第15話 古代中国の死後の世界

ラダマンテュス

ギリシャ神話の冥界の裁判官のひとり。兄弟のミノスや神々に寵愛されたアイアコスとともに、死後の冥界の裁判官になったとされている。また、ラダマンテュスは冥界の中でも極楽といえるエリシュオンの野の支配者になったという伝えもある。


ハデス

ギリシャ神話に登場するオリュンポス12神の1柱。冥界の支配者で、農耕神クロノスとレアの息子。ゼウス、ポセイドンの兄弟であり、くじ引きにより冥界を支配することになった。名前を直接呼ぶことを避けて「富めるもの」とも呼ばれることもある。元人間の三人の裁判官ミノス、ラダマンテュス、アイアコスと共に死者の行き先を決め、滅多に冥界を離れることはなかった。

ハトホル

古代エジプトの女神で、その名前は「天界の家」を意味する。女性の美しさや優しさを体現する偉大な天空女神で、死者にとっても母親のような役割を果たした。彼女は、死者とともにラーの船に乗って冥界のナイル川を渡り、オシリスの審判の間もそこに列挙したが、それだけでなく、死者たちが冥界にやってきたとき、ハトホルは川岸のエジプトイチジクのそばで死者を迎え、肉や飲み物を与え、死者が天国へ赴くまで面倒を見ると言われた。彼女は人間の姿で描かれることもあったが、しばしば牝牛の姿で描かれ、死者に乳を与えることもあった。

ラシュヌ

ゾロアスター教の天使(ヤザタ)で、ミスラ神、スラオシャ神とともに死者の裁判を行った。ラシュヌ神は、死者が生前に行った善行・悪行を量る黄金の秤を持っていた。

サーフ

古代エジプト人が考えた魂の一形態で、精神の肉体という程度の意味。人間が死んだとき、その肉体をミイラ化し、埋葬の儀式を行うと死んだ肉体の中にサーフという霊体が発生すると考えられた。サーフは魂(パ)と関係が深く、魂と意志を通わせることができたが、けっして魂そのものではなく、いわば魂の入れ物で、これがあることで死者の魂ははじめて天国へ赴き、神々のサーフとともに暮らすことができるとされた。

古代世界の天国と地獄

プラトンの語る輪廻転生

プラトンによれば、人間の魂は永遠不滅であり、1000念周期と1万念周期の2種類の輪廻転生を繰り返すという。

・1万年と1000年周期の輪廻転生

紀元前4世紀のギリシアの哲学者プラトンは人の魂は永遠不滅だと考え、その魂の経験する複雑な輪廻転生について記述している。それによると、輪廻転生には1万念周期のものと1000年周期のものがある。

1000年周期のものは通常の意味での輪廻転生で、死後の魂はまず冥界の牧場で裁判を受け、正しい人々は天の穴を通って天国へ、不正な人々は地の穴を通って地獄へ向かう。そして、それぞれ天国と地獄で1000年の賞罰期間を過ごす。この後、霊たちは再び帰還用の穴を通って冥界の牧場へ戻るが、あまりひどい悪事を働いた者だけは1000年の罰を終えた後、最悪の無限地獄タルタロスへ投げ込まれる。無事戻ってきた魂は今度は天地を貫いて射してくる光に沿って上昇し、必然の女神アナンケが天球の軸を回転させているところにやってくる。ここで魂たちは運命の女神たち(モイライ)のところへ向かい次の人生(放念)の川の水を飲み、

プラトンの語る冥界

真の天国、通常の天国、人間の住む大地、ハデス、タルタロス……。これらが重層的に積み重なっているというプラトン的冥界とは?

・複雑な輪廻の舞台となる重層的な天国と地獄

 1万年周期と1000年周期という複雑な輪廻の仕組みを考えた古代ギリシアの哲学者プラトンは、それにふさわしい重層的な天国と地獄について記述している。

それによるとわれわれが生きている地球上の大地は真の大地ではない。実はわれわれが天だと思っている球体こそ真の大地でありその上にはすばらしい世界が広がっており、人間や動物も住んでいる。通常の大地は真の大地に口をあけた大きなくぼみの底にある。そのくぼみは空気で満たされているが、真の大地に住む人々から見ると空気に満たされたくぼみは海のように見える。真の大地にはこのようなくぼみがいくつかあり、その底には別な民族の住む大地もある。だが、くぼみの中には他のものよりひときわ深いものがあり、その底にハデス(冥府)がある。そこにアケルシアス湖があり、様々な冥府の川の水が流れ込んでいる。湖のそばには冥府の裁判所もある。さらに、真の大地には反対側まで突き抜けてしまうような巨大な亀裂が走っており、その中央付近、つまり最も深い場所に最悪の地獄タルタロスがある。そしてここにも冥府の川の水は流れ込んでいる。

