徴は広く知られています。
また弱点も知られています。
狼男の特徴といえば、狼に変身できることです。それ以外に、シルエットは人間ですが、全身に狼の毛が生え、頭が狼になった半人半狼の姿になれると言います。
有名な弱点に、満月を見ると意思に関係なく変身してしまうというものがあります。
これは正体を隠すのに大変不利な特徴です。
また、銀の弾丸で倒すことができるという弱点もあります。弾丸だけでなく、銀という物質に弱いという説もあれば、聖別された銀だけに弱いという説もあります。
さらには、狼男に噛まれると、嚙まれた人間も狼男になります。
ただし、半人半狼になれる、満月で変身できる、銀の弾丸に弱い、噛まれるとうつるといった性質は実は20世紀になってから、狼男映画によって有名になったもので、それ以前には、このような特徴を持った狼男はいなかったとされます。
ですが、半人半狼は特殊メイクで表現できた、満月は印象的な映像を作れた、銀の弾丸は弱点がないとホラー映画が成立しない、そして、噛まれるとうつるのはより恐ろしさを増すためといった理由で映画に使われました。
そして、これらの特徴があまりにも印象深かったため、伝承のほうが影響を受けて変質してしまいました。
現在では、多くの地方の伝承においても、銀の弾丸で狼男は死ぬものとなっています。
奇妙な伝承に、狼男は死ぬと吸血鬼になるというものがあります。粗野なイメージの狼男と、貴族的な吸血鬼は似合わないように思えますが、血を吸って皮膚が赤黒く見える農民の死体という古い伝承の吸血鬼なら、狼男に似合うでしょう。
【狼人間】
3大モンスターの一角を占める狼人間は、昼なお暗き森の奥底に潜み、狼から人へ、人から狼へと自由自在に姿形を変える夜の魔物である。
・狼人間と吸血鬼
狩猟生活を送っていた古代の人間が、食料の恒常的な調達を可能とする牧畜を初めて以来、家畜の群れを貪欲に狙う狼は、安定した生活を脅かす最大の敵だった。インド=ヨーロッパ語族において、狼を指す言葉の多くは「略奪者」「貪り喰らう者」といった語源を持っており、人々がこの獰猛な野獣についてどのような印象を抱いていたかを窺い知ることができる。
狼は数多くの神話に登場していて、神々の黄昏が到来した時に解き放たれる北欧神話のフェンリルや、子供を生贄に捧げてゼウスの怒りを受け、半獣の怪物に姿を変えられたアルカディアのリュカオーン王を、代表的なものとして挙げることができる。聖書に登場する狼は、不信心な人間に与えられる神罰を体現しているが、民衆はよりシンプルに、狼を悪魔の化身と見なしていた。
吸血鬼、フランケンシュタインの怪物に並んで3大モンスターに数えられる狼人間は、狼へのこうした恐怖の中から生み出された。
狼人間の伝説はヨーロッパに敷衍しているが、狼の姿に変じた人間であったり、人間の皮を被った狼であったりとその姿はまちまちだ。他にも、月を見て狼に変身する、狼の通った跡を歩く、狼の水飲み場で水を飲むなど、狼人間の性質には様々な話が語り伝えられているが、好んで人間の血肉を喰らうこと、人間から狼へ、狼から人間へと自由に姿を変えられる獣人化現象を伴うことが、共通の要素として挙げられる。
ブラム・ストーカーの創造したドラキュラ伯爵には、黒犬に変身し、群狼を配下として捉えるなど、狼人間のイメージが色濃く反映されているが、東欧の一部地域において、この両者はしばしば混同されてきた。ポーランドのダンツィと地方の伝説のよれば、生前に狼人間であった者は死後に吸血鬼として復活するとされており、ギリシアにおいて吸血鬼を指すヴリコラカスはバルカン半島においては狼人間を指す言葉として用いられた。
参考文献
『シナリオのためのファンタジー事例知っておきたい歴史・文化・お約束121』
『図解吸血鬼』
私に創られし数多の英雄達が残した伝説 薄雪姫 @KAGE345
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