第43話 相手も黙ってはいない


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 工藤元警察庁長官は、自宅に警察庁サイバー警察局情報技術分析課長を招いていた。

「工藤長官、お久しぶりです」

「もう工藤でいい、長官の肩書はない。それより例の件だが、何か分かったか」

「いえ、何も。ただ長官から言われていた坂口悠という人物、警視庁サイバーセキュリティ対策室に物凄いサイバーセキュリティシステムを構築したそうです。

 そのシステムは国内にいるハッカーや海外サーバーを経由してくるハッカーを片端からキャッチして検挙に繋げているみたいです。

 それだけの事が出来る人間なら工藤さんやご子息の情報を傍受できる位たやすいのではないかと考えます」


「やはりな。想像していた通りだ」

「後一つ情報があります。どうもその人間を国家公安委員会が雇ったみたいで、公安調査庁サイバー特別調査室にそれ以上のシステムを構築している様です。

 それと神門組が潰されまたのは、坂口を襲った所為らしいです。今は公安警察と公安特務員が坂口の警護に当たっています」

「本当かそれは!」


 工藤元長官は腕を組んで少し考えると

「課長、今日はありがとう。また連絡するかもしれない」

「はい、長官には口では表せられない位お世話になっています。この位なんともありません。また用事が有れば連絡ください」

「ありがとう」


 これで、三年前の事件と仙田温泉の事件、そしてあのネット上に流出した私達の情報の出所が全て繋がった。


 坂口悠か、今後の憂いをなくすためには…するしかないな。確か、真理愛は彼に守られていると言った。

 もしかして真理愛は利用された?そう考えるのが普通だ。だとすれば坂口に近付くチャンスはあるかもしれない。





 あの事件以来、俺にとって静かな時間が過ぎている。あの二人を除けばだが。


 昼休みは、真理愛の事を考えて教室で三人で食べる様にした。おかげで俺のお昼は購買で菓子パンと牛乳になった。


 二人がお弁当を作って来ると言って来たが、流石に断った。どう考えても言い争いの種にしかならない。

 だが、菓子パンだけでは寂しいので偶に学食でテイクアウトの唐揚げ丼を買っている。


 明日からGWだ。教室で食べている生徒達の話題ももっぱらGWの話題の様だ。俺はどうするかなと考えていると真理愛が


「悠、GW一緒に遊びに行こう」

「何処へ?」

「うーん、出来れば旅行行きたいけど無理だから遊園地でいい」


「ちょっと待って。私も悠と遊園地に行くつもりなんだけど」

「友坂さん、私が先に悠に言っています。だから私が優先です」

「悠、それなら私と一緒に温泉に行こう」

「今から取れないし、高校生だけじゃ予約できないよ」

「私の両親から予約入れる」


「えっ!友坂さん、それは無いよ。悠、だったら私も旅行行きたい」

 始まってしまったよ。


「二人共、俺は温泉とか行かない。午後は毎日武道場で稽古だ」

 最近、足が遠のいているからな。GWの間は行きたい。


「えーっ、でもそれじゃあ、一緒に遊べない」

「日帰りならいいぞ」

「「じゃあ、日帰りで」」



「ねえ、あの二人。もう坂口君だけって感じだね」

「うん、二人共、毎週告白されているのにね」

「分からないでもないわ。だって坂口君と一緒になれば一生優雅に暮らせるわ」

 そんな事ある訳無いだろう。変な事言うな。


「ちっ、また始まったぜ。なんで我が校美少女No1と可愛い子No1が坂口なんだよ」

「まあ、仕方ないだろう。女子の言っている通りだよ」

「付け入る隙無いかな?」

「無いだろうなぁ」

 遠慮なく付け行ってくれ。隙は一杯あるぞ。


 俺の心の言葉とは裏腹に、真理愛と絵里が二人でまだ言い合っている。


「二人共、いい加減にしてくれないか。せっかくのお昼なのに」

「「だってぇ」」

「じゃあ、くじ引きはどうだ。勝った方が遊園地、負けた方が…そうだな。健康ランドってのはどうだ」

「「えっ、健康ランド!」」

「ああ、温泉には行けないけどのんびりできる」


「分かった。工藤さん良いわね。悠、あみだくじ作って」

「分かった」

 何か周りの子達が一斉にこっちを見ているけど、そんなに俺達事興味あるのか?


 俺は、あみだくじの二つの線の終りに遊園地と健康ランドと書いて線の間に二本の線を引いた。

「二人共、二本ずつ線を引いて」


 絵里と真理が二本ずつ線を引くと上の方を少し残して後は隠した。まあ、ちょっと考えれば結論は見えているけど。


 二人がじゃんけんをした。絵里が先だ。

「じゃあ、私から先ね」


 絵里は考えた後、俺から見て左側の線を選んだ。開けて、線をなぞると

「ふふっ、やったあ、健康ランドだ。悠と一緒に水着で、うふふっ」


 -おい友坂さんの水着姿。

 -行きてぇ。

 -場所分からないかな。


 おい男子諸君、心の声が駄々洩れだぞ。

 


 真理愛が悔しそうに絵里を見る。

「真理愛、そんな顔するな。遊園地は適当に上がって、後は二人で遊べばいいじゃないか」


 真理愛の顔がパッと明るくなり

「そ、そうよね。ふふふっ」


 今度は絵里が悔しそうな顔をした。


「友坂さん、変わってあげても良いわよ、遊園地ならずっと悠と一緒に居れるわ」

「もう遅いわよ」


 おいおい、こんな事でどうしてこうなるんだ。


「悠、いつ行く。遊園地?」

「そうだな。GW後半が連休だから明後日の日曜でも良いけど」

「うーん、三日にしない」

「良いけど?」

「じゃあ、悠、健康ランドは四日で良いよね」

「ちょっと待ってよ友坂さん。健康ランドは五日にしてよ」

「なんで、あなたにそんな事言われる筋合いはないわ」

「一日開けないと悠が疲れるでしょ」

「そんな事ないわ」

 何となく真理愛の考えが読めるんだが。


 話をしている内に予鈴が鳴った。良かった。




 私、工藤真理愛。もうすぐ悠と遊園地でデート出来る。思い切り彼と楽しむんだ。どんな格好で行こうかな。


「真理愛、楽しそうだな」

「あっ、お父さん。うん、彼と遊園地に行くの。楽しみなんだ」

「そうか、彼氏と言うと坂口君の事か?」

「ふふっ、もう言っても良いかな。うん、彼とはお付き合いしている。とても優しくて強くてその上、頭は世界一、二を争うの。素敵な彼でしょ」

「そうか、彼を大切にしなさい。ところでいつ遊園地行くんだ?」

「三日、お父さんは付いて来ちゃ駄目よ」

「あははっ、流石にそれはしないよ」


 いい情報を得た。

 

―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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