クローンについて

「次はクローンについてだよ、さねちー」

「え? これも僕達なの? もっと詳しい人、連れて来ないの?」

「何だよ、嫌なのかよ。僕とさねちーはナイスコンビじゃないか」

「嫌っていうよりも、君との会話には慣れちゃったから」

「でも始めちゃうよ」

「いいよ」

「ロボットにも心ってあるのかなぁ」

「おう、唐突だね」

「ドラえもんとか見てるとさ、あれ絶対、感情持って動いてるよなって思うんだけど」

「そうだよね。どら焼きが好きなとことか、ネズミが嫌いなとことか」

「ドラえもんのどら焼きって、どうやって処理されてるんだろうね」

「そういうとこはツッコんじゃダメ」

「だって気にならないかい?」

「そんなこと言ったら、他のアニメにも色々ツッコミたくなるからやめて」

「何でサザエさんは年を取らないの?」

「日常物語だからだろ。それに進級とかの設定変更が面倒臭いしね。あと、どういう風に成長させていくかとか」

「制作上の問題だね」

「ていうか、クローンの話をしようよ」

「じゃあ、クローン羊のドリーで作ったジンギスカンは美味しいのかどうか」

「農業学部出身の観点だね。うーん、遺伝子も体の造りも普通の羊と同じだし、普通に美味しいんじゃない?」

「さねちーは区別できないだろうけどね」

「悪かったね、味覚オンチで」

「そういえば、ドリーってまだ生きてるの?」

「もう死んでるんじゃない? クローン羊のドリーってけっこう前の話だし」

「そういう実験動物に名前を付けるとさ、愛着湧いちゃうよね」

「そうなの? 僕ペットとか飼ったことないから分からないけど」

「農学部ってさ、食用の牛や鶏や豚を育てるじゃん。間違って名前付けちゃった日には食べられなくなっちゃうよねって話」

「お、おう……」

「まあ、僕は豚丼とかトンカツとか和牛っちとか食べ物の名前を付けてたけど」

「それ、どっかで聞いたことあるよ」

「まあまあ、で、クローン技術の話だけど」

「ちゃんと話を戻した? あの雪兎君が……」

「そこまで驚かないでよ。……さねちーって結婚はしない、一生独身貴族宣言してたよね」

「うん。結婚なんて金がかかるだけだからね!」

「でもさ、社長の後継ぎが欲しい訳でしょ」

「それは遠縁の親戚から養子をもらって……」

「いやいや、そこでクローン技術を使うのはどうよ。もう一人のさねちー、クローンさねちー」

「え~」

「嫌そうだね。ま、確かに、さねちーが二人もいたら口うるさくて勘弁なんだけど。それに気持ち悪いし」

「なら、例に出すなよ。ていうか、そのクローンは遺伝子が同じだけで、僕と同じことができないなら意味ないよ」

「クローンさねちーとは、こんな馬鹿みたいな会話ができる気がしないしね」

「馬鹿みたいって言うな」

「さねちーはonly oneであればいいよ」

「急に歌うね。でも僕は№1よりonly oneの思想って、あまり好きになれないんだよね。何か上手い逃げ道を作ったみたいでさ。もっと上を目指さなくていいのかって」

「出た、高度成長期思考!」

「なんだよ、ゆとり」

「話を戻すけどさ、カタツムリってオスからメスに変わるらしいよ」

「戻すというより飛んだね。で、何が言いたいのさ」

「春ちゃんもオスからメスに変わらないかな」

「とりあえず人間をオスとかメスとか言うのやめろ」

「考えてみなよ、さねちー。春ちゃんが女の子だったら、さねちーと春ちゃんの間でラブコメが出来ると思わない?」

「思わない」

「ハッ、まさか、というか、やっぱり……」

「何だよ」

「女になった春ちゃんには興味がないってことだね!」

「ちょ、ちょっと」

「やっぱり、さねちーはゲイだったんだ!」

「おい、そろそろ怒るぞ!」

「もう怒ってんじゃん」

「全くもう、話の流れを元に戻すと……。え~っと、クローンの技術にはお金がかかるから」

「やっぱり、さねちーは、そこに注目すると思ってたよ」

「だって大切だろ。大抵の技術には莫大な金がかかる訳だから、そう頻繁には使えない」

「じゃあ、クローンを作れるのは金持ちだけってこと?」

「うん、まあ、結果的には権力を持った者がクローンを作れる訳だ」

「それで、クローン軍団を作り、戦争が始まって世界が荒廃していくんだね」

「どっかでありそうな映画だね」

「マトリックスとか?」

「あれクローンじゃなくてロボットじゃないの?」

「あいるびーばっく」

「はいはい、分かったから。マトリックスの話は次の議題だろ」

「さねちーはゲイである。さねちーは社長である。故にさねちーは金で男の愛人を雇っているという三段論法の例は」

「間違ってるね! かなり酷いね! というか、僕はゲイじゃない!」

「本当かなぁ……」

「女子と恋愛しないからってゲイと決めつけるのは偏見だ!」

「偏見を取り除く努力をしないさねちーが悪いんだろ? 女子と付き合ってみてくれよ」

「だって、交際費が……。社長だから僕が奢ってあげるべきなんでしょ?」

「なら、お金持ちの彼女を作ればいいじゃん。ほら弁護士さんの元カノとか」

「烏丸さんに殺されるわ」

「そういえば前に弁護士さんのこと良いなとか言ってたじゃん。もう、いっそのこと割り切って春ちゃんか弁護士さんと付き合っちゃえばいいんじゃない?」

「おい、それじゃ完全にゲイになっちゃうだろ。偏見を取り除く努力は無いの⁉」

「偏見は乗り越えるものだよ」

「もうおかしい方向に飛び越えてるよね」


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冬月雪兎珍道記 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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