第41話 新学期が始まりました


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 俺は、真理愛と絵里に会った翌日から新年度が始まるまでの三日間、公安調査庁サーバー特別調査室に行って彼らからの質問に回答した。


 中には信じられない低レベルの質問をしてくる担当者も居て、その頭で良くここにいるなと思う位の人もいたけど、まあ事情があるんだろう。


 そして三日後、独自開発に入った。初期システムが出来るまで一ヶ月。その後、随時オプション機能を付けて行く方法だ。いきなり全部作って、出来ませんでしたなんて愚は犯させたくない。


 警視庁サイバーセキュリティ対策室から連絡がこないのは、公安委員会からの指示だろう。まあ、あのシステムでも彼らには十分なはずだ。パラメタ全てオンにしているけど大丈夫かな?



 そして俺が三年生になり初めての登校日。真理愛とは学校ある駅の改札で待合せしている。いつもの様に電車で学校の有る駅にやって来ると改札で真理愛が待っていた。下を向いている。


「真理愛、おはよう待ったか」

「あっ、悠。ごめん下を向いて分からなかった」

 気持ちは分かる。

「じゃあ、学校に行こうか」


 一緒に登校している他の生徒がコソコソ話をしている。あれだけの事件になったんだ。真理愛が家族だという事は知っている生徒も多いかも知れない。


 そんな生徒達は無視して二人で学校までやってくると、下駄箱で新しい上履きに履き替えて掲示板の所に行った。大勢の生徒がいて、色々話しをしている。


 絵里が俺を見つけると

「悠、おはよ。三人共3Aだよ。良かった」


 まあ、成績順だから当たり前か。俺は芳美の事が気になって掲示板であいつの名前を探した。有った3Dだが何とか進級できたみたいだ。ここの学校は、いい加減な成績では進級させてくれない。三学期は頑張ったみたいだな。良かった。



 階段を三階まで上がり右に折れてすぐの教室が3Aだ。中に入って適当に座っていると絵里が、

「悠、ちょっといい」

「なんだ?」


 俺の袖を引っ張って廊下の端に連れて来た。

「悠、春休みに起こったあれは何?あなたと別れて家に帰った後、体が震えて大変だったんだから。ちゃんと説明して」

「絵里、危ない思いをさせてごめん。それと今説明する事は出来ない。出来る時が来たら説明する」

「悠、あなたはいつもあんな目に遇っているの?」

「あの時だけだ。もうあんな事にはならない」

 そう信じたいが。


「そんな保障何処にあるの?あれって現実だよね」

「絵里、夢の中と思って忘れてくれ」


 予鈴が鳴ってしまった。俺達は直ぐに教室に入ると真理愛が疑いの目で俺達をジッと見ている。無視しよ。



 少し待っていると新しい担任が入って来た。


「「「おーっ!」」」


 男子が騒いでいる。


「静かに。担任の後藤恵梨香(ごとうえりか)よ。紹介は後でするから。全員廊下に出て体育館に行って。始業式が始まるわ」



 俺達はぞろぞろと廊下に出て体育館に行くと、一年生、二年生が既に入っていた。皆緊張した顔をしている。


 校長、各学年担任それに各クラスの先生の紹介と生徒会長が挨拶をし終わると自分達のクラスに戻った。


 ざわざわしていると新しく担任になった後藤恵梨香先生が入って来た。この学校では男子一番人気の先生だ。


 背が高くスレンダーながら出る所はしっかり出ている。肩までの髪の毛で細面の美人顔だ。男子が声を上げるのも分かる。


「静かに。私が一年間君達の担任になる後藤恵梨香です。このクラスはわが校でもトップのクラスです。各々しっかりと意識を持って希望する大学に入れる様に一年間を過ごしましょう」


