第44話 遊園地は楽しい場所なのに


話中に聞いた事のあるワードが出て来ますが、現実の組織、団体とは一切関係ありません。また一部分詳細に書かないが故に説明不足を感じる方もいると思いますが、ご了承願います。

宜しくお願いします。


―――――


 私、工藤真理愛。今日は悠と遊園地に行って遊ぶ。そしてちょっと早く遊園地を出て、彼のマンションに行って、ふふふっするんだ。


 私自身あんな事を知るまでは、こんなに体が欲しているなんて想像も出来なかった。でもそれは私がビッチって訳じゃない、悠とする事を体が要求しているんだと思っている。だって悠以外の人とあれをするなんて想像出来ないし考えられない。


 悠は優しい。今日も私の家の最寄り駅まで迎えに来てくれる。お父さんがあんな事になってから私を見る周りの目が変わってしまった。

 でも彼はいつも私の傍にいて私を苛めや嫌がらせから守ってくれる。もう一生彼の傍に居る事しか考えられない。


 強敵はいるけど絶対に負けないんだから。それが証拠に彼女はまだ彼としていない。いや悠がその対象として見ていなんだ。だって中学からのお友達なのに何もしていないのが良い証拠。でも私にはしてくれた。それだけでも私が優位なのは分かる。後は油断しなければいい。



 今日はちょっと早めの午前九時に駅の改札で待合せ。理由は連休開始日で混むから早く行こうって私が彼に言ったから。


「お父さん、お母さん、行って来まーす」

「行ってらっしゃい」

 お母さん玄関まで来て送ってくれた。



「母さん、真理愛は出かけたか。さてそろそろ私も出かけるよ」

「あなた、気を付けて下さいね。変な人や暴漢がいるかもしれないから」

「はははっ、こう見えても警察官だ。格闘技はしっかりと身に付いている」

「分かっていますけど。行ってらっしゃい」

「行って来る」


 夫は友人に会いに行くと言っていた。普段ならあの人から会いに行くなんて考えられない。いつも相手が来てくれた。誰と会うのかしら?



 私が、駅に行くと悠はいつもの様にもう来ていた。ネイビーブルーのパンツと薄水色ののシャツ、それに紺のパーカーに黒のスニーカー。シンプルで爽やかだ。

「悠、おはよう」

「おはよう真理愛」

「悠見て」

 あっそうか。


「素敵だよ真理愛」

「ふふっ、ありがとう」

 今日は悠と久しぶりのデート。だから気合入れた。

「じゃあ、行こうか」

「うん」


 あれが坂口悠か。あんな奴のどこが良いんだ?




 遊園地は私の家から学校とは反対方向の五つ先の駅の近くに有る。電車の中は混んでいた。私と悠はドア側の端に二人で立っている。偶に揺れると悠の体が私の体に触れる時があるけど、彼はドアの窓から外を向いて黙っている。こんな時は何か言ってくれると嬉しいな。


 そうしているうちに遊園地のある駅に着いた。私達は人混みに押し出される様に出ると

「混んでいたね」

「ああ、皆この遊園地に来る為だったんだ。子供連れめちゃくちゃ多いな」

「ふふっ、悠、私も将来子供欲しい」

「…………」

 何を言っているか分かるけど、俺そんなつもり無いし。どううまく言えばいいんだ。


「悠、なんで黙っているの。そこは、俺もそう思っているとか言って」

「あははっ、ちょっと先が長いな」

「いいよ、先長くても。ずっと傍に居るから」

「真理愛、早く遊園地のチケット買わないと。もうあんなに並んでいる」

「もう、悠ったら!」

 答えられない質問しないで。



 大分並んだけどやっとチケットを買えた。遊園地の中に入るともう人で一杯だ。

「悠、どれにする?」

「まあ、前に来た時みたいな奴じゃ無ければ良いんじゃないか。あの時は

真理愛乗る度に伸びていたからな」

「もう、そんな事言わないでよ。じゃああれからにしよう」

「ちょっと待ちそうだな」

「良いじゃない。待つのも楽しみよ」

 そんなものか?



