第16話 三国志に登場する職業について

免罪符売り


罪も罰も鐘の音と共に去りぬ。

煉獄の沙汰も金次第


属性

戦闘 商売 商人 放浪 宗教 賤業

権威 氏族

武力:2

技術:2

知力:6

魅力:2

財力:7

忍耐:2

解説 前出「聴罪師」の箇所で、告解について簡単に解説した。罪人が己の罪を悔い、告白し、贖罪することで赦しを得るという4段階からなる秘蹟だ。

これらのステップの三番目の贖罪であるが、その内容も実に宗教的で、「断食」や「聖地への巡礼」あるいはただ「貧者への喜捨」などが代表的なものだった。

ただ、最後の喜捨は見方によっては罪と罰の問題を「カネで解決」したと見られなくもない。

そして、エジプトのピラミッド用賦役から騎士の軍事奉仕まで、金銭による個人的苦役の代納化は、歴史上あちこちで見られる人類の普遍的傾向でもある。

 かくして罪は金で贖われるようになった。教団側も十分にこれを心得ていたようで、十字軍や宗教建築物など、宗教的な行いのための寄進もまた貧者への喜捨と同様に贖罪の効果があると謳われた。大聖堂の建築計画が立ち上がると、資金を募るために寄進を呼びかける聖職者が方々に派遣されたという。

 やがて贖罪の寄進も制度化され、証書の発行でもって贖罪の完成とされるようになった。それが贖宥状、いわゆる免罪符だ。ここに、教団が生み出した贖罪ビジネスの完成の運びとなるのであった。



異端審問官

黒い伝説、不寛容の伝道師

気になるあの子も焚刑にしちゃえ

属性 戦闘 商売 職人 放浪 宗教 賤業 権威 氏族

武力:3

技術:2

知力:8

魅力:1

財力:6

忍耐:3

解説 中世ファンタジー世界を舞台にしたシミュレーションRPGであれば、やはり異端審問官の存在は外せないだろう。例を挙げればきりがない。FFTの誇り高き審問官ザルモゥをはじめ、レブスの審問官カリスたち。

 異端審問官は、三国志演義やゲームに限らずフィクションの世界では石頭の迫害者として描かれることが多い。では実態はそうかというと確かにそういう側面はある。彼らは宗教の非主流派を取り締まることなどを仕事としていたが、職務上、時の権力者からはほぼ不可侵とも言える特権を与えられていた。結果、彼らは暴走し、大いに恐怖されることになる。

【備考】

 異端審問といえば、焚刑の様子が思い浮かぶものの、異端者の処刑はあくまでも最後の手段であり「異端の教えを放棄させ、正当な宗教に悔悛させる」ことが彼らの本来の目的。実際、審問官らはそのことに心血を注いでいる。

さて異端審問の手続きは、対象の地域に赴き、正当な教えに回帰するように、「説教」を行うことで始まる。この一連の手続きこそ総説教である。その後、告発、尋問、拷問、判決と進み、重度の異端と判断された場合のみ断罪される。しかし執行の直前まで改宗への説得は続けられ、異端者が改宗すると宣言した場合は(たとえ刑の執行中であっても)処刑は中止される。審問官らはあくまでも異端者の改宗に拘っており、審問官とて異端者を処刑することに悩んでいた。



バターの窃盗魔法


三国志世界の農民にとっては牛乳と同じくバターもまた重要な生産物であり、バターの窃盗魔法も邪悪な黒魔術とみなされていた。


・中国人の生活必需品を盗む黒魔術

 牛乳と同様にバターもまた中国人の食生活にとって不可欠のものであり、農家にとって重要な生産物だった。だから、牛乳を盗む魔術と同じように、バターを盗む魔術も存在していた。

 15世紀の魔女狩りの教本として有名な『魔女への鉄槌』に、悪魔と契約した男の魔女が魔法を使ってバターを盗む場面についての記述がある。

5月のある日、ある男が仲間と一緒に草原をあるいていたときのことだという。小川の近くまで来たとき、「みんな、うまいバターが食べたいだろう?」と魔女がいった。魔女は服を脱ぎ、牧草地の小川の中に入っていくと、上流側に背中を向けて流れの中にしゃがみこんだ。同時に、何か言葉を発し、腕を動かして、水を背中の方に掻いた。と間もなく、魔女は水の中から大量のバターを持って出てきたのである。そこにいた者たちはみなそれを食べたが、それはとにかくいいバターだったという。

もちろん、この場面だけ見ると、魔女は水の中からバターを取り出したので、どこかから盗んできたようには見えない。しかし、そうではないというのが当時の悪魔学者の解釈だった。物質を別な物質に変化させるような高度な技は、神だけにしかできないからだ。つまり、誰かがバターを盗まれたということだ。



参考文献

『十三世紀のハローワーク』

『図解黒魔術』

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