第2章 私たちってガチ百合

第14話 好き。

◇前書き


お久しぶりです!

百合の公式企画に短編を書いて投稿するぞー!って意気込んでいたら、7月は色んな事がありすぎて書いている時間がほとんどありませんでした……。


無事に短編は書いてギリギリ提出できましたが、再開が遅くなってしまって本当に申し訳ありません!


ちなみに、短編は本作のです!

冒頭から触れていた、中学校の卒業式の日に千賀ちか彩朱花あすかに告白した時の出来事を書きました。


私の作者ページか、以下のリンクから読むことが出来ます!

ドキドキする描写もあったり……?

良ければぜひー!


もどかしい距離感の頃の2人を書けて楽しかったです!


それでは今週もよろしくお願いしまーす!


『汐留千賀の告白』

https://kakuyomu.jp/works/16817330661093739211


────────────────

彩朱花あすか、朝だよ」

「んー……」


 聞きなれた声と、体を軽く揺すられる感覚で『あ、私寝てたんだ』と気付いた。

 目を閉じたまま、昨日は寝る前に何をして寝落ちたんだっけ……と脳を働かせようとしたところで、下腹部がやけにスースーしてるなと思った。


 なんで?と思いながら足をもぞもぞと動かしてみると、その理由と昨夜の出来事が一瞬でフラッシュバックして一気に頭が覚醒する。


「起きた?おはよう」

「あ……千賀ちか。……おはよ」


 そうだ昨日は千賀と恋人になって、それで一線を越えたんだ。

 ……ていうかそのまま気持ちよくて寝ちゃったってことじゃん、最悪過ぎない?


 とりあえず違和感を収めるために手で布団の中をまさぐる。


「下着ならこっちに置いてる。彩朱花いっぱい濡れちゃってたから、ウェットティッシュで拭いたしシーツも大丈夫だと思う。ちゃんとノンアルコールのやつだから安心して」


 寝落ちた私の後始末をしてもらっていたことに、恥ずかしさと困惑が押し寄せてきてたじたじになってしまう。


「あ、え、あ、ごめん」

「ううん、むしろショーツを履かせるのは難しくて諦めちゃってごめんね」


 ショーツ履かせようとしたっていうのは……流石に恥ずかしすぎるけど、それよりも罪悪感の方が大きい。

 せっかく初めてのその、えっちだったのに……。


「そこまでしようとしてくれてたんだ……千賀のことも気持ちよくさせてあげたいって思ってたのに、私の方がほんとごめんね」

「それは全然大丈夫」

「うーん、でも……」

「大丈夫、満足したから」

「なんかした!?」


 なんでもしていいとは言ったけど、何されたか分かんないのは怖いよ!?


「直接舐めたりするのはちゃんと我慢したから」

「ねぇもう、変態!!!!」




 今日の授業が終われば明日からはゴールデンウィークがやってくる。

 朝はあれから結局なんだかんだいちゃいち……バタバタしちゃって、ちょっと遅刻したこと以外はハッピーな気分で。


 明日から何しようかなって頬杖をついて考えてると思わず頬が緩む。

 だって恋人になったばかりだからね。


 家で1日中一緒にだらだらしてもいいし、行ったことない場所にデートしてみたり……いや、逆に今までよく行ってた場所に恋人同士として行ってみたらどう感じるんだろう。


 それと、まだ少し先になるけどやってみたいことも出来たんだよね。あとでちょっと千賀に聞いてみようかな?


 今は授業中だし……。や、集中しろって言ってくる頭の中の私の声は置いといて。


 ………………

 …………

 ……


「ねぇ、明日からのゴールデンウィークどうしよっか?」

「どうするって?バイト終わった後の話かな」

「……あ、そうじゃん」


 バイトあるの忘れてた。いや忘れてないです。

 スマホ並みに冷静なリマインドをされてワクワクがスッと沈む。


 いや、バイトも楽しかったんだけど、一日デートできる!って言う楽しみとはまた違うじゃん!


