第4話 取敢えず攻めてみるしかない


 私、高橋友恵。午前中の授業が終わり、学食へ行く。いつもはお弁当を作って持ってくるのだけど、今日はちょっと寝坊して作る時間が無かった。


 昼食はクラスの友達と教室で食べるのだけど、購買に行くのに出遅れた私は仕方なしに皆に断って学食に行く事にした。



 結構並んでいる。食券自販機でヘルシーなA定食を買うとカウンタに並んだ。半年近く学校に通っているのに学食はほとんど来た事ない。


 カウンタで受け取ったA定食をトレイに載せて、何処に座るか見渡すと


 あっ、あの子が窓際の席で一人で食べている。これはチャンス。ススッ、静かに傍に行って


「あの、ここ良いですか?」


 俺は箸を止めて声の方に顔を上げるとこの前一緒に帰った図書委員だ。周りを見るとテーブルは一杯空いている。他に座れば良いだろうに。


「他のテーブルも空いているけど」

「分かっていますけど、学食来た事無くて、一人で食べるのはちょっと…」


 そういう事か。追い払いたいけど人目もある。仕方なしに

「いいよ」

「本当ですか!」


 私はトレイを彼と向い合せの席の前に置くと自分も座って食べ始めながら

「坂口君はいつも学食なんですか?」

 良いじゃないか。俺がどこで食べようと。


「ああ、そうだが」

「そうなんですかあ」

 私も明日から学食にしようかな。でもクラスの友達に悪いし。でももう少しこの人の事知りたいし。


「あの、今日も図書室に来ますよね」

「行くけど」

 なんなんだ。この子は?



「じゃあ、今日も一緒に帰りません?」

「止めとくよ。それに俺みたいのと一緒に帰ったり、こうしていると迷惑じゃないのか?」

「何故ですか。そんな事全然ないです」

 参ったな、こいつ。


「ねっ、良いでしょう」

 仕方ない。


「ああ、分かった。その時予定が入ってなかったらな」

「はい!」




 あれっ、悠が、珍しく女の子と話しながら食べている。どういう事?まさかあいつにもとうとうモテ期がきたのか。

 でも私以外の女の子と口を利くのは面白くない。




「悠、珍しいわね。女子と一緒に昼食するなんて」

「悪いか?」

「別に。あんた確かBクラスの高橋さんだよね」

「はい」

「なんで悠と一緒に食べているの?」

「あ、あの…」

「高橋さんが学食初めてだって言うから一緒に食べているんだ。悪いか?」

「別に悪くはないけど」

「じゃあ、せっかくの昼食の邪魔をしないでくれ」

「分かったわよ」



 私は相手を確認した後、取敢えず悠から離れた。まだぎこちない関係だ。何処で知り合ったか知らないが、あいつがあんな子に興味を持つはずもない。胸は大きいがそれだけだ。取敢えずこのままで良いか。



「ありがとうございました」

「別に礼を言われる事じゃない」

 どうして、学年一の美少女と呼ばれている友坂絵里さんと知り合いなんだろう?


「あの、友坂絵里さんとはどういう関係で?」

 今度は取り調べか?


「別にどうって言われても、同じ中学出身なだけだ」

「そうですか」

 同じ中学というだけでは、あんな口の利き方しない。まさか彼女とか。でも違うよね。そうなら坂口君が私と食べるはずないし。



 

 放課後になり、私は図書室を開けるとPCの図書管理システムの立上げ処理を行った後、受付に座った。

 来るのはいつもの常連さんだ。彼が来るか待っていると時間通り午後三時半過ぎにやって来た。


 窓際の席に座り、いつもの様にあの難しい本を読み始める。


 全校生徒の下校時間を知らせる予鈴が鳴ると常連さん達は片付けをし始めた。二学期も後二週間を切っている。


 私は、返却された本を書棚に戻す処理をPCに入力すると本を持って彼の傍に行った。

「あの、今日も一緒に帰りませんか?」


 彼は私の顔をジッと見ると


「俺に何か用なのか?」

「あの、用と言うか、少し話したいのですけど」

「俺は君に話す事は無い」

「でも、少し位なら」

 しつこいな。


「分かった」

「じゃあ、本を書棚に返すのでちょっと待っていて下さい」


 私は急いで本を書棚に戻すと

「図書室の鍵閉めたら職員室に返してくるので、また下駄箱で待っていてくれますか?」

「ああ」



 私は急いで鍵を職員室に返すと下駄箱に行った。彼が待っていてくれる。上履きを下履きに履き替えると直ぐに彼の傍に行った。


「帰りましょうか」

「…………」


「坂口君ってあまり話さないですよね」

「…………」

「だから私が話します」


「私は北尾中学から来ました。この高校に入ったのは、ここに入れば少しでもいい大学に行けると思っているからです。勿論塾も行きますけど、ベースの高校のレベルが低いと駄目ですからね」

「…………」


「家は隣駅です。歩くと三十分位かかるので電車使っていますけど、家が駅から十分位掛かるので、結構意味ないかも知れないですけど、雨の日とかはやっぱり電車が楽ですから。家族は両親と兄が一人います」

「っ!俺先帰る」



 彼走って行ってしまった。家族の話をしたとたんに。彼、家族の問題で何か抱えているのかな。


 今年ももうすぐクリスマス。去年までは友達と一緒にやって、家族でもやっていたけど、今年は高校に入ったばかりだから、一緒にクリスマスやるなんて人いないし。


 坂口君と出来ないかな。…何考えているんだろう私。


―――――


 ゆるりとラブコメもどきが始まりました。


次回以降をお楽しみ下さい。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


お願いが有ります。

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