 私が選んだ乗り物は人工的に作られた山の中をトロッコ型の乗り物で通って行くというアトラクション。ジェットコースターみたいに凄いスピードが出る訳ではなさそうなので安心。


 三十分程並んで順番が来た。私が先に乗って悠が乗る。腰にシートベルトをして安全バーが降りてくる。

「悠、これって?」

「えっ、いや安全の為だろ?」

「そ、そうなの?」


ガタン、ガタン、ガタン。


キャーッ、


キャーッ、


キャーッ。


「や、やっと戻って来た」

「はい、シートベルト外して」

「駄目、悠外して」

「しょうがないな」


 悠が私の腿とお腹に体を接触させてシートベルトのロックを取ってくれた。本当は自分でも出来るんだけど。ふふふっ。



「真理愛、自分でロック外せるくらいのに乗ろうか」

「いや、悠が外してくれればいい」

「もしかして、あれ自分で外せた?」

「ソ、ソンナワケナイヨ」

「なんで棒読みなんだ?」


「じゃあ、次はあれに乗ろう」

「あれって、一人ずつ乗る奴だぞ。大丈夫か?」

「あっ、そうか。じゃあ止め。あっちにしよう」


 選んだのは飛行機型二人乗りの回転式乗り物だ。周りの子ってみんな小学生くらいなんだけど?

 高校生は俺達だけだ。後は親と小学生くらいの子達ばかり。乗っている飛行機の様な乗り物が回転しながら上下するだけだ。何なんだ?


「ふふっ、悠楽しいね」

「そうだな」

 面白くない。



 それも終わると

「悠、今度はあれ」

 真理愛が指を差したのはメリーゴーランド。


「あれに乗るのか?」

「うん」


 乗ったのは、馬車型。恥ずかしくて堪らない。周りは女の子や親と一緒の小さな子供ばかり。周りも俺達をニコニコしながら見ている。もう俺のメンタル壊れそう。


「真理愛、少し休まないか?」

「えーっ、悠だらしないなあ。仕方ない。休みますか」

「悪い」


 近くのベンチに座って休んでいると

「悠、ちょっとお花摘みに行って来る」

「ああ、待っている」


 真理愛の後姿を見ながら、どうしたものか。このまま真理愛と高校卒業まで一緒にいて、俺がスタンフォード大に行って自然消滅が一番平和だな。絵里の事もあるし、そうするか。

 そんな事を思いながら気を抜かしていると


 ダダダッ。


 俺の前を通り過ぎる直前にサングラスに帽子、黒のジャージ姿の男が正面から襲って来た。嘘だろ。ベンチに座っていた為、うまく対応できずに相手が持っていたナイフを取敢えず手でいなすとそいつはスッと体を引いて再度構えた。俺が立ち上がって身構えると


 いきなり横から人影が出て来たと思った瞬間、相手のナイフを手刀で叩き落として腕を掴み足払いをするとそいつの顔面に一撃を入れた。手慣れている。

「坂口さん、公安警察です。直ぐに逃げて下さい。後は私が処理します」


 この事に周りの人が気が付いた。俺がその場を立ち去ろうとすると

「悠!」

「真理愛か」

「悠、大丈夫何が起きたの?」

「なんでもない。ここは出るか」



 ちっ、失敗したか。神門組もカスしか残っていないな。




 襲われたのはこれで二度目だ。前は絵里と一緒の時、今回は真理愛と一緒の時。犯人の狙いは間違いなく俺か。これ以上真理愛と一緒に居るのも不味いな。


「悠、何なの。なんで悠が襲われるの?」

「真理愛、気にするな。今日のデートは中止だ。駅まで送る」

「やだ。せっかく久しぶりに悠と会えたんだ。絶対に一緒にいる」

 そう言われても、もうここにいるのは不味い。また襲われる可能性もある。


「じゃあ、俺のマンションに来るか」

「うん、最初からそのつもりだったから」

「えっ?」

「考えない、考えない。行こう」

 何故か、俺の腕に手を回して、もう片方の腕を上に伸ばしている。何なんだ?


 ふふっ、この後は悠に一杯気持ち良くして貰った。ずっとして貰った。本当は泊まりたかったけど、午後七時には家のある駅まで送られてしまった。でもいいや。デートの目的達成したし。





 矢張り、神門組の残りカスでは駄目か。今回の事件は、たかだか息子を守っただけの事。直ぐに復帰できる。だが後顧の憂いは残しておくわけにはいかない。私自身でやるしかないかな。


―――――


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

次回以降をお楽しみに。


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