「えっと、バイト終わったら夕方前とか?じゃあそのあと……何かしたいこととか、ある?」

「そんなの無限にあるけど」


 ふむ、と顎に手を添えて考え始める千賀はなんだかミステリアスで賢そうに見えた。

 美人で学年1位とか取って高嶺の花みたいな扱いをされていそうな圧倒的ビジュアルだけど、ただ私とのデートプランを考えているだけなんだよね、これ。


「うーん、デートとかはしたいけど……でもせっかくするならお互いが休みの日がいいな。明日はバイトから帰っておうちでゆっくりするくらいかなぁ」

「じゃあそうしよっか。その時にデートどこ行くか決めようね」

「うん」


 一見そっけなさそうに反応した千賀の目は、デートプラン決めが楽しみでキラキラしてた気がした。


「あ、それからね」

「どうしたの?」

「えっと、まだ結構先の話なんだけどさ。初めてお給料貰ったら一緒に行きたいとこがあってね」

「わかった、どこでも連れて行ってあげるよ」

「そうだけど、そうじゃないんだよね!」


 多分千賀的には旅行とか夢の国とかそういうところに行きたいんだと思っていそうだけど。

 ……あれ、それも良いな?


「じゃあどこに行きたいの?」

「…………え~~~~っとぉ」

「うん」


 そりゃそうだ、そんなこと聞かれるに決まってるのに勢いで相談してた。

 ……これ言うの流石にちょっと恥ずかしいな!?


「そのぉ……」

「うん?」

「えっと、お給料出てからまた言う……」

「?わかった」


 はっきりしない私に対して、千賀も気になるだろうにスッと身を引いてくれる気使い。


 好き。


 あと、小首を傾げて『?』って表情もかわいい。好き。


「とりあえず、お金いくらか使うかもってだけ思ってて!」




 ゴールデンウィーク初日。


 今日もホールをメインでやらせてもらってる。


 全体の流れだとかメニューだとかは、一昨日見せてもらった分で既に結構覚えていて、ホールの流れは昨日やってコツを掴めてきた。


 今日はどうしたら全体が円滑に回りやすいのかなとか、どういう言い回しで接客したら自然かなとかちょっとだけだけど意識も出来てきたし凄くイケてると思う。


 やっぱり店長がシンプルなお店づくりをちゃんと成立させているからこそ簡単で覚えやすいんだってことは重々承知してるけど、でもやっぱ私仕事デキる人なんじゃない!?


 そんな風に自惚れながら接客してたけど、客足がお昼に差し掛かって増えていくにつれて一気にバタバタして頭がぐるぐるになってきた……。


「彩朱花、大丈夫?やっぱり連休だからか、かなり混み始めたね」

「うん……なんかさっきから満席状態が途切れないなあって思ってる」

「それは……アレだからね」


 千賀が指を向けた方を見ると、店外にはすさまじい行列が出来ていた。


「え、まじ……?」


 ……バイト3日目にして挫けそうになったのは内緒。



「あぁー疲れたあ!癒して~」

「よしよし、お疲れさま」


 15時あがりの私たちはロッカーで帰る準備……をする前に、千賀にむぎゅーっと抱き着いてちょっとクールダウン。


「千賀も疲れてるのにごめんね」

「ううん大丈夫。私も今凄く癒されてるから」

「そっか、好き~」


 遠慮なしで更にぎゅっとすると、同じように抱きしめ返された。

 と思いきや、ちゅっとキスもされた。へへ。


「そうだ、そのうち多分キッチンもやることになると思うから、このあと家でパンケーキでも作ってみない?」

「いいね、楽しそう。食べたくなったついでとかじゃないよね」

「そ、そそんなことないし!」


 確かにお客さんのパンケーキを運んだりして食べたいなぁとは思ったけど!

 ちゃんと練習の為だから!




「あとボウルと泡だて器……あった。じゃあ作ろ!」


 途中スーパーに寄ってから帰宅した私たちは、早速材料と調理器具を準備する。


「えーっと、先に牛乳と卵を混ぜる……まって、卵ってどれくらいの力で割れる!?」

「最初は軽くやってみて、段々強めにしてみたらいいんじゃないかな」


 料理なんてインスタントを温めたり、バレンタインの時にチョコを湯煎するくらいしか(これって料理?)したことない私にとって卵を割るところから未知だ。

 とりあえず千賀に言われた通りまずは優しくコンコンと叩きつけてみて、ほんの少し強めに、もうちょっと強めに、結構強めに……って案外硬いな!


