第17話 薬屋さんのスランプ③
宿に帰ると、大人しく優奈はベッドで寝ていた。
「ただいま」
「あきくん! おかりえ!」
「体調はどうだ?」
「あまり変わらないかも」
「そうか。そんな、優奈ちゃんにこれをあげよう」
ポーリさんから貰った二本の魔力回復薬を見せた。
「それは?」
「これは、魔力回復薬。消費した魔力を回復できる」
「買ってきてくれたの?」
「実はな――」
森でポーリさんを助けたこと、スランプになった原因、薬を貰ったことを優奈に話した。
「ねぇ、あきくん」
「ん? どした?」
「そのポーリさんって、女の人じゃないよね? 女と狭い部屋で二人きりなんかになってないよね?」
「あー……女のひ……」
「浮気だよ? 女とお茶するなんて浮気だよ? 他の女のから貰った薬を飲むのは嫌だけど、ここは我慢して飲むよ。そして、
「いや、やめろ! 死ぬわ!」
なんとか優奈を落ち着かせ、回復薬を飲ませてあげた。
すると、まだ、歩くのはふらつくが、体を起こすことはできるようになった。
まさか、薬の効果がここまでのものとは思ってなかった。流石、異世界の薬だ。
「で、本題なんだけどさ」
「分かってるよ。私も薬を作れる魔術を創って、その女……ポーリさん? を助けてあげたいんでしょ?」
「うん、そうなんだ」
「はぁー、もー、まったく。あきくんのお願いじゃ断れないよ。ま、正直薬は助かったし。うん、いいよ、それ、手伝うよ。でも、まだ完全に回復してないから、すぐには無理かも」
「ほんとか! ありがとう! ああ、手伝ってくれるのは、回復した後でいいよ!」
あきくんは、私にもそうだけど、基本誰にでも優しい。
あきくんのそういう所も含めて好きになったけど、正直に言うと、その優しは全て私に向けてほしい。
他の人に優しくするあきくんもいいけど、少し嫉妬しちゃうな。
♡ ♡ ♡
それから三日後、優奈は元の状態まで戻り、早速キスで魔力をチャージし、新しい魔術を創った。
「魔術創作――
「ありがとう。んじゃ、早速ポーリさんの所に向かうか」
優奈と一緒に薬屋に向かい、ドアをノックすると返事はなく、ドアノブを回してみると開いた。
「失礼しまーす。ポーリさん? いますか?」
「いなさそうだね」
「どこに行ったんだろうな?」
「少しここで待たさせてもらう?」
「そうだな」
一時間程待ったがポーリさんは帰って来ず、このまま待っていても仕方がないと俺たちは森に薬草採取しにきた。
「結局、優奈に頼ってしまった」
「ん? なんの話?」
「いや、今回は薬草採取一人で頑張ってみようとしたけど、結局この四日間で、三本しか見つからなかったんだ」
優奈が回復するまでの三日間も森に来て、薬草を探していたが、今言った通り三本しか見つけることができなかった。
「人には得意不得意があるから、仕方ないよ。それに、私あきくんに頼られるの好きだから、遠慮なく沢山頼ってくれる方が嬉しいよ」
「そっか。でも、不得意なものが多過ぎる」
なるべく俺も薬草探しを頑張りつつ、薬草採取をしていると、いつの日かと同じことが起きた。
「きゃぁぁああああ!!」
「この声は、もしかして」
声がした方に行ってみると、案の定ポーリさんが今度はゴブリンに襲われかけていた。
「ラブフレイム」
「大丈夫ですか?」
「あ、アキラさん……とどなた?」
「えっと、俺の彼女の」
「優奈です、よろしくね?」
「よ、よろしくです……なんだろ、圧を感じる」
「あはは……」
落ち着いた所でポーリさんに森で何をしていたのか尋ねると、どうやらある薬草を探していたらしい。
「なんの薬草を探していたんですか?」
「閃き草という薬草です」
「閃き草? 何か閃きそうな薬草ですね」
「その通りです。閃き草は、一時的に知力を上げ、頭の回転力が良くなるんです。なので、それを使って薬を作ってみようかと」
「頭を良くしてくれる薬草なんてあるんだ。どんな見た目の薬草ですか?」
「電球みたいな形をした花です」
「電球みたいな花ですか。どうだ? 優奈」
「うーん、ラブアイで探しているけど、この辺にはなさそう」
「そうか」
ポーリさんと一緒に薬草採取をすることに。一人にしていると、また魔物に襲われそうだ。
「ちゃんと、魔物避けの薬をして森に来ているんですけど、なぜかいつも襲われそうになるんです」
「その薬に問題があるんじゃ」
「ちゃんとレシピ通りに作ったんですよ?」
「それって、因みにいつですか?」
「えっと、先月です」
思いっきりスランプ真っ只中じゃねーか。後で優奈に見てもらうと、近くにいる魔物を呼び寄せる効果がある薬だった。
真逆の効果じゃねーか!!
「あ、そうだ。ポーリさんに貰った魔力回復薬助かりました」
「それなら、薬屋冥利に尽きます」
「うーん、あ! あきくん!」
「どうした?」
「あったよ! なんか、電球みたいな花」
「これですこれです!! これが、閃き草です! ありがとうございます。これで、薬が作れます……多分」
「なんで、最後自信なくすんですか。薬作るために探していたんでしょ」
「そうなんですど、なんか、薬草を見つけた瞬間、ここ最近の薬のできを思い出して、急に自身が無くなりました」
「ま、どうにかなりますよ。こちらにも一応手はあるんで」
「?」
閃き草と閃き草を探しながら採取した薬草を持って、一度ギルドに寄ってから薬屋に戻ってきた。
一応、薬草採取はクエストのため、一度提出して、報酬を貰い、それをポーリさんが受け取る形となる。
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