第42話 新しい展開



話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 工藤親子、木崎親子、遠藤親子が警察と地検特捜部に捕まって三週間が過ぎた。テレビニュースでは工藤元警察庁長官、木崎元法務大臣、遠藤元総務大臣が保釈されたと報道されている。


 息子達は、婦女暴行だけでなく、家宅不法侵入や、強盗など色々な事件が明るみになった。もうこいつらが社会に出て来ることは無いだろう。出て来ても最低レベルの生活でしか生きて行けない。


 俺の復讐は終わった。だがまだ俺の家族の幸せは戻って来ていない。これからが大変なのかも知れない。だって、まだお母さんやお姉ちゃんの顔をまともに見れない。まだあの時の情景を思い出してしまうから。


 公安委員会と公安警察のお陰で神門組組長は捕まり、組は解体されたとテレビニュースでやっていた。もう俺を狙う事も無いだろう。


 GW明けには、あのシステムの初期バージョンが出来上がる。公安が絡んだおかげで警視庁のシステムを消し去る事は出来なくなったが、パラメタを国内犯罪に絞ったので、少しは落ち着いた様だ。


 警視総監が検挙情報が多すぎる何とかしてくれと言って来た時は、治安よりも自分達の労働負荷軽減が優先かと思って呆れて笑ってしまったが。


 

 残る問題は真理愛だ。今回の復讐を成し遂げる事が出来たのは、彼女に近付く事が出来たからだ。


 だが、可哀そうだがその面においては用済みだ。このまま付き合うのも良いが、そういう事にはあまり興味ない。


 それに最近、あっちの方が積極的すぎる。どうしたんだろう。心が安心すると言っていたが、俺は疲れるだけだ。


 だが、彼女への世間の目、生徒達からの目は厳しい。それは俺が彼女に対して責任を取らないといけないことだ。どうしたものか。


 学術会議の人にスタンフォード大の教授への推薦状を書いて貰い、あっちに行ってしまうという手もあるが、それは無責任すぎる。


 それに…絵里かぁ、どうするかなぁ。あの子は本当にいい子だ。何も無ければこっちから告白しても良かったんだが今となってはどうしようもない。アメリカに連れて行く訳にもいかないし。

 起きる前に目が覚めて考えている内に


 ジリジリジリ。


 あっ、もう午前六時か、ジョギングに出かけるか。俺はいつもの様にここの街を回る様にジョギングする。公安警察と公安特務員って人、まだ付いて来ているのかな。全然気配を感じない。まあいいか。


 例のコンビニの前に着いた。あの子がレジに戻ってからはもう入っていない。彼女には悪いけど、彼女のお陰であいつらを捕まえる事が出来た。でも俺はもう彼女の前に姿を現してはいけない人間だ。朝ご飯は、冷凍チャーハンとインスタントスープだな。





 私、橋本加奈。仙田温泉での事件が有って、お姉ちゃんや私が乱暴された。幸い、私もお姉ちゃんもボディタッチ位で済んだ。お友達はあの中に男の精子が残っていたようで、直ぐに病院に行ったけど、可哀そうだった。