 台がゴンゴン鳴り始めたところで、ようやく打ち付けた時の感触がくしゃっとして割れてくれた。


「やばい、ヒビ入ったとこ粉々になってめっちゃ殻入っちゃった」

「大丈夫、スプーンで掬っとくね」


 そのまま混ぜてくれたところにパンケーキミックスも投入し、さらによく混ぜる。


「これでもう焼くだけなんだ?結構簡単だね」

「お店でも同じようなやり方なのかは分からないけど、でもそこまで身構えなくて良さそうだね」

「ね、他のメニューも簡単だったらいいなー」

「彩朱花はとりあえず卵を綺麗に割る練習はしないとね」

「多分さっきのでコツは掴んだし!大丈夫だしー!」


 いじわるなこと言うからイーッて怒ったふりしてみせても、ちゅーされる。

 も~!


 焼き始めたらあとは眺めるだけ。

 途中でひっくり返すのはあるけど、ほんと簡単。


「この表面に穴が開いてきたら返すみたい」

「じゃあそろそろかな?私からやりたい!」


 ひっくり返すのは綺麗に上手く行った。

 もっとくっついちゃったりするかと思ったけど、簡単に剥がれてぺたんと返す感じが楽しい。


 千賀も特に苦戦することなく出来たし、調理時間も一瞬だったしお手軽。

 あとはお皿に盛り付けたら粉砂糖をかけて、ついでに買ってきた生クリームとラズベリーをトッピングして出来上がり。


「わあ、めっちゃ簡単なのに映えてる感じに出来た!」

「こういう写真って部活で提出していいのかな」

「わかんないけど、日常感あっていいじゃん!」


 2人並んで写真を撮って、なんだかお店に来たみたい。

 っていうか、ちゃんと習ったら本当にお店のパンケーキが自宅で出来ることにワクワクする。


 飲み物はシンプルに買い忘れたから、家にあったオレンジジュース。


 写真に満足したら、いただきますをしてから一口運ぶ。


「う~ん、めっちゃうま!あ、でもなんか」

「美味しいけど、見た目ほどふわふわ食感にはならなかったね」


 仮にも勉強の為に作ったんだから、ちゃんと評価と反省をしながら食べてる。

 でもそれは最初の一口しか持たなかった。


「ねぇ、あーん」

「あむ」


 私たちは気が付けば、別に違うトッピングにしてる訳でもない同じパンケーキを、いつも通り食べさせ合ったりしてる。


「へへ、美味しい?」

「美味しいよ。彩朱花もほら」

「あーむ」


 今まで何百回としてきたやり取りも、恋人同士なんだって思ったら全部がまた新鮮で心が躍る。


「ねぇクリームほっぺ付いちゃった」

「あ、ごめん」

「いいよ。……でも取って?」


 私はほっぺを千賀の顔にぐいっと近付けて目を閉じた。

 私なりの精一杯のいちゃいちゃしたいアピール……。


 千賀は私の頬をぺろっと舐めたと思ったら、期待した通り次は唇に……そのまま中へと舌を連れてきてくれる。


「ちゅっ、れる……彩朱花の口の中、すっごく甘くて美味しい」

「ほんと?じゃあ私も千賀のこと味わいたい……」


 千賀とキスし始めるといつもすぐに夢中になっちゃう私は、こちらへ迫ってくる人影に気付いていなかった。


「あれ?」


 ガチャリと音がしてリビングに入って来たのは私のお母さん。

 手に提げてる袋からして、スーパーから帰って来たところなんだろう。


 どうしよう、今のまさか見られて……。

 嫌な汗がぶわっと出てきた。


「2人でパンケーキ作ってたの?いいなぁ……じゃない。晩御飯前にお腹いっぱいにならないでよ?」


 ……バレてないっぽい?


 千賀がさっき急にスッと離れたから何事かと思たけど、お母さんの足音に気付いてたのかと納得した。


「うん、ちょっとバイトの練習で作ってみてたの」

「そう?今から晩御飯の準備で台所使うからね」

「わかった、じゃあ片付けたら部屋行くから」


 危なかった!

 リビングでするもんじゃないなって教訓を得ました!


 中断させられて悶々としている私は、さっさと千賀の手を引いて部屋へ連れていく。


 今度はちゃんと部屋の鍵を閉めて晩御飯の時間までいっぱい可愛がって貰うことに。



 ちなみに『デートプランを考える』というプランはこの日達成できず仕舞いで終わった。

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え、私たちってガチ百合?そんなことないと思う 御花工房 @tabun_yuri

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