 それを言った後、何故か俺を睨んだ気がしたが気の所為か。


「早速だけど席替えを行います。三年生は席替え一回だけだから、気合入れて引いてね。廊下側の一番先頭からこの箱にある席順札を取る様に。初めて」


 先生が窓側のパイプ椅子に座ると廊下側の一番目の席に座る生徒から札を引き始めた。一年間の席順がこれで決まるから皆真剣は顔をしている。


 先に絵里が引いた。難しい顔をしている。しばらくして俺が引いた。窓側一番後ろだ。その後少しして真理愛が引いた。やはり難しい顔をしている。


 全員が引き終わると

「では、自分の引いた席に移動して」


 クラス全員がガタガタと移動し始めた。俺は窓側一番後ろの席に座り、絵里と真理愛の席を確認すると絵里は廊下側後ろから二番目、真理愛は廊下側から三列目前から三番目だ。絵里はいいが、真理愛大丈夫かな?だが、これで少しは静かになるだろう。


「今日は、これで終わりだ。全員帰っていい。坂口は職員室へ来るように」

「えっ?」


 みんなも騒いでいるが、それでもぞろぞろと帰って行った。絵里と真理愛が残っていて俺の傍に来た。

「悠、教室で待っているから」

「私も」

「絵里、真理愛と一緒に帰ってくれ。どのくらいかかるか分からないから」

「「でも」」

「帰った方が良い」


「坂口、早く来い」

 担任に言われ、俺が席を立つと渋々帰って行った。


 俺は、後藤先生の後を付いて行くと生徒指導室に入らされた。

「座れ」

 この先生、さっきから凄い命令調だな。


「坂口、君の事は一年、二年の時の担任から申し送り事項として聞いている。相当に優秀だそうだな。だが今は高校生だ。他の生徒の邪魔にならない様に授業中は勉強してくれ」

「もう終わっています」

「何をだ?」

「三年の教科書はもう全部読んで理解しています。でも授業は出ますよ。出席日数が必要なので」

「な、なんだって!」


 生徒指導室のドアが開いて一年の時の担任の下条先生が入って来た。


「やっぱりここか。後藤先生が帰ってこないからおかしいなと思って教室に行ったら友坂と工藤が、担任が職員室に連れて行ったというから、多分ここだと思って来て見たら。

 後藤先生、こいつは自由にさせていいですよ。もう大学の勉強も終わっている人間ですから」

「えっ、ええーっ?ど、どういうことですか。そんな事聞いていないですよ」

「説明はともかく、こいつを開放して下さい。意味ないですから。坂口もう帰っていいぞ」

「下条先生すみません。後宜しく」


 俺は進路指導室のドアを開けて教室に戻るとやっぱりか…、二人が待っていた。


「悠、一緒に帰ろう」

「真理愛、そうするか。思ったより早く終わった」

「悠、私も一緒で良いよね」

「もちろんだ」


 下駄箱で履き替えた後、校門を出ると絵里が

「悠、後藤先生何の話だったの?」

「くだらない事だよ。気にしなくて良い」

「そうなのか。まあ悠がそう言うならいいわ」


「ところで絵里。頼みがある。お前の家のある駅は、真理愛の家のある駅の一つ前だ。電車に乗ったら側に居て一緒に帰ってくれないか?」

「それは良いけど悠は?」


「俺はちょっとする事がある」

「毎日?」

「…………」

 やっぱりそう来たか。


「土曜日は俺も一緒に真理愛の駅まで行く」

「それって。工藤さんとその後デートするの?」

「なんでそこにたどり着く。土曜はその後、稽古に行く」

「そんなぁ。じゃあ、私といつ会ってくれるの?」

「当分、日曜日は開いているはずだ。だから会える」

「じゃあさ、今度の日曜日は会ってよ」

「友坂さん、日曜は私も悠と会いたいです」

 またか。


「じゃあ、こうしよう。日曜日は、真理愛、絵里の順で会おう。それでいいか」

「お昼は?」

 それは…。真理愛は毎日に一緒に食べないといけない。仕方ない。


「昼は毎日三人で食べるか」

「「うん」」

 変な所でハモるな。


「じゃあ、今日は絵里、電車の中では真理愛と一緒だぞ」

「分かっている」


 駅まで着くと、二人と別れた。四月中はこれでいいだろう。連休明けからまた忙しくなる。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。

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