 彼、坂口悠君、あれ以来全然会えない。スマホの連絡先も交換してなかったので、連絡も出来ない。一度会ってお礼を言いたいのだけど。


 偶に彼に似た人がジョギングしてこのコンビニの前を通るけど、彼だったら寄ってくれるはず。だから私はこのバイトをして彼が現れるのを待つしかない。

 あっ、今日も似た人がジョギングして過ぎて行った。会いたいよ坂口君。





 俺は、シャワーを浴びて朝食を食べた後、制服に着替えて、いつもの様に電車に乗り学校に向かう。


 学校の有る駅の改札で真理愛と合流して一緒に登校するのだけど、絵里にそれを言ったら私も待つと言って一緒に登校する事になった。まあ真理愛の為には良いだろう。


「「悠、おはよう」」

「二人共おはよう」


 右に真理愛、左に絵里という並びで登校する。最近は真理愛に対する犯罪者の娘という視線も少なくなった。人間慣れとは恐ろしい。今回はそれが都合いいけど。


 絵里がいきなり声を掛けて来た。

「悠、もうすぐGWだね。どこか行こうか」

「嫌だよ。何処に行っても混んでいる。そういう時は家にいるのが一番だ」

「えーっ、どこか行こうよ。日帰りでもいいから」

「悠、私も行きたい」

 真理愛が少し遠慮がちに言って来た。


 確かにGWが開けると公安調査庁に少し顔を出しに行かないとといけない。放課後や土日は全く会えなくなる。少しは良いか。


「そうだな。三人で行くか」

「「駄目」」

「…………」

 別々かよ。


「ちょっと待ってくれ。別々だと…」

「悠、私は二人で行きたい。工藤さんと一緒じゃ嫌だ」

「悠、私も友坂さんと一緒じゃ嫌」

「「ふん」」


 二人で睨み合っている。もう学校だ。この話は先延ばしにするか。

「もう学校だ。また今度な」


 何とか二人の話を切って教室に入ると直ぐに下条先生の所に行った。

「下条先生。今年もあれ受けようと思っています。個人名で申し込んでくれますか?」

「分かった」


 それだけ言うと俺は直ぐに職員室を後にした。


「下条先生、あれって何ですか?」

「あれですよ。その内分かります」

 私、後藤恵梨香。坂口君は私のクラスなのになんで下条先生の所に来るのよ。全く、だから頭いい子は嫌いなのよ。



 教室に戻ると予鈴が鳴って直ぐに授業が始まった。



 私、工藤真理愛。悠と友坂さんのお陰で学校では、苛めを受ける事も無く過ごす事が出来ている。


 周りの人が私を見る目はまだ厳しいけど、あれから一ヶ月近くが経った。家の前にはもうメディアの人もパパラッチもいないし、通学も楽になった。


 お父さんがこの家を買ったのは二十年くらい前と聞いている。それまではお父さんとお母さんは官舎に暮らしていたらしいけど、お母さんのお腹にお兄ちゃんを身籠ったのを機にここに住んだらしい。


 最初は、警察官僚という事でご近所の人はとても親切に私の家族に接してくれた。でもあの事件が起きて以来、全く別人になったように挨拶もしてくれなくなった。


 スーパーに行っても、買い物は出来るけど、周りの人もお店の人も冷たい目で見て来る。お母さんは精神的に相当にきつい様で、毎日辛い顔をしている。


 そして、お父さんが保釈されてきた。もう警察庁長官ではない。今は保釈中の身。散歩に出かけるのも周りの目が合って、出来ない様だ。


 そんな事だから苛立ちも酷く、お母さんに偶に八つ当たりしている。前はそんなお父さんじゃ無かったのに。だから家の中はまるで冷蔵庫だ。前の様な団らんはない。


それでも私の生まれた家はここだ。

「ただいま」

「お帰り。真理愛」

「お父さんただいま」

 家に帰った時、玄関先でいきなりお父さんが聞いて来た。


「真理愛、お前の友達に坂口悠という男の子がいただろう」

「うん、とても大切な友達。あの人のお陰で学校でも何とか過ごせている」

「そうか、最近その子は何をしている?」

「お父さん、何で坂口君の事そんなに聞くの?」

「いや、ちょっとな。まあいい。それだけだ」


 お父さんがなんで坂口君の事を聞いて来たんだろう。多分前に坂口君の事を話したから、それで聞いたのかも知れない。

 

 私、家では男の子と一切話していないから。だからお父さんのそれを疑問に思う事も無かった。



 私は娘の真理愛と話した後考えた。

 仙田温泉雪山ビレッジで大樹を襲った男は坂口悠だと本人から聞いている。何処でどうやって大樹達があのホテルにあの日に泊る事を知ったのだろうか。まして部屋の番号まで知っているなんて。


 真理愛は大樹がスキーに行く事は知っているが、いつどこで泊まるなんて事は話していない。


 それにネット情報は誰が上げたんだ。まさか坂口って子じゃないだろうな。

 もしそうだとしても 正月、私と神門組組長が挨拶しているなんて、どうやって調べたんだ。それも話の内容まで。そんな事、真理愛が知る由もない。

 坂口という子はこの家に来た事はない。何かがおかしい。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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