第12話 買い物デート

 大金を手に入れた翌日、俺たちは買い物をしていた。

 ここまで長かったが、ようやく当初の目的だった服を買いに来たのだ。


 いやー、ほんと、本当に長かった。

 冒険者証を作る為に薬草を採取したり、宿屋やご飯代を稼ぐためにゴブリンを倒したり、一攫千金を狙うため噂のスライムを洞窟を探していたら、陰で行われていた事件を解決してしまったりと、どんどん目的から遠ざかっていたが、ようやくお金を手に入れ、服を買うことができる。


「さ、服以外にも生活に必要な物も買うぞ!」

「買い物デートだ!」


 街にある色々な店を回りながら、必要な物を購入していった。


「異世界の服ってこんな感じなんだね」

「当たり前だけど、やっぱ素材が違うな」

「こっちのサラサラしたやつはちょっと高いけど、こっちの固い感じのやつは安いね」

「使う素材によって値段が変わるんだろ」


 正味、麻とかシルクとか、服の素材ことはまるきっり分からん。

 触って、着て、後はお値段との相談で買ったりする。


「ねえねえ、見てみて」

「なに?」

「異世界の下着。どう、似合う?」

「なんか、責めたやつだな」

「うん。なんかこういうやつ多いの」

「そうなんだ。別に俺は嫌いじゃないけど」

「そっか、なら、何個買っておこ」


 異世界の下着は、なんというか、色んな意味で派手だった。

 透けているものもあれば、穴が空いてるエロティックなもの、黒や赤といった大人っぽいやつなどが売っていた。

 異世界の女の人は、みんなあんなやつを身に着けているのか?


 服やら下着を買ったあとは、雑貨屋で生活に必要な物を買った。


 そんなこんなで、あっという間に日は沈み夕方になっていた。


「くぅー、買った買った」

「いっぱい買ったね」

「ああ。これで、目的も済んだし、あとはのんびりと異世界ライフを楽しむか」

「そうだね。のんびりと過ごそ」


 両手いっぱいに買い物袋を吊り下げながら宿に向かって帰っていると、ギルドから髪がボサボサで、眼鏡を掛け、顔色が悪く、どこか疲れた様子の女の人が出てき、俺たちを通りの過ぎて行った。


「今の人、なんか疲れている様子だったね」

「だな。ギルドから出てきたし、なんか悩みでもあるのかもな」


 色んな人がいるのだろうと思いつつ、ギルドの前を通り過ぎると、ちょうどいつもの受け付けのお姉さんが出てき、左右をキョロキョロとしなにか誰かを探している様子だった。


「こんにちは」

「あ、アキラさんとユウナさん、こんにちは」

「誰か探しているんですか?」

「ええ」

「どんな人ですか?」

「えっと、髪が乱れていて、眼鏡を掛けた女性なんですけど」


 髪が乱れていて、眼鏡を掛けた女性。もしかして、さっき通り過ぎって行った人のことか?


「それらしき人物なら、あっちに行きましたよ」

「そうですか、ありがとうございます」

「いえいえ、では」

「ええ、また」

「あの人も忙しそうだな」

「だね」


 宿に戻ってき、買ってきた荷物を床に置いてベッドに寝転びこむ。


「疲れたぁ〜」

「疲れたね。でも、久々のデート楽しかった」

「俺も楽しかったよ」


 ベッドで休憩していると、ノックされ、宿屋の女の子が夜ご飯が出来たと呼びに来てくれた。


「あの夜ご飯ができたんですけど、お食べになりますか?」

「うん、食べるよ」

「分かりました。では、下でお待ちしていまね」


 ご飯は部屋か一階受け付け横にあるスペースで食べるか選ぶことができる。

 俺たちは、一階でご飯を食べている。最近では、あの姉弟たちと仲良くなり、時間が合えば一緒に食べたりしている。


 階段を降りていると、パリンと皿が割れる音がした。

 優奈と顔を合わせ、見に行くと、弟君のレーク君が割ったようだった。


「大丈夫?」

「あ、はい、大丈夫です。ちょっとお皿を落としちゃって」

「そっか。あ、指切ってるじゃん」

「これぐらい大丈夫ですよ」

「全く、大丈夫じゃないわよ。ほら、ここはお姉ちゃんが片付けておくから、傷薬塗っておいで」

「はーい、わかったー」


 姉であるレイラちゃんは、しっかり者で、幼いながらもさらに幼い弟の面倒をみつつ、親に代わり宿の経営もしている。


「俺たちも手伝うよ」

「あ! いえいえ大丈夫ですよ。お客さんにこんなことをさせられませんし、万が一怪我でもされたら」

「別に遠慮しなくていいよ?」

「うん、そうだよ。レーク君と二人だけじゃ大変なこともあるでしょ?」

「ええ。でも、お父さんにここのことを任されているので、私がしっかりしないといけないんです」


 レイラちゃんは、責任感が強い子だ。責任感があるのははいいが、それで身や精神を擦り減らし、疲れなどで倒れては意味がない。

 少しは、俺たちを頼ってくれとは言っているが、なるべく人には頼りたくない様子だ。


「おねーちゃーん、傷薬ないよ」

「あれ、もうなかったっけ。うーん、どうしよう」

「傷薬ないなら、買ってこようか?」

「あ、いえ、大丈夫です。それに、今は薬屋さん少し前から休業中なんです」

「そうなんだ。だったら、レーク君ちょっと来て」

「ん? おにーちゃんなにー?」

「さっき切ったところ見せてくれる?」

「うん、はい」

「ありがとう。傷を癒せ――回復ヒール


 怪我などを治すことができる回復魔術ヒールをレーク君の切った指に掛けてあげると、血は止まり、切れた傷も塞がった。


「わあ! すごい! おにいちゃん、魔術使えるんだね」

「うん、そうだよ。でも、こっちのお姉ちゃんの方がもっとすごい魔術使えるよ」

「へぇー! 今度見せて」

「こらこら、まずはお礼でしょ。アキラさんすいません、ご迷惑をお掛けてして」

「ありがとーう!」

「迷惑とか思ってないから気にしないで」

「そうですか? ありがとうございます」


 片付けが終わったあと、一緒にご飯を食べ、その後シャワーを浴び、一日を終えた。

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