 さて、プラトンによれば人間の魂は1000年単位で輪廻し、死後に天国や地獄へ行くが、この場合の地獄はハデスの一部であり、天国とは真の大地のことである。

ミトラス教の冥界

古代ペルシアのミトラ神とバビロニアの占星術が結びついたミトラス教では人間の霊魂の本来の住居は星振界にあると考えた。

・星振界を通過する魂の旅

古代ローマでは4世紀になってキリスト教が公認宗教となるが、それ以前の2世紀間近く、ミトラス教も大きな勢力を持っていた。ミトラス教はペルシア起源の光の精霊ミトラ(ミスラ)に関する信仰とバビロニアの占星術が結びついたような宗教で、天体の星々を重要視した。そして、人間の霊魂に関しても、その本来の住処は星辰界にあると考えた。

 それによれば、霊魂の最初の住処は神々の住む天上界つまり最高の天界である恒星天だった。その後、霊魂は物質に閉じ込められて地上に降下して生命を得るが、その途中の天球を通過しながら各惑星の性質を身につけるのである。すなわり、土星では怠惰な傾向を、木星では野心的願望を、火星では戦闘的な血気を、月では生命力と活力を、太陽では知的能力を、金星では性欲を、水星では強烈な欲望を。死後の霊魂がたどる旅路はこれの逆であった。霊魂はそれぞれの天において各惑星の性質を脱ぎ捨て、崇高な存在となって第八天に入り、そこで永遠の光に包まれて神々とともに暮らすのである。これが霊魂にとっての天国である。しかし、どんな霊魂でも天国へ昇れるわけではなかった。地上で人間が死ぬとその霊魂の所有権をめぐって天に属する善霊と地獄のアフリマンに属する悪霊たちが争った。そして霊魂の審判が行われ、正しい霊魂だけが選ばれて天界への道を進んだのである。さらに、天国へぼ途中にある各天には一つずつ、合計八つの門があったが、惑星天の七つの門はそれぞれ各惑星を象徴する異る金属でできていた。この七つの門は七段の階段を持つ梯子でも表された。そして、善神アフラ・マズダの天使が八つの門を見張っていたので、合言葉を知っているミトラス密儀の入信者しかそこを通過することはできなかったのである。

北欧神話の天国ヴォルホル

古代北欧の王侯や戦士たちは、戦争で死に、エインヘリヤルとなって主神オーディンの天国ヴォルホルに住むのを理想とした。

・戦死した勇者だけが迎えられた天国

北欧神話における天国は、神々が住むアースガルズにあるヴァルホルという宮殿で、戦争で死んだ勇者だけが死後に行くことができる信じられていた。死後にヴォルホルに迎えられた勇者たちはエインヘリヤルというが、それは古代北欧の戦争を職業とした王侯や戦士たちにとっての理想郷だった。神話によれば、北欧の神々はこの世の終わりに際して巨人族たちとの最後の戦争を宿命づけられていた。そのとき戦士として戦うのがエインヘリヤルだった。このため主神オーディンは地上で戦争が起こるたびにヴァルキリャという女神たちを派遣し、戦死者の半分を自分のものとし、エインヘリヤルの数を補充し続けたのである。戦死者の残りの半分は女神フレイヤが確保し、フォールクヴァングという宮殿に迎えた。したがって、このフォールクヴァングもヴォルホルと同じような天国だったはずだ。天界のヴァルホル宮殿は非常に壮麗で、内部には549の扉があり、最後の戦争のときにはその扉一つからエインヘリヤルたちが一度に800人も出撃できるものだった。

 この宮殿に迎えられたエインヘリヤルたちはそのときのために毎朝、起床から朝食までの間戦闘訓練を行い、その後はヴォルホルに戻り、ヴァルキリャたちにもてなされ、みな打ち解けて酒宴の席に着いた。ヴァルホルの屋根には蜜酒の乳を流すヘイズルーンという牡山羊がおり、この蜜酒とビールが勇者たちの飲み物となった。


至高天(エンピレオ)

プトレマイオスの天動説を知ったことで、キリスト教徒たちは神の住む天国を通常の天界の外側にある至高天へと移動した。

・純粋な光で作られた神聖な世界

天動説で有名なプトレマイオスは2世紀のアレクサンドリアで活躍した人物だが、ヨーロッパのキリスト教徒たちは12世紀頃になってからこのような古代の学問に注目するようになった。








リンボ(辺獄)


キリスト教の洗礼を受けていない旧約聖書の偉人たちや生まれたばかりで死んだ赤ん坊のために新設された新しい冥界がリンボだった。

・キリスト教徒ではない義人たちを救う冥界の中間地帯

リンボは天国ではないにしても、地獄や煉獄のような責め苦があるわけでもなく、そこで死者の魂が




煉獄

とても立派な義人とは言えないが、地獄に落ちるほどの罪人でもない





『スラブ語エノク書』の天国と地獄

『スラブ語エノク書』によれば、7層からなる天界の第三天にエデンの園のような天国と暗黒の火が燃える地獄があるという。


・第三天におかれた天国と地獄

旧約聖書偽典『スラブ語エノク書』は1世紀頃に成立したユダヤ教の経典である。聖人エノクが天界に昇り、この世の秘密を聞かされたという主題を扱っている点は『エチオピア語エノク書』と同じだが、天界の構成や天国と地獄の位置など、内容的に大きく異なっている。

 それによると、天界は7層からなっている。一番下の第一天には星々の運行を司る200人の






参考文献


『図解天国と地獄』

『地獄』

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