マチルダの内面変化


 スマホとドレス、宝石を換金され一人旅に出たマチルダの服は丈夫で破れにくいものに変わり、背中まであった金髪も短くなっていた。


 「マチルダ」旅を終えてロンドンに帰って来たマチルダを、兄のカーレッジが抱きしめる。直美と森子もマチルダに駆け寄り、「おかえり」と声をかけた。

 「ただいま」マチルダはベージュのベストと黒のズボンに着替え、直美たちと転落防止用トランポリンを修復する。

 花びんの割れる音が広場に響き、真珠のネックレスをモンハナシャコのブレイクにパンチで粉砕された『ミーン』が憤怒の形相で亮介と美月を猛追しているのが見えた。



 地面に座り込んだ両親に駆け寄り保冷剤入りのタオルを渡すと、「ありがとう直美」と言って首に当て冷やす。『ミーン』が目を血走らせて絶叫し投げた花びんがマチルダの頭に当たり、失神した。


 「マチルダ!マチルダ‼」カウンセラーのジルが呼びかけるが、ぴくりとも動かない。『カフェ&バー 月明かり』の屋根に積もっていたドカ雪が落下し、『ミーン』の口をふさいだ。

 過呼吸を起こしたカーレッジにジェームズが駆け寄り、肩に手を置く。マギーとリックマンも、羽音を立てながらカーレッジが落ち着くのを待っていた。

 

『ミーン』はひたいに縫い針の刺青を入れた『子殺し』の男20人と広場から姿を消した。

 マチルダは復学後、同級生に暴言と重傷を負わせたことを兄と一緒に謝罪。ブレイキン部の一員となり、『ソーラン節』やケルト音楽に合わせ踊っている。



 「マチルダの内面変化には驚かされた」アントニオがフードバンク内に残っていた黄色いトマトとキャベツの葉、サツマイモを食べながら言うと「ナターシャ、リーナと花びんの修復もやってますし」とジルが満面の笑みを見せた。

 「暴言により心に傷を負った子は、彼女を憎み続けている」ジェームズがアレックスの制服とベストを縫い、ローズのブーツの穴を見えなくする。

 アレックスは胸元に栞が描かれた制服を試着し、「ジェームズさん。ありがとう」と嬉しそうに言った。

 「シャツも、縫い終わってから渡す」「はい‼」ジェームズはミシンを机の上に置き、店内の清掃を終えた。


 

 「カーレッジは賢哉さんにも気持ちを聞いてもらい、授業後にポピーと散歩をしています」とジル。カーレッジとポピーが、アントニオたちに向かって一礼し通りへと

入っていった。


 シャンプーを終え毛が短くなったポピーに、「おかえり」と賢哉が声をかける。ポピーはしっぽを回しながら芝生に寝転がって飼い主の顔をなめ、寝息を立て始めた。

 困っている相手の気持ちや話したい事をじっと聞くことが多い賢哉は、ポピーに気持ちを吐露しほっとできている。

 「ポピー。ありがとう」小声で言って背中をなで、芝生の上で夕方まで寝た。


 

 

 

 

 


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る